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「魔性の女」⑩タミコに残されたもの


 タミコはヘリテイジ煉には入らず、そのまま地下鉄に乗って自宅のある中目黒に向かった。頭が真っ白だった。あの品位ある本館は、自分の入るところではないと感じた。正しい人生に矜持を持って、我慢も美徳と感じて生きられる者だけが、許された世界。

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