ギガントアーム・スズカゼ 第八話 製作途中版⑥

この記事はギガントアーム・スズカゼ第八話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクのマガジンから読めます。

 振り向くミスカ。ジットの表情は驚く程に固い。何か、重大な発見があったか。腑に落ちないが、反対する理由にはならない。

「了解した、これより撤退に移る。加藤、スズカゼは任せるぞ」

 言って、ミスカはコントローラを放る。どうにか受け取る一郎。

「フォーセルはこれから、撤退支援だったっけか」
「そうだ」
「そうだ」

 唐突に二重になるミスカの声。自己の精神を分割し、二人になったのだ。この内の奥側、座布団に座っていないミスカがすっくと立ち上がる。

「考え得る限り三番目に悪い状況になったが……上手くやるさ」

 言い残し、扉を開けて出ていった。

◆ ◆ ◆

「ム」

 ザントイル国境警備基地、司令塔区画。大きく展開されたホロモニタを前に、トーリス・ウォルトフは眉をひそめた。
 ホロモニタへ映るのは、望遠魔法から中継されるスズカゼの姿。威力以外は見事な奇襲を仕掛けた狙撃手は、まっすぐに地表へと着地。即座に反転するとスラスターを噴射、高速移動を開始した。向かう先にはアクンドラ国境近くに横たわる樹海。撤退の腹積もりだ。
 鼻を鳴らすトーリス。彼は今まで、あえてスズカゼを倒しきれないギリギリの火力で攻めていた。起死回生を狙ったスズカゼが飛び込んで来る事を期待していたのだ。
 先の交戦経験を鑑みれば、あの黒スーツの男がそうする確率は低くない。そうなればブランケイドと、何より地の利を用いて存分に叩き潰せる。
 そう期待していたのだが。

「まぁ、そう上手くいかないのが戦場の常だな」

 思考と戦術を切り替えるトーリス。相変わらず戦力は足りないが、だからといって見逃す理由もない。彼はプレートを操作し、六角形外縁部を操作。砲台の幾つかが変形し、砲口から新たなパドッサが続々と射出されていく。

「SiiiiiAaaaaaaaaッ!」「SiiiiiAaaaaaaaaッ!」「SiiiiiAaaaaaaaaッ!」

 弾丸のように窄めていた身体を空中で展開、凄まじい速度でスズカゼとの距離を詰めるパドッサの群れ。攻撃力は先程以下だが、スピードは更に増している。これで足止めし、先程以上の飽和砲撃を見舞うのがトーリスの戦法であった。
 接近に気付いたスズカゼが上半身を反転、腕部ビームガンでパドッサを迎撃していく。先の戦闘で見せた装備を召喚したのだ。

「そう、その装備だ」

 召喚武装。先程の長距離狙撃を成したライフルもそうだが、武装を保管している母艦――ウォルタールとやらが近くにある。それを撃破出来れば、スズカゼは一気に弱体化する。座標は分からずとも、スズカゼの近くに必ずいる。その燻り出しを兼ねての飽和準備であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?