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横浜からI LOVE YOU〜ソロアーティストとしての独り立ち

いよいよ40thのファイナルツアーも終わってしまって活動も残りわずかになってきた。このブログも終わりに近づいているのだが、やはり最後に改めてJohnnyに触れておきたくて、このコラムを書いている。

最初はT.C.R.横浜銀蝿R.S.と並行して進められていたJohnnyのソロプロジェクト。「ジェームス・ディーンのように」「$百萬BABY」「Highway Dancer」辺りの初期Johnnyソロ作と銀蝿解散後しばらく時間を開けての「ジュリエットの幻影」以降の本格的ソロ作ではかなり質感が違って聞こえる。

ファーストアルバム「Highway Dancer」は横浜銀蝿のJohnnyのソロとしての名刺がわりの作品であり、横浜銀蝿と線で結ぶことができる楽曲とサウンドだった。セカンドの「横浜からI LOVE YOU」では横浜銀蝿解散後のソロアーティストJohnnyとしての確立を目指していたと思われる。横浜銀蝿色をなるべく削ぎ落として、ソロアーティストJohnnyとしての意欲的かつ少し大人びた作品だった。

ファーストアルバム「Highway Dancer」とセカンドアルバム「横浜からI LOVE YOU」のどちらがいいかというのは聴く人それぞれ意見は分かれるとは思うが、個人的には「横浜からI LOVE YOU」のJohnnyのソロアーティストとしての想いのようなものを凄く感じている。

横浜銀蝿が解散しJohnnyはソロアーティストとして活躍の場を広げる。横浜銀蝿のリードギターのJohnnyとしてのソロと、銀蝿解散後ソロアーティストとしてのJohnnyとでは世間からの見え方も違うし、聴く層も広げなくては勝負できない。ソロアーティストのJohnnyになって出る結果は、そっくりそのまま自分の結果となる。誰のせいにもできない。そこには相当の決意があったことは想像できる。

「横浜からI LOVE YOU」では、全ての曲が作曲Johnny、作詞松本隆さんだ。「$百萬BABY」から松本隆さんは作詞しているが、ソロアーティストとしての勝負アルバムを松本隆さんとのタッグで作り上げたことは、Johnnyのソロアーティストとしての気概が感じられる。

Johnnyの歌詞はストーリー性があって歌詞の内容がすっと頭に入ってくるストレートな歌詞だ。松本隆さんもまたストーリー性のある歌詞が多いがJohnnyに比べメッセージ色は薄い印象で、この部分が「Highway Dancer」との違いを生み出していると思っている。松本隆さんの歌詞を全ての曲で使用したことで、明らかに「Highway Dancer」とは違う質感のアルバムになったのは間違いない。

Johnnyの歌には〜だぜっていうフレーズが多いと以前から思っていた。今こうやって改めて聴いてみると確かに多い。どの曲にも入っているんじゃないか?というくらい多い。最初はJohnnyの作詞するうえでの癖かな?と思っていたが、そうではなくてこれは松本隆さんの仕業で彼の作る歌詞に〜だぜというのが多いのだった。もしかしたら松本隆さんから見たJohnnyの印象からくるものだったのかもしれない。


 黒いフェラーリは 電光石火だぜ 
 背中で泣いてるぜ 渋い銀のエンジン
 I Love Yeah!


「Highway Dancer」では、Johnnyのいいとこ全部詰め込みましたという感じで、自由で生き生きとしたJohnnyの姿があるが、「横浜からI LOVE YOU」ではまた違ったJohnnyを見せる。歌詞だけでなく、Johnnyの歌い方や全体的なサウンドも統一感がとてもある。制作するにあたって一つの大きなテーマのようなものがあったような気がしている。ソロアーティストとしてのJohnnyの独り立ちへの強い想いが感じられるのだ。

「SWEET LITTLE SEVENTEEN」はAメロのメロディーラインが抜群に良くて、Johnnyの作曲センスの良さが出ている。この曲のギターソロは、曲調を壊すことなく絶妙なフレーズでとても印象的だ。このアルバムのバックミュージシャンは分からないが、実はオレはこのアルバムではJohnnyがほとんどギターを弾いてないのではないかと見ている。特にギターソロなんかはJohnnyのそれではない。ただし、このアルバムに限っていえばそれも大正解だったように思っている。とにかくJohnnyはこのアルバムを制作するにあたって、作曲と歌に専念した印象だ。曲作りとボーカル録りに集中し、それ以外の部分は他のプロに任せていた気がする。その典型が全ての作詞を松本隆さんに依頼しているところだ。

歌とセットということで、コーラスもJohnnyが多く歌っている印象がある。「真夜中のレーサー」のギターソロ明けのAメロのJohnny自身のハモリのコーラスがとても気持ちいい。ちなみにここでも〜だぜが出てくる。


