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苺のせいで、涙がぽろぽろ

私のふるさと兵庫県の山奥、丹波市氷上町から小さな白い箱が送られてきた。箱の中身は大きな大きな苺がぎっしり詰まっていて。

苺を送ってくれたのは、高校時代からの友達。彼とは3年間ずっと同じクラスだった。



−−−

高校生だったころ、なぜか私は同級生から恐れられることが多かった。

きっとヤンキーみたいな年上の先輩と仲が良かったのと、髪を染めて、遅刻の常習犯だったし、制服からタバコのニオイがしていたし、60年代のロックミュージックを愛聴し、Mステを見ずに純文学に耽けていたからだと思うけど。

今思えば、恐れられても仕方ないね。これは、浮くね。間違いなく。


もちろん、17歳の私なりにテレビの話キャキャキャと盛り上がる女子の輪のそばで引きつった笑顔を作っていたし、プリクラの交換も頼まれれば応じた。

でも、

用もないのに一緒にトイレに行くこと。お昼ご飯を一緒に食べる人をそわそわ探すこと。教室移動に連れ立って行くこと。ストーブの周りに集まり宿題をやったかなどを話すこと。こんな School Social Things for Girls みたいなことが苦痛でしょうがなくて。

ただね、こんときの私ぁ偉かった。苦痛だったから、全部しなかったのだ。孤高で良しとした。それがカッコいいと思えていたのだ。(中二病と言われればそうなのだけど)


そんなこんなでとにかく友達がいなかった。ひとりで何度ご飯を食べたことか。ヘッドフォンをして、本を読んで。



やばい。書いてて泣けてきた。まじ泣ける。私、かわいそうすぎる。

ほんと、友達がいなかったんすよ。今も少ないけど。


でもこの苺を送ってくれた友達は、私が浮遊していることを気にせずいつも絡んできてくれた。無神経に「ひとりで飯食って、さみしくないん?」と後ろから何度肩を叩かれたか。

そりゃ、さみしいよ。ったく。


周りのクラスメイトが私に持つ印象や、一見派手に見えてとっつきづらい私の外見諸々。そんなことお構いなしにと、土足で上がり込んでコミュニケーションを取ってくる。無視しても、ぶっきらぼうに返事をしても、彼はまるで気にしない。


だから…

私たちは、とてもとてもいい友達になれた。



高校を出ても、大学を卒業しても、大人になっても。会えば話すことは変わらない。いつもいつも同じ。くだらないこと。



−−−

年明けに1年ぶりに会った。私は病気で療養中だったのだけど、昔のままでいたい心配させまいと、元気なふりをして飲みに行った。

身体が辛いこと、隠し通せた。いつものようにバカみたいに意味のない時間を一緒に過ごせた。いつもどおりだ。

そう思っていた。



そう思っていたらね。

突然、大きな苺が届いた。今まで彼から何かをもらうことも、私から贈ることもしてこなかったのに。

箱を開けると、目に飛び込んできたのは見たことがないくらいに大きな苺。

それは、本当に信じられないくらいに甘くて。甘くて甘くて。

わんわんと、泣きながら食べた。


「大きな苺、美味しかった。ありがとう」

とLINEする。

「また、来年も送るからな!」

と返事があった。


また、涙が出てきた。きっと私は大きな甘い苺を食べると涙もろくなるみたいだ。

来年の春が来たら…。
またこの苺が食べたいです。


−−−


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