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「アマゾン森林火災」で分かった思い込みの怖さ。もう一度『ファクトフルネス』を読もう。

先日、アマゾン森林火災について「大変!」とばかりにコラムを書いてしまったけれど、反省。

現在は、先頃のメディアやSNSの大騒ぎをカームダウンさせるべく、専門家による以下のような事実が散見される(ただし、このような報道は、火災を伝える報道に較べたら圧倒的に少なかったりもするのだけれど)。

今回の火災を森林伐採と結び付ける著名人やジャーナリストは、極左の陰謀論者だと批判されがちだ。昨年の大統領選にも出馬したマリーナ・シルバ元環境相は8月、自身のブログで「アマゾンのホロコースト」という表現を使ったところ、ボルソナロの支持者から激しい批判を浴びた。NASAの衛星写真は、ボルソナロ政権を動揺させるために加工されたものだと主張するツイッターユーザーさえいる。ソーシャルメディアで世界的にシェアされた写真が、過去の森林火災の写真だったことが分かると、「フェイクニュース」だという声は一段と高まった。


ただ一つ気になるのは、「アマゾンは地球の肺」「森林は酸素供給場であり、二酸化炭素の吸収源」といった指摘だ。森林の大切さを訴えるためによく使われる言説だが、これは科学的にはおかしい。なぜなら成熟した森林は、酸素を供給しないし、二酸化炭素も排出しないからだ。いや、酸素は供給しているが、二酸化炭素も排出するというべきか。


だが、この20%という数字は、まったくの過大評価だ。むしろ、ここ数日で複数の科学者が指摘したように、人間が呼吸する酸素に対するアマゾンの純貢献量は、ほぼゼロと考えられる。「アマゾンを保護すべき理由はたくさんありますが、酸素を理由にするのは的外れです」と米マサチューセッツ州にあるウッズホール研究センターでアマゾン・プログラムの指揮をとる地球システム科学者マイケル・コー氏は述べる。

アマゾンで起きている森林火災は、平年と同じほどの件数か、あるいは少ないくらいだという報道が後からなされた。これら一連のニュース報道の発端は、ただの勘違いということもあるし、もちろん、誰かの思惑が絡んでいたと考えてもおかしくはない(ちなみに、マクロン大統領はブラジルの食品をフランス国内に輸入することを望んでいないとも聞く)。

あ〜、やってしまった。今年初めに読んだベストセラー『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』に感銘を受けて、自分に言い聞かせてきたのに……

この本は人間の10の思い込みの存在に気がつかせてくれる。今回の私は以下の本能あたりが緊急作動してしまったようだ。

①【分断本能】「世界は分断されている」という思い込み

②【ネガティブ本能】「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

③【単純化本能】「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

④【犯人捜し本能】「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

⑤【焦り本能】「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み


The reaction from foreign media, global celebrities, and NGOs in Brazil stems from a romantic anti-capitalism common among urban elites, say Nepstad and Coutinho.

今回のアマゾン火災についてを取り上げた人たち(私もその一人……)の熱量のエネルギー源は、上のforbesの記事中にあるように「メディアや世界的なセレブ、そしてNGOなどの反応は先進国の都市部のエリートたちが持つロマンティックな反資本主義」によるところが大きいのかもしれない。ロマンティックな反資本主義……んぐぐっ。理想や思い込みという色眼鏡をかけず、事実に基づいて世界を見る大切さを改めて痛感した次第。

上で紹介したニューズウィークの記事でも書かれているように、

環境保護活動を嘲笑するような態度を取ってきたボルソナロ(ブラジル大統領)も、経済制裁を望む声や国内世論の批判が高まれば、対応せざるを得ないのではないかと、アストリーニは希望を抱く。「国際社会が騒がなければ、大統領は(森林火災を)気に留めることさえなかっただろう」

今回の狂乱で利点もあったと信じたいけれど、個人的にはすぐに本能が作動して「大変だ! 大変だ!」とばかりにニュースを発信してしまった自分に対し、自戒の意味を込め、この記事を書き留めておきたいと思う。

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