 シグナル・グランプリ 
 リアのタイアが 紫の煙りあげる
 ミラーに映る敵のGT
 あっけない勝負だぜ

 岬の果てのパーキング・エリアで
 シートだけリクライニング
 ライトを消せば流れる星の
 シャンデリア 綺麗だね


「キャンドル・パーティー」は冒頭のしっとりした部分から跳ねるようなリズムが入ってきてポップな曲調になる曲でこれもなかなかいい曲なのだが、個人的な願望で言うと、しっとり始まったそのままのテンションでこのまま終わりまでしっとりした曲としても聴いてみたかったのが本音だったりする。

このアルバムの中で一番アッパーな曲となる「セクシー・ルウ」はかなりのお気に入りの曲だ。後半、Johnnyのボーカルの上にJohnnyの歌、さらにもうひとつJohnnyの歌という何層にも重なっているという、まるでJohnnyの声のミルフィーユのような展開がたまらなく好きだ。

そしてこのアルバムで一番好きな曲が「サンディエゴ・フリーウェイ」。この曲はファーストでいうと「88の星座」のポジションにくるような曲だと思う。Johnnyの甘い声がとてもうまく曲に合っている。そして、おそらくJohnnyが弾いているわけではないと思われるエモーショナルなギターが素晴らしい。特に曲のエンディングでの長いギターソロは音が泣いていてとても心に響く。

ソロアーティストのJohnnyとして、かなり時間をかけて丁寧に制作されたと思われるこの「横浜からI LOVE YOU」には、歌で勝負するというJohnnyの強い想いが込められているような気がする。横浜銀蝿の枠を越えて、ソロアーティストとしての独り立ち。そこにはJohnnyの強い信念とチャレンジ精神が詰まっている。

ベストアルバムの「FINAL LEGEND」のブックレットに書いてあったが、Johnnyにはデビューする前に書いた歌詞、曲、思ったことを書いた雑記帳みたいなノートがあるそうだ。「88の星座」のベースとなる歌詞の隣のページに「やる前に諦めるのはやめよう。やるだけやってダメならしょうがないじゃない!」みたいな内容のことが書いてあったそうだ。いかにもJohnnyっぽい言葉で、チラッとでいいからそのノートを見てみたいと思った。

横浜銀蝿のメンバーの中では一番男くささがないJohnnyだが、実は男っぽい熱さを持ち、頑固でそれでいてスマートというタイプなんだと勝手に思っている。そんなJohnnyがひとりになって横浜銀蝿からの独り立ちをした瞬間の想いと音をパッケージした「横浜からI LOVE YOU」は、とても重要なアルバムだったんだなと今改めて思っている。

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「横浜からI LOVE YOU」収録ではないけれど、「Let's do!」の歌詞はあの当時も感じたことだが、それ以上に今聴くと自分に刺さるメッセージ性のある歌詞なんである。そう、これがJohnnyなんだよなと思う。この「Let's do!」の歌詞のような精神的にポジティブな想いはJohnnyの中に、おそらく今でも生き続けているに違いない。そして、こういったJohnnyからのメッセージに勇気をもらった人は数多くいることだろう。

 つらくて苦しい 遠い道かもしれないけど
 いつでも俺達 ハートだけは きめようぜ

 何かしなけりゃと思ってるだけじゃ
 いつまでたっても 何も変わらない
 いそいで行くこた ないんだぜ
 あせらずゆっくり 行こうぜ
 かんじんなのは 歩き出すことさ
 Let's do!

40thのステージでJohnnyのソロ曲が聴けたことは、当時のステージを体感していない者としては本当に嬉しかった。「ジェームス・ディーンのように」を演ってくれた時は涙が出たし、「$百萬BABY」を演ってくれた時は腰抜かしそうになるくらい嬉しかった。"I Love you I need you これが最後の賭けさ♪" の時にピッキングした後に右手が円を描くJohnnyの姿に当時映像で見て憧れていたが、それを生で体感できるだなんて…!そして銀蝿一家祭ではJohnnyの単独ステージも初体感できるのだからたまらない。中学生の時に死ぬほど憧れた白い衣装と白いストラトの白Johnnyで登場してくれないだろうか…白Johnnyだったらオレは間違いなく泣く。

今回の40thの活動はJohnnyが参加してくれたからこそ成立したプロジェクトだった。レコード会社での裏方仕事をやってきたJohnnyがまた表舞台に立つというのは想像以上に大きなチャレンジだったと思っている。例えば、自分の働いている会社の60歳を越えた社長がバンドでギター弾いてステージに立つなんて普通だったら絶対ないことなのだ。

そのJohnnyが静かにギターを下ろす時が近づいてきている。Johnnyは横浜銀蝿から離れてまたレコード会社の社長として諦めることなく色々なチャレンジをしていくのだろう。そのチャレンジを心から応援している。そしてJohnnyは永遠に憧れの的なのだ。あとはJohnny本人が「横浜銀蝿40thをやって良かった」と心の底から思ってくれていることを願っている。


it's only Rock'n Roll
Special Thanks to
"SWEET LITTLE SEVENTEEN" yellow rosa


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