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メンズ美容とバックラッシュ

2008年のノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんが死去。ニュースで過去の講演会の動画が流され、「未来は良い方向に向かっている。逆流もある。けれど、未来は明るい」というようなことを語られていた。その信念があってこそ、研究に没頭、邁進できたのだろうと思う。

先日、お笑いコンビの「きつね」の大津さんの美容に関するインタビューをアップした。その美容への探究心はもちろん、大津さんの物事を俯瞰から見て、それを分析し、自分をどこにマッピングすべきか、についてを淡々と語る自己プロデュース力により驚いた。これまで美容についてたくさんインタビューに立ち会ってきたが、これほどまでに自分を突き放して美容を語る方に初めて出会ったような気がする(と、書くと冷徹な印象を受けるかもしれないが、インタビュー自体はとても和やかな雰囲気で進んだ)。

メンズ美容に対する考え方の、現時点でのひとつの到達点を見た気がして、どうにかたくさんの方に届けたい、と願った。そして、今、多くの方に届いている。

もちろん、運が味方してくれたのではなく、メンズ美容が、たくさんの方が良くも悪くも(つまりは、否定的な方も)頭の片隅で気になっているテーマなのだと確信する瞬間でもある。記事に対するほぼすべてコメントに目を通し(予想はしていたけれど、賛否の振れ幅がとても大きい)、そして、今、メンズ美容という事象が社会の中でどこにあるのかを考える。

以前にも書いたが、私が編集者として、メンズ美容テーマを連打したいと考える理由は以下にある。

男性がセルフケア上手になれば、日本における「ケア労働」の当たり前が変化するのではないか?
『男の化粧に賛成だ。そんなことは男の本質と関係ない』(田辺聖子『男の化粧』/作品社『日本の名随筆 化粧』 より)

アメリカ合衆国の最高裁判事を務めた、ルース・ベンダー・ギンズバーグ(RBG)が弁護士時代に史上初の男女平等裁判に挑んだ実話をもとにした、映画『ビリーブ 未来への大逆転』。映画のラストの法廷シーンで、「被告は過激な社会変革を求める弁護士の被害者である」と言われ、それに対する主人公のスピーチ(約5分)は名シーンとして私の中に刻まれている。

冒頭の益川さんの「時代が進むときの必然としての逆流(バックラッシュ)」とともに、劇中、ルースへ問いかけられた前述した言葉も脳裏によぎる。大津さんの記事のコメント欄を読みつつ、

急激な社会変革が起こる際に逆流は必ず起きる。けれども、その逆流の矢面に誰かを立たせ、時代の被害者にしてしまう可能性があるということはより胸に刻んでおかねばならない。人を立ててメッセージを発信するメディア側にいる自分は、そこへの配慮を忘れてはならない、

と改めて気持ちも引き締まる。

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以前、RGPについて書いた記事はコチラ




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