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キングオブ倉本信者的倉本寿彦寸評

激動の2020年レギュラーシーズンも無事全日程が終了し、個人成績も確定となった。
DeNAは佐野恵太が初の規定打席到達で首位打者に輝くなど、スローガンが示す通り若手の躍進が目立つシーズンだったが若手以外にも大きく成績を改善させた野手がいる。
昨シーズン打率.121と極度の打撃不振に陥り、守備でも精細を欠き続けていた内野手、倉本寿彦である。
過去にはレギュラーとして活躍していた時期もあったが2018年頃から低迷、戦力外候補と呼ばれるまでに成績を落としてしまっていたが、今年は前評判を吹き飛ばす程の復活を見せ、まだまだチームに必要な戦力である事をアピールした。
そこで今回は、倉本寿彦の成績を過去と比較し、攻守においてどのような変化点があったのかを見ていきたいと思う。

1.打撃面

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先程も言った通り、倉本は年々打率を落としており、昨年は打率.121(33-4)にまで落ち込んだ。しかし今年は打率.276(199-55)と去年の倍以上にまで回復。この打率アップはもちろん特筆すべき事だが、個人的に注目したいのは四球等も含めた出塁能力だ。

2015年 265打席 10四球 四球率3.8%
2016年 566打席 22四球 四球率3.9%
2017年 539打席 18四球 四球率3.3%
2018年 235打席 6四球 四球率2.6%
2019年 35打席 2四球 四球率5.7%
2020年 216打席 16四球 四球率7.4%

去年までの5年間200打席以上立ったシーズンは5%にも達しなかった四球率が今年は7.4%と例年に比べ粘り強さと選球眼が向上した事が分かる。
それにより出塁率.333と規定未達ながらキャリア最高の数字を残すことが出来た。
事実、ボール球のスイング率も例年より3%ほど改善され、尚且つコンタクト率も2016年水準の成績を残している。

そして今年は打球傾向にも変化が見られた。

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こちらは今年の倉本の打球傾向についての表になる。(デルタより引用)
特に注目したいのは右側の6項目で、これらはPull%,Cent%,Oppo%→打球方向Soft%,Mid%,Hard%→打球の強さ
を表す。
まず、今年の打球方向は、
・Pull%(引っ張り)28.6%
・Cent%(センター)35.1%
・Oppo%(流し)36.4%
となるが、これを近年のものと比較してみると、引っ張りの打球が17,18年と比較して減少してる事が分かる。
倉本は17年頃から長打増加の為か引っ張りの打球を増やしていたが、今年はその打撃を捨てて原点回帰をしたと考えられる。
それにより多少長打は減ったものの打率はV字回復し、見事復活に成功した。

次に打球の質について。去年はなんとHard%15.4%と全くと言っていいほど強い打球が飛ばなかった倉本。しかし今年は35.3%とキャリアで最も強い打球の割合が多かった。
これもキャリアで2番目に良かったのは2016年で、打球方向や質、あらゆる面で2016年に近い数字を残し、それでいて選球眼を改善するなど打撃面ではかなり実りのあるシーズンに感じた。
ただ、終盤の不振で打率を落とした事と長打の減少はやはり残念なので、その部分とどう向き合うか2021年シーズンも期待して見ていきたいと思う。

2.守備面

2016年は開幕3ヶ月ほど無失策を記録し、堅実なショートとして守備面でもある程度の存在感を発揮した。しかしこれも2017年から狂い始め、今では悪守備の象徴とも呼べる存在になってしまった。そんな倉本だが今年は守備面でも光が見えた。
近年は併殺or肩、守備範囲、失策回避の3項目から守備力を計るUZRという指標が注目されているが、倉本はこのUZRで大きなマイナスを出す事が多く、近年はさらに悪化していた。しかし、今シーズンはそれを大きく改善する事に成功。実際にショートのUZRを比較してみると、

15年 636.1回 UZR-5.0 1200イニング換算-9.5
16年 1206回 UZR-12.7 1200イニング換算-12.6
17年 1286回 UZR-17.0 1200イニング換算-15.8
18年 58回 UZR-4.4 1200イニング換算-90.3
19年 48回 UZR-2.3 1200イニング換算-58.1
20年 436回 UZR-1.7 1200イニング換算-4.6

ご覧の通り18,19年とは雲泥の差である。
今シーズンの指標だけで見ても、二遊間を守っていながら8月以降は失策を1個しか記録せず、上記のUZRについてもシーズン後半に大きな改善が見られたというデータもある。(僕のツイート曰く9/14時点で1200イニング換算-18.9だったので2ヶ月ほどで14.3も改善した事になる)
実際に映像を見ても近年で一番軽やかと感じた方も多いはず。
どうしてもイメージが入りがちな守備の評価だが、今シーズンの倉本は数字もイメージも改善出来たと言ってもいいだろう。

3.感想

様々な指標を見てきたが、やはり個人的な印象としては2016シーズンに近いアプローチに感じた1年だった。
それでいて先ほど言ったように四球を増やすなど新たな成長箇所もあり、充実した年だったと思う。
開幕間際は打球が強いだけでポジってたと思うと涙が出るレベルの進歩である。
この調子で2021年シーズンも活躍を期待したい。

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