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【エッセイ】学歴系のユーチューバー

 学歴系のユーチューバーが嫌いだ。
 ここで言う学歴系とは大学生へコメントを求めたり偏差値で人を測ろうとするジャンルの人たちである。

 なんだ、あれは。
 本当に、なんだ、あれは。
「嘘やろ」と思ったし、「嘘やろ」と言った。本当に言った。
 自分さえよければ、というマインドの行き着くところまで行った感がある。

 人とはエゴの塊で、けれど心の道徳心を信じて真っ当に生きようとする姿勢に人間としての人間らしさが生まれると私は考えているわけだが。
 彼らが行なっているのは自身の地位や名誉欲、富の向上を人間に対する侮辱によって行うという極めて非人間的な活動であるという点なのだ。
 冷笑もここまで行くと、”冷”である。 

 程よく共感や対立を頂き、よしんばバズを稼ごうとするその生き様。
 学歴が大切なことは間違いないし、そこで戦う人たちを否定するつもりはない。
 だが、ショーにしてしまうのは違うだろ、という話。何をサンサーラ流してるのか、という話だ。
 人生をショーにするのなら、自身もショーにされる覚悟を持って挑まなければならない。それを踏まえた上で、今から様々なことを記す。

 親族にいたら、一生彼らのことを恨み続けるだろう。情けなさがすごい。親戚の集まりで、一番盛り上がる話題になるか、本当の禁句になるかどちらかだろう。
 あの世という概念があるなら、きっと彼らは最下層の方へ行くだろう。演者も企画者ももれなくである。永遠に透明になって永遠に世を彷徨う地獄。そこで赤門を尋ねても誰も見向きもしないのである。
 あと、頼むからJ-popで感動する感性は持ち合わさないでいてほしい。ミスチル聞いてるとか絶対言わないでほしい。フェスとかも来ないでほしいよな。どうしよう。SUPER BEAVERで泣いていたらどうしよう。 

 あとは、人として未成熟な大学生に突撃している様も大人としては情けないとしか言いようがない。突撃していいのは大きなしゃもじを担いで恥をかいているヨネスケだけである。
 文句を言われない立場の人間に声をかけて、さも我々はメディアです正しいですの、したり顔。ヨネスケを見習って欲しい。あれだけ大きなしゃもじを持って隣の晩ごはんを聞くという大人がやるとはおおよそ考えられない仕事をしているのだから。
 現役大学生への凸などというのは、あんなもの「僕の人生は何もないです。」と自ら名乗っているようなものである。はしゃぐな、と言いたくなる。大はしゃぎしてはるのだ。あれで富や名声や力を手に入れようとするのだ。気色の悪いゴールドロジャーである。


 さて。
 あのような輩は唐突なタイミングでやってくるから厄介である。

 もちろん私は、はるか昔に大学を卒業したので、現役大学生として突撃されることはない。
 だが、もしも、である。
 もしも、偶然街を歩いている時に彼らの遭遇したらどうだろう。 

 そして、そのインタビューに答えているのが私の作品を熟読している方だったら?文学フリマやイベントに来ていただいている方だったら? 

 守るべきものができたとき、人は獣にならねばならぬ時がある。
 しかも相手が半強制サンサーラとくれば、こちらも半強制学歴誇示おじさんとして対抗するしかない。
 冷笑を、ぶちのめすのは圧倒的な”熱”なのだ。

 まずは、警察に連絡。
「学歴を尋ねる不審者がいます。子どもたちを避難させてください。」
 もちろん、ユーチューバーのことを指してである。
 しかし、こちらの公的な武力介入はあくまで保険としての準備。

 さて、ここからが本番だ。
 始まりはゆっくりと歩いていく。
 そして、その距離5メートルくらいになってから急ダッシュで彼らに迫るのだ。
 きっと相手は驚くだろう、マユリカのネタの出だしみたいだなあ、と。
 
 そうして、相手が発言するや否や、こう叫ぶ。 
「経済学部!総合経済政策学科です!」

 耳元で。
 大きな声で。
「経済学部!!!総合経済政策学科です!!!!」

 そこまで学歴が聞きたいなら私の学歴を晒してやろう。
 もちろん、持て余す熱を全て込めた言霊で。
「経済学部!!!!!!総合経済政策学科!!!!!です!!!!!!!!」

 六文字で何をするのかよくわからない学科でした、と。
 予備校のチューターが合格率を、かさ増しするために受けた場所です、と。
 そんな、あの頃の熱狂とファンファーレ。
「経済学部!!!!!!総合経済政策学科!!!!!経済学部!!!!!!!!!!!!!総合経済政策学科!!!!!!!!!!!!!!!!!!です!!!!!!!!!!!」

 獣はどのような顔をするだろうか。
 呆れるだろうか、怖気付くだろうか。
 だが、貴様らが行なっていることは、これとさして変わらないのである。
 これが私の”熱”だ。そしてあなたたちへの”答え”だ。
 喧騒は、サンサーラをかき消し、いつしか冷笑の”れ”の字も消えてなくなるだろう。

 そうして夕焼けが訪れ、サイレンと制服姿。
 連行されていく男の姿を、私はきっと忘れることはないだろう。

 「経済学部総合経済政策学科」と騒いでた私が交番で事情聴取されるだろうから。
 
 ミイラ取りがミイラになるとは、このことを言うのかもしれない。

 


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