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違っているからこそ~困るを伝える~

1 第8期スタート


令和2年10月から、第8期毎日ビデオジャーナリズムラボは、
スタートした。期間は6ヶ月。
講義内容としては、個人の発信力を映像などを使って
高めるプロジェクトだ。
しかも、ZOOMを使用するオンライン開催という。           
 講師陣は、毎日新聞グループホールディングス顧問の小川 一さん。   
令和メディア研究所主宰、インターネットメディア協会理事 下村 健一さん。  
ジャーナリスト/NPO法人「8bitNews」代表の堀 潤さんの三人が講師を務める。

(公開時現在、新規募集を停止しています)

私は2期目の参加。
車いすで、左手が不自由なため、カメラを持つ事が出来ない。
故に外で動いての動画撮影は出来ない。
室内のみもしくは、動かず右手の範囲だけの動画撮影は
限界があるなと感じていた。
これには第7期の作品発表会で下村講師が
「外で撮る方がダイナミックに撮れる」という言葉が、胸に残っていた。
自分の出来ない事に対する憧れみたいな感じだが、
当時の下村講師は、私が外で動画を撮れない事は知らなかったと思う。
なので、撮影方法として説明した事を補足します。

ちなみに、第7期の様子を書いたnoteがこちらです。

そして、オンラインという事で、海外在住者も参加されていた。
カナダ在住で健常者の受講者は、
カナダのバリアフリー状況を動画で発信していて、
感想を求められたりした。
しかし、私は海外のバリアフリーを
舞い上がって羨ましいと思う時期を過ぎ、
日本のバリアフリーに目が向いていたので
「いいですね。羨ましいです」
という内容の当たり障りのない返事をした。
カナダのバリアフリーか。ちょっと厄介だなと思った。
進んでいるカナダと日本のバリアフリーを比較されると。

2 眼鏡で動画を撮る


クラウドファンディングで眼鏡型カメラが紹介された。
両手が塞がっていても、動画が撮れるという。
眼鏡がカメラになっていれば、左手が不自由な私でも
動画が撮れると支援した。
しかし、商品到着後支援者から、提示されていた録画時間より短いとの指摘があった。
業者は日本語に対応したら、録画時間も短くなったとの事で返品した。
また、別のサングラス型のカメラを支援した。

(支援は終了しました)
しかし、よく考えたら必要ない時も
サングラスに抵抗を感じて、
眼鏡型カメラも支援した。

(支援は終了しました)
そして、サングラス型の支援者のコメントやYoutubeを見ると
「眼鏡型カメラは盗撮みたいだから嫌」や「悪用厳禁」の文字があった。
そうか、便利だけど隠し撮り出来ると危険な一面も認識した。

3 違いのわかる力を活かす

 私が動画を撮るとしたら、車いすの事だな。
でも、健常者が多い世界で理解してもらえるのかな・・と
漠然と不安を抱えていた。
そんな時、Schooで阿部広太郎さんが講師の
「時代に名前を付けてみる」を受講した。

(※録画授業は、有料会員のみ視聴可能です。ご了承ください)

 課題で『今の時代を〇〇の時代で表現しよう』があり、
受講生から沢山の答えがタイムラインに書かれた。
私は10分で2個しか思いつかない。
 阿部さんは「(課題が)すぐに思いつかないのは、その通りです。
普段から大共感&違和感をストックしておきましょう」と言われた。
音楽の趣味などマイナーな感覚を持つ、私は共感を得るのは難しいと
「自分の感性がマイナーなので、他と合わないと言いづらい」と質問した。
阿部さんは少し考えて
「それは、沢山の人が気づけてない物を
見つけられる力とも言い換えられると思うので、
質問頂いた四つ葉さんにとって、感性とは何かを考えた方が良くて、
もしそれが感性を違いが見つけられる力だとすると、
四つ葉さんは四つ葉さんにしか見えない世界があるし、
それを見つけられるものがあるから、
そういうものを見つけた時に、
ものすごくそれを、誰かと共有とか分かち合う時って、
汗をかかざるを得なかったりとか
一生懸命にならざるを得ない事が
あると思うんですけど、
その行動や行為にはすごく意味があると思っているので、
感性がマイナーである事。
感性が他の人と違うなと思う事は、別にすごく誇らしい。
いいんじゃないかなと、僕は思います」
と答えてくれました。


