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#曖昧な言葉

「しばらく会うのはやめよう」

夜、車の中であなたから、そう云われた



“女の方が引きずらない”

そんなことない。

私、何年も引きずった。

『しばらく』なんだ。

だから別れではない。

そう自分に言い聞かせてあなたからの連絡をずっと待ってた。

でも、連絡はなかった。

それでも私は『しばらく』にすがった。

夜中に電話した。

留守電のあなたの声が聴きたくて。

バレンタインにはチョコレートを送った。

きっと気味が悪くて捨てただろうね。



最初から分かってた。

『しばらく』は、別れの言葉だと。

『しばらく』なんかじゃなく『ずっと』なんだっていうこと。

分かってたよ。

ずるい言葉だと思う。

それとも優しさのつもり?

残酷な優しさだね。

あなたは今も独身だと訊いた。

でももう心は揺れない。

あの時、車の中で、あなたを思い切り

引っ叩けばよかった。

あなたが私に、酷いことをしたのは2度目だから。

今も、新宿の街を歩くと緊張するのよ。

あなたと私が務めた職場があるから。

もう未練も怒りも感じないくらいの年月が過ぎた。

“いい思い出をありがとう”

“あなたの幸せを祈ってる”

そんな気持ちは、微塵もないから。

要領のいい、ズルイ男は大嫌い。

あなたに送る言葉、それは

《バカヤロー!》

そういうこと。



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