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ミニッツ・メイドパーク訪問記録

事の始まりは一昨年、元ベイスターズのユリ・グリエルが所属するヒューストン・アストロズと、名門ロサンゼルス・ドジャースが対決するワールドシリーズを見た時の事です。
当時メジャーリーグというものを全く知らなかった自分ですが、大迫力の試合、そしてその中で躍動するグリエルの姿に感動を覚え、いつか必ず直接観に行きたいという思いが芽生えました。
それから1年半、コツコツと貯金をし、ついに渡米の日時を決定。準備は整いました。

実はグリエルが日本にいた時、自分は北海道に住む高校生で、金銭的余裕がなく結局グリエルを日本で見る事は叶いませんでした。
なので、絶対に今回の旅行で長年の夢を叶え、彼の姿を目に焼き付けてやるぞという思いは並々ならぬものがありました。

①ヒューストンまでの道のり

時は2019年6月26日、遂に渡米当日を迎えました。荷物をまとめ、羽田空港へと向かいます。
寸前まで見てた試合ではグリエルがホームランを打っており、これが現地で見られるといいなぁと意気揚々と空港へ向かいました。

時間があまりなかったので即発券機の前に行き慣れない手つきで機械を操作。
しかし警告文が出てきて発券出来ず、職員の方を呼びヘルプを求めます。
今まで海外旅行などしておらず常識のなかった僕はここで致命的なミスをしていた事を知りました。

なんと、渡航に必要なESTA(電子渡航システム)の承認を得ずにここまで来ていました。

ESTAとは簡単に言えばVISAの代わりとなるもので、web上で簡単に申請出来ます。(申請ページは太字のESTAの項目参照)

ESTAのEの字も知らなかった僕はここで大パニック。係の人が言うにはこれがないと渡航出来ないという事です。冷静に考えれば当たり前の事ですが、何も考えてない当時の僕はすっかり取り乱していました。

親切な係の人に一からやり方を教えてもらい申請、しかし承認まで最短ならば1時間以内で済むものの最長では72時間かかるとのこと。
ESTAの承認を待ちブラウザの更新ボタンを連打。刻一刻と迫る離陸時間、渡米出来ないのではという不安、あの時の僕は人生で一番落ち着きがなかったと思います。

そして離陸時間、結局ESTAの承認は間に合わず初っ端から飛行機を逃す波乱の幕開けでした。
しかしタダでは転ばないのがオタクの根性。離陸直後にESTAの申請が通ると300ドルを支払い、キャンセル待ちの飛行機へ変更を狙い、なんとかその日のうちの渡米に漕ぎ着けることが出来ました。

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元々の飛行機はミネアポリス経由でヒューストンへと向かうルートでしたが変更した飛行機はロサンゼルス→アトランタ→ヒューストンという遠回りなルートでした。それでも食べなくなるよりはずっとマシなので「逆に色んな空港に行けていい勉強じゃないか」とポジティブになりながら飛行機に乗り込みました。

離陸して少しすると機内食の案内が。座席にメニューがあり2種類のうちから一つを選ぶ方式でした。

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自分は「ハーブをまぶした鶏胸肉のグリル トマトリゾットとズッキーニリボン」を注文しました。

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ハーブの効いた鶏肉と付け合わせの海老とホタテはしっかり味がついており、パンにもよく合いました。人生初の機内食はなかなか美味しかったです。ごちそうさまでした。

食べた後は仮眠を取っていたのですが、10時間近くずっと座っていたのでお尻が今まで経験した事のない痛みに襲われます。座っていられないくらいのズキズキとした痛みで目を覚まし、終盤はずっとお尻の痛みとの戦いでした。

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そうこうしているうちにロサンゼルスの上空まで到達。上からの眺めでも明らかに日本と違う新鮮味を感じました。
そしてロサンゼルス国際空港に到着。

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巨大なアメリカ国旗、当然ながら全て英語の案内、"Welcome to The United States"の文字、嫌でもアメリカに来たんだなと感じさせられます。

降りてまず最初に入国審査がありました。機会にパスポートをかざし自分の写真を撮影。

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白黒でやたら霞んだ写真はまるで指名手配のポスターのようでした。
撮影を終え審査官の元へ。来た理由を尋ねられ拙い英語で旅行の為1週間滞在すると伝えると割とすんなり通してくれました。

