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フランスおいも天国


冬の間の温かいご馳走は煮込み料理とかラクレットチーズなどのボリュームたっぷりものに限る。

そう、しかも何故かこのシーズンに無性に食べたくなるのはイモなのである。
現在私の冬の主食はじゃがいもといっても過言ではないくらい。

実は個人的には夏の間はほとんど食べられないのに…。少し重すぎる様な気さえする。日本にいた時には比較的よく食べていたポテトサラダを主食として、パンも摂らずに白ワイン、或いはプロヴァンスのロゼワインと合わせて栄養補足をしている感じである。

正直なところ、年を重ねるにつれて夏は家ではキュウリとガスパッチョ、そしてスイカという情けない食事をしていた時期もあったが、そんな事ではいかんと気が付き、やっと段々と食事改善に努める様に考え始めた。

そこで目についたのが結局じゃがいも。
フランス語では<ポム・ド・テール>という。

じゃがいもは世界各国、それぞれ事情が違うだろうけれども今回はフランスの場合について語ってみよう。

まずはフランス食物史の中でのじゃがいもと言うと、<パルマンティエ>の名を知らずに通り過ぎることが出来ないのは明らかである。

アントワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエ

パリの地下鉄3号線に<パルマンティエ(parmentier)>と言う名の駅がある。
そこのプラットフォームには他の駅と比べて「あれっ?」と思わせるインスタレーションの様なコーナーがある。
その彫刻は二人の人間像で、芋を与えてている方がアントワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエ(1737-1813)
でフランスの薬剤師、農学者、そして栄養学者でもあるお方。
なんで駅のこんなところにこんな物がと、初めて見た人は理解出来ないに違いないが、駅名はこの方の苗字の<パルマンティエ>からつけられたからである。

彼らの背景にはじゃがいもの花の写真が見える。パルマンティエはルイ16世にこの花を献上したこともあり、これはそれなりに彼のじゃがいも普及活動に役立っていたのだろう。

そう、パルマンティエはフランスでの特にじゃがいも普及で知られている。
18世紀フランスではハンセン病を引き起こすと考えられていたりして、1748年には議会でじゃがいも栽培を禁止する法律が定められていたりした中に研究や普及活動など、彼の様々な形の努力のおかげで結局1785年(この年は不作であった)にフランス北部ではじゃがいものおかげで飢饉を逃れる事が出来、そして国全体に広まっていった。

デラックスポテトとソース

どんどん家庭料理や、現代では特にフライドポテトなど子供から大人まで皆大好き。
そういえば私がフランスに到着した時にはマクドナルドには既に<デラックスポテト>なるものが存在していた。タルタルソースみたいなものが付いてくるのだが、それはなくても充分美味しい。
大きなサイズのカットなのでホクホクしてボリューム感も最高。
あれを一度食べたら普通の、いわゆるフレンチフライでは物足りなくなる。


さてここで名前が少々分かりにくいが為に家庭料理としてあまり日本では親しまれていない感があるが、聞いてみれば「な〜んだ。食べたことあるよ。」と思うじゃがいも料理2点を紹介しよう。

アッシ・パルマンティエ



先ずはズバリ<アッシ・パルマンティエ>
から。もちろんあのパルマンティエの名と、アッシはミンチの事なのでこの名がついた。
イギリスのシェパーズ・パイと似ている。
基本はマッシュポテトと挽肉であるが、かもコン(鴨のコンフィ)を挽肉の代わりに使ったり(下の写真はとあるマルシェで売っていた鴨コンのパルマンティエであるが、これが格別に美味しい)、前日の残り物を(特にポトフなんかね)上手く使用してアレンジしたりと、幅広い応用が出来るので家庭での一品として活躍するのは間違いない。

鴨のパルマンティエ


更にはやはり忘れてはいけない<グラタン・ドフィノワ>、ドフィノワとはフランス南東部の地方名で、この名がついた由来はドフィネ中将のシャルル・アンリが、役人の為に開いた晩餐会でこの芋グラタンが出されたのが始まりだったそう。

グラタン・ドフィノワ

ちなみに、ポム・ドフィーヌとは全く別物である。ポム・ドフィーヌとはマッシュポテトとシュー生地を合わせて揚げたもので、私的には美味しいのだが、レストランなどてはあまりお目にかからないと思うので是非家庭でお試しいただきたい。

ポム・ドフィーヌ



グラタン・ドフィノワの作り方としては基本は芋の薄い輪切りグラタンである。某料理学校で私が教わった時のシェフは薄切りのじゃがいもを牛乳で茹でていた。また、そのじゃがいもを耐熱皿に並べる前に皿底にガーリックバターを塗りつけるのもポイントであ。こうすることによって味が平坦にならず、メインディッシュとしても期待に答えてくれる。
チーズは加える派とそうでない派といるが、加えない派の言い分としてはその方が普通のグラタンとの違いがハッキリするということだが、料理家のエスコフィエなどはチーズを加えたレシピを発表している。

私もメインディッシュとして食べる場合はチーズがあった方がリッチな感じがして好きである。

また、家庭で作るときは先ず初日のディナーでチーズを上にのせてメインとしてガッツリいただき、二日目にはチーズ無しで肉や魚の付け合せとして少々食べるのもありだと思う。その際には塩茹でした、或いはソテーしたさやいんげんなどもお供に。


じゃがいも自体たくさん応用を楽しめるので、ワインも気軽に幅広くいける。
ほっくほくのパルマンティエやドフィノワとは赤ワインで、また、ポム・ドフィーヌはアペリティフに最適なので、タパスみたいにしてハムや野菜スティックなどと合わせて少しずつ出したらテーブルも盛り上がりそう。勿論それに合わせてワインや、オリジナルカクテルも色々と発案したら楽しめる事請け合い。




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