それを聞いて、そうか撮る価値はあると考えましたが、
作品制作にまでは動かない私でした。

4 制御不能の車いす


ある日の自宅の帰り道
暗い夜道で電動車いすの
左前のタイヤをパンクさせた。
すぐ車道に向けて傾斜した道で
スティックを懸命に反対に動かしても、
車道に流される力に抗えない。
まさに、制御不能で「車に轢かれる!」と覚悟した。
偶然、手前に駐車した車があり、そのレーンで止まった為、無傷で済んだ。
道路の傾斜は、水はけの為ともいわれるが不便な時もあるなと思った。
電動車いすは、後輪駆動が幸いして、何とか歩道に戻り、
左前がパンクしている為、ガタンゴトンと、なりながらも何とか帰宅した。

5 動画を撮ろう

職場から帰宅するまでの車いすの困ったを動画に撮ろう。
動画だと、状況を示せるから健常者の理解が得られるかも。
車道に流される危険性を知ってもらいたい。
これは、当事者の私にしか撮れない。
どうせなら、地下鉄に乗る様子も撮りたいと
東京メトロに問い合わせると、改札やホーム、電車内、
他者が撮影されているもの等は
YoutubeにUPするのは、NGだそうです。
降車駅のスロープ忘れは、数知れず。
スロープの固定無く、踏み外す(?)事数回。
運転士さんが駅員さんの「お客様乗車中」のアナウンスを聞かず、
目の前でスロープが電車の扉に挟まれた経験がある身としては、
とても残念でした。
個人情報保護なんでしょう。
それから、車いすの視点では無くなるかもと、
撮影時に決めた事は、撮り直しをしないでした。
ナレーションを入れる為に、喋りながら走っていると、
カメラが無いからか、不思議に思われている方もいたし。
通行人の顔が映らないように、下を向きながら撮っていました。


6 車いすの視点と動画編集


撮影した動画が、車いすの目線では見切れている箇所がある事。
夜道が思ったより、真っ暗な場面に頭を抱えました。
前回までは、携帯電話のアプリで編集でした。
今回は、携帯電話に眼鏡型カメラの動画が読み込めず、
パソコンに動画編集ソフトをインストールした。
Youtubeの説明動画を見ながら、編集し、
ほぼ完成という時に、分かりやすいようにファイル名を変更したら、
次からファイルが動かずに、泣く泣く最初から編集し直した。

編集の時には、カナダのバリアフリーと比べられるのは、
嫌だなとか考えたりもした。
その時、藤井風さんの『もうええわ』が流れた。


もうええわ 甘い夢ばっか見させんといて
もうええわ 要らんことばっか聞かせんといて
もうええわ 手放したいもの今全て この空に捨てて
もうええわ 何が大切なん?よう選んで
もうええわ そう思うならサッサ手放して
もうええわ 自由になるわ
泣くくらいじゃったら笑ったるわ アハハ…
                  もうええわ/藤井風 から引用


そう、人の事より、自分の動画を良くしようと。
電動車いすの速度の説明や、車いすのライトが暗いなどを付け加え、
怖かったけど傾斜から車いすが流される様子を再現するなど
情報(※)としないよう気をつけた。
※傾斜から車道に流されたとテロップの文字だけでは
 そういう危険があるという事で情報に終わってしまうが
 状況を再現する事で、危険が更に伝わると
 第7期の堀講師の評価を参考に実践した。

そして、完成した動画を提出する際、
カナダ在住の方の動画が先に提出されていた。
比較され易くなる。
誰か先に提出してくれないかなと1時間待ったが、
提出者が現れず、仕方ないと課題を提出した。
その動画が「~夜の街を走ってみました~困っている車いす」です。

7 作品発表会

 提出した以上、カナダと比較されても
審査員がどう見るかだからと思う事にしたなか、作品発表会が始まった。
 小川講師は
 「いや~唸りましたね。本当に。
すごい目線というものが、これだけ強力なものかと唸りました。
そして参加してくださっているチームの力ですよね。
カナダのああいう話があって日本ではと思った時に
これが出てくるという素晴らしいパスワークというか。
危ないなというハラハラ感も一体化できますし。
そして見て頂いた方ご苦労様でした~
という明るい声とのコントラストもすごく良くて。
とっても見入ってしまいましたね。本当にいい作品だと思います。」
と評価されました。