荷物の手続きを終え国内線へと乗り継ぎ。国内線の保安検査場を通り、アトランタ行きの飛行機を待ちます。

しかしここで問題が。アトランタ行きの飛行機が3時間近く遅延し、乗り継ぎの飛行機に間に合わないという事態が発生しました。
そこで夜の便へと変更し、早朝に着くように変更。その結果待ち時間が9時間超えになりました。既に検査場を通過した後だったのでショップをうろつくくらいしかやることもなくとても暇な時間でした。

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出発ロビーにあるショップです。ロサンゼルスなだけあってドジャースグッズが多く並んでいました。

ようやく離陸時間になりアトランタ行きの飛行機に搭乗。

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約5時間のフライトでアトランタ着。再度ヒューストン行きの飛行機に乗り換えです。
ターミナル間の移動は空港の地下を通る自動運転の地下鉄で行います。料金は無料な上に2〜3分に1本は来るので便利でした。

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そしていよいよ目的地ヒューストンへの飛行機に搭乗します。
アトランタからヒューストンは約2時間とアメリカ国内の移動にしてはかなり短く、あっという間にヒューストンに到着。

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日本を飛び立ってから約30時間、アクシデントもありながらたどり着いた瞬間はある種の達成感を覚えました。

②ミニッツ・メイドパーク訪問(1日目)

到着初日からいきなり野球観戦を控えていた僕は早速市街地へ。ヒューストン最寄りのジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港から市街地への移動手段はバスでした。
所要時間は大体40分程度で値段は1.75ドルと日本に比べると超格安。ただ、バスに両替機はないのであらかじめ崩さなければいけません。

市街地に到着しバスを降り、手始めにホテルに向かいました。
自分が取ったホテルは1泊約13000円程度でテレビや冷蔵庫やシャワールーム付き、ロビーにはコーヒーメーカーや水飲み場付きとなかなか好条件のホテルだったんじゃないかと思います。

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1人のくせにダブルベッドでした。

荷物を置いて着替えを済ませた後は早速球場へ。

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遠くに見える球場。否が応でも期待が高まります。
ちなみにMLBの球場は「リュック持ち込み禁止」の場合があるので注意です。このミニッツ・メイドパークも持ち込み不可で僕は一度追い返されました。

リュックをホテルに置き、改めて手荷物検査場を通り、いよいよ入場。

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日本の球場とはまた違う圧倒的な開放感、長旅の疲れを忘れるくらい見惚れていました。

席に着席した頃にはスタメン発表の時間。6番にはYuli Gurrielの文字が。

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ついにグリエルの姿を生で見ることが出来るんだと実感が湧いてきた瞬間でした。

そうこうしているうちに試合開始、この日のアストロズの先発はブラッド・ピーコック。しかしこのピーコックが誤算で初回から4失点。いきなりの炎上劇、これには苦笑いを浮かべる事しか出来ませんでした。

そして2回裏、ついにこの瞬間がやってきました。

グリエルの姿を見たいという長年の夢が叶った瞬間です。
長い時間をかけて来た甲斐があったと1人で感激してました。そんなグリエルは僕の目の前で2打席連続安打。おまけに守備でも好プレーを見せ一つ一つの動きにずっと見惚れていました。

せっかく来たので雰囲気を味わおうと試合中は球場内を散策。まずはショップへ向かいました。
球場内には複数ショップがあり、普通のショップはもちろんの事、選手が実際に使用したレア物が売っているショップもあり、使用済みヘルメットなどを実際に手に取って見る事が出来ました。

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ショップ閲覧の後は球場飯を堪能。この日はチキンとポテトのセットを注文しました。(値段は10ドルほど)

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そこそこ値段はするもののサイズはかなり大きく、これだけで腹を満たせるほどのボリュームがありました。

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そして巨大なフローズンドリンク。こちらは売り子さんがぶら下げて席に売りに来る事があります。
値段は15.75ドル。日本の球場と比べるとサイズは大きいですがその分値段もするといった印象を受けました。

…と球場の雰囲気は楽しむことが出来ましたが、この日の試合は初回の4失点の後もずるずると失点し0-10の大敗でした。
疲れが溜まっていた僕はホテルに戻ってすぐに寝ました。

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③ミニッツ・メイドパーク訪問(2日目)

この日は昼から夕方まで大雨が降り続いていましたが、それが弱まった隙に球場へ。

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この日の席は前から二列目という特等席。チケットはStubhubで購入し、値段は152.94ドルでした。

