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今宵この曲、深くて高く

ティナ・ターナー。
昨年83歳で亡くなったが、私はアイク&ティナ・ターナーの頃からファンであった。「どブルース」といってもよい曲を歌っていたのだ。
そうしてアイクと別れてソロとなり、十数年その名前を聞かなくなった。
音楽雑誌などには、地方のキャバレーなどで演奏していると書かれていた。
ああ、これで終わりか。
そんな残念な気持ちでいたら、ある年にドンと浮上した。
四十過ぎなのに、若々さと貫禄を持ち合わせて。
R&Bシスターからロックンロールの女王として。
なんとも劇的なカムバックであった。
ティナ、おかえり。待ってたよ。
そう思ったのは、私だけではないだろう。

それからのティナは華やかだった。
元々がダンサブルのエンターティナーであったし、素晴らしい楽曲にも恵まれ、世界中から愛されるシンガーになった。

そんな彼女の曲で私が一番好きなのは、「River Deep Mountain High」である。
詞が、とてもよいのだ。
和訳、いや意訳させていただく。

私ね、小さかった頃、お人形を持ってたの
ボロボロだったけど、私の大切な宝物
でも今はね、あの人形と同じくらいに、あなたを愛しているの
違うわ、それ以上に

どんどん、どんどん強くなってるの
どんどん深くなって
どんどん高くなってるの
川よりも深く、山よりも高くよ

あなた子犬を飼ってたでしょ?
いつもついてきたでしょ?
今の私はその子犬と同じ
いい子にしてるから、ねえ一緒にいて
決してあなたを悲しませなんかしない

愛してる、春に喜ぶ花たちのように
愛してる、鳥たちがさえずる歌のように
愛してる、少年が大切にしているバッグのように
愛してる、川のように深く山のように高く

ちょうどよい動画があった。
このシンガーの軌跡が垣間見える。

やはりティナはステージだ。
さすがにキーは下がったが、歳を重ねるごとに慈愛のようなものがあふれ出ていた。
それはたとえば菩薩の愛のような、川のように深く、山のような高さで(ちなみに彼女はブッディストであった)。

そうしてティナは亡くなった。
とても残念である。
けれど歌は残り、そして種を蒔いた。
まさかこんな13歳の少女が現れ、歌い継いでくれるとは……。

「君のような人がロックを継いでくれるんだ、ありがとう」と最後の審査員が言っていたが、そのとおりだと思う。
このコートニー・ハドウィンについては、違う機会であらためて語りたい。


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