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人は後ろ向きに未来へ入っていく

少し前の朝日新聞に、『生物と無生物のあいだ』の福岡さんがウィルスについて書いた記事。「ウィルスという存在。生命の進化に不可避的な一部」と題されたその論考は、私の視野をガッツンと開かさせてくれるものだった。

その中の要点をザックリ抜き出すと……

●進化の結果、高等生物が登場したあと、はじめてウィルスは現れた。行動生物の遺伝子の一部が外部に飛び出したものとして。つまり、ウィルスはもともと私たちのものだった。
●親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。しかし、ウィルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる=ウイルスこそが進化を加速してくれる

私は、フランスの詩人ポール・ヴァレリーの『風立ちぬ、いざ生きめやも』の一節を思い出した。

湖に浮かべたボートを漕ぐように、人は後ろ向きに未来へ入っていく。

大森の意訳)手漕ぎボートをまっすぐ進ませるためには、進む方向とは真逆、つまり、後ろ向きで漕がねばならない。過去にこだわるのではなく、今を生きるために、私たちは過去に目を向けるべきだを。未来へ向かうために、過去に広がる景色を見つめよう。

たしか大学生の時に初めて読んだ。未来を見つめ、その不確かさにただただ不安になっていた時期。これまでの自分の過去を振り返れば、それが未来への推進力になるのかもしれない。そんなことを思って、たいそう勇気づけられた。まったく詳しくない詩の世界だが、この詩はよく覚えている。

人間の活動を停滞させ、破滅へのトリガーのように語られているウィルスだが本当にそうなのか。本当は進化へのトリガーではないのか? 

未来を見つめる前向きさだけが、未来へ進む方法なのか?

非日常が日常になっている。不安になってばかりの自分の考え方を逆から捉えてみると良いのかもしれない。

いつもとはかなり違う4月の終わり。ゴールデンウィークが始まった。

これまでの自分を見つめ、目の前のやるべきことをやり、守るべきものを守り、信じることをやり続ける。自分の場所で、誰とも比べず、自分の考え方、やり方で。この日常を粛々と。

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