 下村講師は、テンション高く、
 「いやもうなんかびっくりする位、この6ヶ月で発信力をグワーッと上げられたなっていう感じがして、何か嬉しい作品でしたよ。
 イントロも本当にいいし、これがどういう目線で、
どうやって撮ってるかっていう事を、みんなに共有してくれたお陰で、
すごくその後見る上で、理解を深める為に重要な役割を果たしているし、
生実況はとてもいいし、
唯一惜しかったのは、文字の所ね。伝えたい事が多すぎて溢れちゃって、
此処を整理出来ると更にいいなと思いましたけど。
鏡の矢印も、最初此処に、私ちょっと映ってるよって意味で
矢印してるかと思ったら、その後に、バックの所でね、
鏡を此処にある事を前もって出してた意味がすごいガッと出て来てたし。
僕も言われるまでそういえば気づいて無かったけど、
夜道を車いすで行く時に、自動車や自転車に比べて、
確かに車いすのライトって何か弱いよなって、はっとしましたし。
全て歩道の傾斜もね。
スロープにする事は良いと言われていたけど、
あっ、こういう危ない、
ズルズルっと車道に出ていっちゃう問題もあるんだというのを
リアルに示してくれてたり。
まあ、本当に最初から最後まで関心されられっぱなしで、
お見事でございました。」
と評価されました。

 ゲスト講師は
 「本当に節々までやっぱり考えられた流れだったなという風に思って。
本当に見入ってしまって。
あっテクノロジー(眼鏡型カメラ)って
こういう活用の仕方があるんだっていう事に始まり、
冒頭のレポートが非常に活きていましたよね。最後の流れまで。
下村さんが仰った矢印の所も、最初からやっぱり説明しなかったのが良かったですよね。
映っているこの鏡を強調したのは何でだろう。
見えないからか、届かないからか何だろうっていう風に思ったら、
あっ成程。成程っていう風に。
そうやって見る側を考えさせてくれる事によって
引き込んでくれる自分事化してくれる事だったと思います。
節々の言葉も本当にリアルで、
振動でこう舌噛んじゃったっていうところもね。そうですし。
後やっぱり暗い中での段差って、あっ確かに死活問題だよなっていう事が、よく本当にひしひしと伝わってきましたし。
まさに下村さんが常々仰っているような
私だから出来るっていう映像が体現されたなって思います。」 
と評価されました。

 堀講師は、
 「四つ葉さんのまたキャラクターがいいですよね。
端々に亘って、後サービス精神があって。
此処に映ってるよって矢印が付いたりとか。
本当に見ている人にも優しい動画だなと思いました。
四つ葉さん。素晴らしかったですね。
本当下村さんが仰ってましたけども、
初回講座参加された頃に比べると、
バージョンが数段UPしていて。
後は、四つ葉さんご自身の表情もね。
何かすごい明るく話されていたのがすごく嬉しかったです。
(最後の発言は上に記載した第7期にある
障害を晒すことに拒絶があった私の気持ちを受けての事だと思われます)

8 結果発表!

 そして選考の結果、大賞(最優秀賞)をいただきました!
車いすの目線から入っていって、出だしから、つかみから最後の。
そして四つ葉さんの明るい性格と
本当にコントラストが非常に良かったですね。
ほのぼのとした気持ちと、
それからこの社会を変えていかなければいけない気持ちと、
日常の風景が見事にミックスされていた。
というのが受賞理由でした。

正直、ミャンマーに関連した映像作品が何点かあり、
今の情勢から見ると、これらが賞を獲得するのだろうなと思ってました。
車いすあるあるにせず、健常者にも解る説明や
怖くても歩道の傾斜から道路へ流される状況を
再現した勇気が評価されたのだと
自分では思っています。

二人の視線違っても。視点違っても
心はいつも一緒さ
君の痛み味わう時
孤独を分かる時
確かにある不確かなモノ
ai.. I, I Love you
           『愛の出番』/さかいゆう から引用

              終

ここまで、長い文章をお読みいただいた読者の皆さま。
お名前使用を快諾いただいた毎日ビデオジャーナリズムラボの講師陣   小川 一さん・下村 健一さん・堀 潤さん。            
引用の快諾をいただいたコピーライター 阿部 広太郎さん。
第8期毎日ビデオジャーナリズムラボの受講生とゲスト講師さま。
最後に、音楽で支えてくれている藤井 風さん。さかいゆうさん。
ありがとうございました。




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