昔の職場から連絡があった話

スマホを見ると着信マークと留守電マークが表示されていた。
着信を確認すると数年前に退職した会社からだった。
留守電を聞いてみる。
なんでも、昔いた部署の仕事量が多くなりまた私の力を借りたいとの事。
ちなみにこちらの会社では技術職で働いていた。
懐かしさと当時の退職時の心残りがあったので着信があった会社の代表電話へ折り返し。
「(会社名)です。」と低い声で事務的な言葉が聞こえた。
少し身構えたが「以前、御社の○○グループ(当時の部署名)で働いておりました。○○です。」と同じように事務的な言葉を返した。
すると電話の向こうから先ほどとはうって変わって明るい声に変わった。
「おお、○○君。Tです。どうしたの?」
Tさんは当時、私の採用と退職処理を担当した総務の人。
最近聞いていなかったTさんの懐かしくて優しい声。
この声を聞いた時、当時勤務していた記憶が断片的に蘇る。
「Mさんから○○グループの件で連絡があって折り返ししました」とこちらから言うと、Tさんは「わかった。すぐMさんに(電話を)回すね」と言い聞こえてくる保留音。すぐにMさんに繋がらなかったのか保留音が消え、Tさんの声で「ごめんね。今、呼び出してるからもうちょっと待って。」と気遣いの言葉をかけてくれた。Mさんに変わり、確認をとるとやはり当時所属していた部署の次工程のリーダーMさんだった。昇進して当時より偉い役職になっていた。
留守電の内容を繰り返すMさんに私は打ち合わせのアポをとり直接会うことになった。
電話を切ったあと、数年ぶりに元職場に顔を出すのだから菓子折りを買っていこうと思いついた。デパートで期間限定のサブレタルトが売っていたのでこれを購入。

 打ち合わせ当日。会社に着き内線でMさんを呼び、待っていると自動ドアが開く。当時よりも責任ある役職についたからだろうか。貫禄が備わったMさん。お互い軽く挨拶を交わし、Mさんの案内で会議室に通された。Mさんが上司を呼びに行っている間に、菓子折を新しい袋に詰め替える。ちょうど詰め替えが終わると同時にMさんとC部長が入ってきた。お互い名刺交換をして、持ってきた菓子折りを手渡して打ち合わせ開始。
打ち合わせ内容は、お互いの希望に沿っていなかったが、いったん社内で検討するとのことで終了した。
打ち合わせを終えて、私からMさんに現場の人たちにも菓子折りを渡したいこととあいさつをしたい旨を伝える。実は菓子折はMさんたち事務所用以外に現場の人たち用にも買っておいた。現場に入ることを快く快諾してくれて、Mさんと移動。C部長とは会議室で別れたが、私はC部長に「本日は、お時間を頂きありがとうございました」とお礼を言った。

 まず移動した現場は、当時所属していた部署の次工程に当たる部署。次工程であるため、当時なんども行き来したり、情報交換をしていた。退職してから数年経っているが、現場の設備も雰囲気も当時とほとんど変わっていなかった。懐かしい。次工程のDさんに菓子折りを渡す。Mさんと一緒だった私がいきなり登場してびっくりしている様子だった。当時のことや現在のことを雑談していよいよ、当時働いていた部署へ移動する。

 当時働いていた部署○○グループはリーダー、先輩2人と私の4人チームだった。途中、同期や後輩も入った時期もあったがいずれも自主退職や異動で結局、私たち4人が主力メンバーだった。私もここでの勤務生活で他部署の応援をしたこともあったが入社から退社までずっと所属はここの部署だった。ここも次工程同様、当時とほとんど変わっていなかった。変わったと言えば新しい従業員ががいたことだろうか。退職してからは数年は自分がいた部署の人たちや親しくしていた人とは年賀状のやりとりを続けていた。年賀状のやりとりの中で自分がいた部署の人も自主退職や定年で去っていた人もいると聞いていた。一番仲がよかった先輩の作業が落ち着き、私に存在に気付く。挨拶を交わし、近況報告もして菓子折を渡す。もう一人の先輩は年賀状で退職している情報はもらっていた。
当時、最もお世話になったリーダーの作業も落ち着きあいさつをして話をした。話をしていろいろ思い出す。リーダーの言葉に助けられたこと、作業の苦楽、みんなで夜中まで酒を飲み交わしたこと、あげればきりがない。やはりここの人たちはいい人達だ。一通り話を終え、Mさんに挨拶が終わったことを告げ、会社を後にする。

 その日の夕方、Mさんから連絡が来た。やはり日程が合わないとのことで今回の件はなかったことにさせてほしいと申し訳なさそうに言ってきた。私のお節介で持って行った菓子折のことでお金を使わせて申し訳なかったとも言っていた。私も現状では復帰するのは難しいのはわかっていたので、特に何も思わなかった。Mさんは職場で私と一番仲がよかった先輩の話題を出して「年賀状が来なくなって心配していたが今回、会えてよかったと言っていた」と言っていた。やはり、ここの人たちはいい人達だ。私も「今回はご希望に添えられませんでしたが、また皆さんに会える機会を作っていたいただきありがとうございました。」と言い電話を終えた。

 今回打ち合わせをしに昔の職場へ出向いた目的は再雇用してほしかったからではない。もう一度お世話になった皆さんに会って退職時のお詫びをしたかったから。そして若造だった私をどんなときでも支えてくれたお礼をしたかったから。
私の人生で今回の出来事は、貴重な経験になりました。ありがとうございます。

この会社での仕事内容や退職理由等、掘り下げた話はまた後日。

~当記事を読まれた方々へ~
貴重な時間をいただき、最後までお読みくださりありがとうございました。

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