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休業手当を支払うのはどんなとき

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 また、まん延防止措置が延長されそうな雰囲気ですが、大阪の人出はそんなに鈍っている感じはありません。

 しかし、町中を歩いていると、シャッターの下りた店先に、「まん延防止措置が終了するまで休業します」という案内が貼られているのを良く見ます。

 協力金をもらえるから無理して開店する必要もないのかもしれません。

 しかし、そこで働くアルバイトの人たちは休業手当をもらえているのでしょうか。

休業

 「休業」とは、労働契約上、労働する義務がある時間に労働できなくなることをいいます。

 事業全体または一部が停止されて、そこで働く人たちが集団で休むことになる場合だけでなく、特定の1人の労働者が個別に業務を停止する場合も含まれます。

 また、丸1日の休業だけでなく、1日のうちの一部の労働時間だけの休業も含まれます。

使用者の責に帰すべき事由

 労働基準法上、使用者が平均賃金の6割の休業手当を支払わなければならないのは、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合です(労働基準法26条)。 

 民法によれば、使用者側の責に帰すべき事由で労働義務を果たすことができない時には、労働者は働きたくても働けないのですから、“義務違反”ということにはならず、使用者に対して賃金全額の支払いを請求することができることになっています(民法536条2項)。

 民法では全額支払請求できるのに、労働基準法では6割しか請求できないのは、そもそも民法の適用される場面が労働基準法の適用される場面と微妙に違うからです。

 つまり、民法で想定しているのは、使用者に故意、過失または信義則上それらと同視すべき事由がある時です。
 何の理由もなくわざと事業所を休みにしたとか、休みにしなければならない事情もないのにうっかり休業してしまったような場合です。

 これに対して、労働基準法で想定されている場面は、民法の場合よりも広く、使用者に故意や過失がなく、使用者がどうしようもないようなことであっても使用者側の事情で休業するような場合です。
 使用者に過失がなく機械が故障してしまって操業できないとか、材料が手に入らないとか、監督官庁の指示で操業停止になっているような場合です。
 こんな時でも、労働基準法上は平均賃金の6割を休業手当として支払わなければならないし、しかも、支払わない場合には罰則も準備されているので、むしろ労働者の保護に厚い定めになっているということができるのです。

 ただし、不可抗力で休業せざるを得ない場合は、さすがに休業手当の支払いは求められません。
 今、彼の地では戦争が起こっていて、パンの原料の小麦の輸入量に影響があるのではないかというニュースがありましたが、戦争は不可抗力といえますので、小麦を仕入れられずに操業を停止さぜるを得なくなるパン製造会社では休業手当の支払いは必要ない、ということです。

まん延防止措置・緊急事態宣言による休業

 これらの措置・宣言によって、自治体から営業自粛を求められた場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないと考えられます。したがって、休業手当の支払い義務はありません。

 他方で、このような自治体からの要請がないものの、自主的に会社の判断で営業を停止する場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」と言え、休業手当を支払う義務があると考えられます。

 ただ、休業手当の支払い義務がない時でも、雇用調整助成金を活用するなどして、労働者の生活を確保し、事業を再開した時に気持ちよく職場に戻ってきてもらえるようにしておくことが大切ですね。

 

 

 

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