01_邂逅01後_ヘッダ

神影鎧装レツオウガ 第一話 【後編】(ショート版) 5/7

 ため息よりも小さい、どこか悲しげな独白。
 それは一体どういう意味なのかを、しかし考えている暇はなかった。
 予想だにしない響きが、風葉の疑問を消し飛ばしたからだ。
 それは――
「セット、プロテクター」
『Roger Get Set Ready』
 ――辰巳の腕時計が立てた電子音声であった。
「なんか喋った!?」
 あるシステムの起動を知らせる、唐突かつ流暢な発音の英語に、思わずツッコむ風葉。
 それを背中で聞き流しながら、辰巳は叫ぶ。
「ファントム4! 鎧装展開《がいそうてんかい》ッ!」
 瞬間、光が走った。
 辰巳の左手首に隠れていた青石が、強烈な輝きを閃かせたのだ。
「きゃっ!?」
「GRAッ!?」
 外の光柱とはまったく異なる、ひたすら強い青色の奔流が、一面に叩きつける。
 反射的に目を閉じ、あるいは顔を背けるリザードマン達。
 唯一辰巳の影がかぶったおかげで閃光が和らいだ風葉は、細めた視界にその光景を見た。
 左手首の青石から伸びる光の線が、機械の回路のように分岐しながら、辰巳の服の上を走っていくのを。
 そして、風葉に見えたのはそこまでだ。
 爆発的に勢いを増す光の噴出に耐えかね、さすがに目を閉じる風葉。
 目蓋の裏でさえ強烈な残光を刻む青色は、しかし数秒で唐突に途切れた。
 念のため手でひさしを作りつつ、おずおずと目を開ける風葉。
「GRAA……!!」
 丁度同じタイミングで唸りを上げるリザードマン達。低くくぐもるその声は、明らかに何かを警戒している。
 けど、何を――と、思う暇もなく風葉はそれを見た。
 真正面。それまで日乃栄高校の指定制服だった辰巳の服装が、まったく別のものに置き換わっているのを。
 身体の筋肉を浮き彫りにするボディスーツ。身体各所を守るプロテクターとヘッドギア。腕と足の上を一直線に走る青いライン。武骨な装甲に覆われたため、一回り巨大になって見える鋼の左腕。
 特に銀色の左腕は、装甲の隙間から何かの機械部品を覗かせており、先ほどの改造人間宣言を裏打ちしている。
 そうした異様な服装を、さも当然のごとく着こなしている辰巳に、風葉は目を丸めた。
「なんか変わってる!?」
 更にツッコんだ。だが対する辰巳は振り返りもせず、ただ淡々と言い放つ。
「ファントム4、着装完了」

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