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採用内定は慎重に

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 今日から12月ですね。2021年もあっという間に終わりかけています。

 2021年は、緊急事態宣言やその解除でだいぶ振りまわされましたが、なんとか健康に、精一杯仕事をすることができました。

 1か月先が読めない時代を生きていますが、2021年の残り1か月を楽しく過ごし、新しい年を迎えたいと思います。

 さて、新しい年といえば、新入社員です。

 こちらも、世界経済の先が読めない中、新規社員採用に二の足を踏む会社が多かったのではないかと思います。他方で、このような状況でも着実に業績を伸ばして人員を拡充している会社もあります。

 そこで、今日は、内定に関する法律問題を取り上げます。

人材の選び方

 これまでのnoteでは、たびたび、解雇の難しさを書いてきました。

 一旦従業員として雇用契約を締結してしまうと、その契約を終わらせることはなかなかできません。

 そして、雇用契約を終わらせたい従業員ほど、会社の秩序を乱したり、他の従業員に悪影響を与えたりするので、一刻も早く退職して欲しいと思うのですが、それができないのです。

 じゃあどうすればいいのか。

 一番確実なのは、採用時に見極めることです。

 いっぺん採用してみてだめなら辞めてもらえばいい、という安易な気持ちでテキトーに採用を決めてしまうと、後で大きなトラブルに巻きこまれる可能性があります。

 会社において人の採用は、ギャンブルであってはなりません。

 そこで、まずは、会社の経営理念や経営者の信念を明確にしてそれを公表し、その理念や信念に賛同する人を探します。ここで大きく食い違う考えを持っている人をふるいにかけることができますので、仮に能力に不足があるとしても入社後に育てることも可能になります。

 とはいえ、入社後に育つ可能性のある基礎的な能力は欲しいですし、本当に会社の求める人材かどうかを見極めたいという気持ちもあるでしょう。そのようなときには、適正を検査を実施することが有効です。

 適正検査にはいろいろあるようですが、SPI試験を採用している会社は結構多いのではないでしょうか。その他にも様々なテストがあるそうで、知り合いの採用に詳しい社労士さんのお勧めは、「ミツカリ」というテストです。

 ミツカリは、採用対象者がどんな能力を持ちどんな性格なのかを明らかにするだけでなく、会社との相性も判定してくれるそうです。そして、組織自体だけでなく、配属先の部署や上司、好業績を出している人と退職者などの特定のグループとの比較もできるとのこと。

 このようなツールを使って、早期離職者を減らすと共に、解雇問題で悩むことがないようになるといいですね。

採用内定後に会社の経営状態が悪化した場合

 人材を採用するということは、その労働者の能力の問題だけでなく、会社側の能力、すなわち、経営状態の維持が問われます。

 1か月先の状況も読めない昨今、採用内定を出した直後に会社の経営状態が突然悪くなることもありえます。

 そのような時に、会社の経営状態の悪化を理由に採用内定を取り消すことはできるのでしょうか。

 採用内定通知書に、「会社の経営悪化」が内定取消し事由として規定されていれば別ですが、そのような記載がない時は、一般の整理解雇の四要素を満たすことが必要です。

 つまり、①人員整理の必要性、②整理解雇の必要性、③人選の合理性、④手続きの妥当性です。

 これらの四つの要素を総合判断の上、解約権留保(内定は労働契約の解約権を留保したもの)の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるかどうかで判断する、というのが裁判所の見解です。

 内定出しただけ、という安易な気持ちでいると、経営状態が悪化したときに痛い目にあう可能性がありますので、全ての可能性を想定した上で慎重に内定を出すようにしましょう。


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