着席してしばらくするとグリエルがストレッチの為一番早くグラウンドへ。
前日よりも格段に近い距離にいる推し、スマホのカメラを構える手は微妙に震えてました。

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今回の旅で自分はグリエルに一瞬だけでもいいので認知されたいという目標があり、横浜時代のグッズを持参するなどやる気は満々。前から二列目という好条件を活かしここでベイスターズ時代のタオルを掲げました。

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しばらくしてからそれに気づいたグリエル、僕の方を見て大爆笑していました。あの時の顔は今でも覚えています。

少しするとスタメン発表。この日のグリエルは5番サードでの出場でした。

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スタメン発表と打席に立っている選手紹介。
この日は30年ほど前の復刻ユニフォームを着用。スコアボードもファミスタのようなレトロ調になっていました。

余談ですが、この日のマリナーズはオープナーで、一番手として登場した投手は元ヤクルトのマット・カラシティーでした。

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この日はタコス(9ドル)を食しました。前日に食べたチキン&ポテトもそうですがサイズが大きく一品で腹を満たす事が出来ます。味自体も美味しいです。

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この日は前日とはうって変わって接戦。このまま延長戦にもつれ込みました

延長10回、マリナーズ一死二塁のチャンス。ここでマリナーズのJ.P.クロフォードのライナーにグリエルが反応!ファインプレーでピンチを救います。
前から2列目という特等席から見るプレーは全て迫力がありますがこのプレーは特に凄かったです。

無失点で切り抜けた後の攻撃、一死走者なしで打席にはグリエル。何か起こるかもと思いビデオを撮影し始める僕。

その期待に応えてくれたグリエル、カウント2-2から振り抜いた打球は一直線にレフトスタンドへ飛び込むサヨナラホームランに。

スマホを持つ右手はガタガタに震え、声も出せず、人生で一番感極まったと言ってもいいくらいの状態でした。「生きてて良かった。。。」と心の底から思いました。

興奮冷めやらぬままセレモニーへ。
開閉式の屋根がオープンして花火を打ち上げていました。
花火が終わった後は普通に帰りましたが、試合後でもハイテンションなアストロズファンが奇声を発していたり、ハイタッチを求めてきたりなかなか盛り上がってました。

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④ミニッツ・メイドパーク訪問(3日目)

あれだけ間近でグリエルの見れるならサインを貰えるチャンスもあるかも、そう思った僕は午前中にペンなど必要な買い物をし、それから球場へと向かう事にしました。

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ヒューストンの街並みを楽しみながら買い物を終わらせ、球場入りです。

この日は今年からアストロズに加入した安打製造機、マイケル・ブラントリーのレプリカユニフォームが先着10000人にプレゼントされる日で、早めに行った僕もユニフォームを貰って来ました。

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周りにいた多くの人達もブラントリーのユニフォームを着用してました。

サインをもらう為に前列にいた人達の間に入れてもらい、「せっかくだから横浜のユニフォームを見て欲しい」と思って持ってきたベイスターズ時代のユニフォームを広げてグリエルを待ちます。

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明らかに周りの人にとっては見慣れないユニフォーム。これを見たアストロズファンから

「このユニフォームは弟の物?」

と聞かれました。そこで僕は、

「日本に横浜ベイスターズというYuliがかつて所属していたチームがあってそこのユニフォームだよ」

というような事を言って布教してきました。英語力がないので恐らく正しくは伝わっていないと思いますが頷いていたので少しは分かってくれたかもしれません。

事前に購入したペンを持ちグリエルを待っているとここで隣にいた高校生くらいの子に声をかけられます。

「どこから来たの?このユニフォームは?」
「これは日本にある野球チームのユニフォームだよ」

ここで会話が終わると思っていましたが、この隣の子はサインをよく貰うらしく、僕の持っているペンを見てこう言ってきました。

「黒いペンよりも銀色のペンの方がよく見えるからこのペンを貸すよ」

僕の事を日本人だと知ったその子は親切に日本語訳で伝えてくれ、ペンも貸してくれました。

そうして待っていると、ついに選手が近くにやってきました。

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球界を代表するエース、ジャスティン・バーランダーです。
間近を通った時の存在感は言葉で言い表せないくらいのものがありました。

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アストロズナンバーワンの俊足の持ち主、マイルズ・ストローです。彼の足の速さは必見です。
隣の子がこの日のチケットにサインを書いてもらってました。

そしてついに本命、グリエルが間近にやって来ました。ここでまたしても親切な隣の子がグリエルを呼ぶ手伝いをとしてスペイン語で呼びかけてくれました。

そして近くに来たグリエル。横浜のユニフォームを見るや否や日本語で声をかけてくれました。

この瞬間頭が真っ白になった僕、しかし目的は忘れていなかったのでおもむろにカメラを構えます。それに気づいたグリエルはピースサイン。

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5年もの間抱き続けていた夢が叶った瞬間です。

日本で見れると思った矢先にいなくなり、間近で見る事は叶わないのか…と失意のどん底にいた2015年。
あれから4年、ついに自分は目的を果たしたんだと大きな達成感を感じました。

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当然サインも頂き、世界に一つだけのユニフォームの完成です。

試合前に濃い時間を過ごし、充実した気持ちでプレイボールです。
この日はアストロズの先発がバーランダー、マリナーズの先発が菊池雄星と熱いカードです。

この試合の途中嬉しいことがもう一つ。
キャッチボールで使用したボールをグリエルがこっちに投げてくれました。

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受け取ったボールは大事に持って帰り、ケースに入れて飾る事にしました。

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守備の上手いイケメン、ジョシュ・レディックの紹介画像です。

この日もまたしても接戦、この後5-5の同点となり延長戦に突入します。

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イニングの合間に大きな旗を持って登場したのはアストロズのマスコット、オービットです。
マスコットもフレンドリーで、試合前はファンにちょっかいを出してきます。
僕もちょっかいかけられたうちの一人で、ユニフォームをひったくるような素振りを見せてきました。笑

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延長10回裏、先頭打者のブラントリーが出塁しバッターはグリエル。
球場にいるアストロズファン全員が昨日の再現を願い大きな声援を送ります。

その願いは現実となりました。

センターオーバーのサヨナラタイムリーツーベース。
2試合連続のサヨナラ打。
僕の想像、妄想すら現実にしてしまう格好良さ、紛れもなくスーパースターだなと実感しました。

そしてその後のインタビュー中にグリエルは、タオルを掲げてアピールする僕の方を向いて力強く右手を上げて返してくれました。

一生彼の事は応援し続けると改めて誓った3日間でした。

⑤観光記録

野球の中身が濃くなりましたが、滞在最後の日と帰国までに撮ってきた写真をいくつか紹介します。

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球場横にあるレストランの店内風景です。試合がある日はアストロズの中継を流すスポーツバーのような雰囲気になります。

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ヒューストンの街中を走る路面電車です。1.25ドル払えば数時間乗り降り自由とかなり親切なシステムでした。SuicaのようなICカードも販売してました。

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アストロズの旧本拠地、アストロドームです。この日はイベントもなく閑散としていました。

…と多少は風景の写真は撮れたものの、この日は運の悪い事に日曜日でほとんど店は閉まっていました。
バスも空港行き以外はほとんど運行していなく、日本では毎日やっているようなマクドナルドやスターバックス等も日曜日では15時には店が閉まるので、夕方には大体の店が閉店してます。

見れる場所もなくなったので早めに空港に移動。

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宇宙センターのあるヒューストンらしく、空港には宇宙飛行士の模型があります。

翌日にバスで来ると間に合わない為この日は一晩空港で待機、翌日早朝の飛行機でミネアポリスまで向かいました。

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ミネアポリスの空港にはミネソタを本拠地とするミネソタ・ツインズのグッズ等が多く並んでいました。

ミネアポリスで乗り換えを済ませ、羽田空港行きの飛行機に搭乗。

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そして無事に帰国を果たしました。(写真はありません。)

随分と観光部分が適当な感じになってしまいましたが、これは観光の時間が日曜日だけしかない余裕のない僕のプラン立てに問題があるので、観光目的で渡米したい人は日曜日以外に時間を作ることをおすすめします。

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⑥最後に

長くなりましたが、これが僕の嘘のような本当のお話です。

好きな選手が海外に行った方、MLBを生で見たいけど勇気が出ない方、少しでも行きたいと思ったら絶対に行くべきです。

行って後悔はしないはずです。

このnoteが迷ってる方への後押しになれば幸いです。

最後までご覧頂きありがとうございました。




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