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テレワークを実践してわかったこと

2月からのコロナ騒動に鑑み、私が代表を務めるパワーコンテンツジャパン株式会社でも、テレワークを緊急実施しました。これまで、在宅勤務という制度を敷いたことが一度もなく、急遽はじめたわけですが、わかったことがいくつかあります。10名以下の小さな会社ですが、少しでも参考になりましたら幸いです。

テレワーク決定まで

2月上旬頃は、まだコロナ騒動が「騒動」と言われるような状況でもありませんでした。社内でも、マスクとかどうなるんだろうね。これからひどくなるのかなぁというような世間話レベルの話でしたが、この頃にはいくつかの会社(特に大企業)は、テレワーク実施やオフピーク通勤の実施などをチラホラ発表し始めていました。

ところが、中旬くらいから世間話レベルに見えなくなり、社員全員と話し合った結果、暫定的に在宅勤務とすることを決定。これを決めたとき、社員にはこのような話をしました。

「コロナ騒動に限らず、こうした災害時に企業は「内外の評価」を受ける。外というのは顧客やステークホルダー。つまり、お客さんが中心。こういうとき、何もしない、無関心というのが最大の悪手。だから、対外的な意味でまず何かをしなければならない。

そして、内というのは、あなたたち社員。こんなときに、無関心や社員を守る気がない経営者ってのも最悪でしょう(社員とは信頼関係があるので、ここまで話します)。だから、あなたたちを守るという意味でも、在宅勤務にすることは、もはや義務だと考えている。」

内外の評価、というのが私の考えです。対外的に、まずこうしたお知らせをしました。

新型コロナウィルス対応につきまして
パワーコンテンツジャパン株式会社は、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、下記の点を実施いたします。
(1)テレワーク(在宅勤務)について
弊社社員全員を対象にテレワーク(在宅勤務)を実施いたします。
(2)セミナー、講座等について
10名を超えるセミナーの開催は延期または中止とし、オンラインにて受講できる体制に移行いたします。
状況に応じて対応は変更していきますが、弊社にできる取り組みはできるだけ実施し、今後も企業努力を続けてまいります。
パワーコンテンツジャパン株式会社

そして、社内には「コロナ対応」と「働き方の変更(改革)」とは、分けて考える必要がある、と伝えました。もともと弊社は「出社主義」で、通勤時間を考えても、直接会って話すことに意味がある、と考えていました。

しかしながら、ここ半年自分なりに考えが少しずつ変わってきていて、オフィスに毎日出社というかたちにこだわる必要がないのでは…と思うようになっていました。このあたりはまたちょっとテーマが違う話なので割愛しますが、「緊急措置」であって、これからずっと在宅になるわけではない、というのは強調しました。そうでないと、出社しなくなってしまう可能性があるからです。

そして、就業規則等の規程の変更は、後回しにしました。これを待つより、フライング気味に始めることの方が意味がある、ということで企業としての姿勢を示すことを優先させました。

最終的に、在宅勤務かどうかは「選択制」に

強制的に在宅勤務としてしまう企業もあるようで、確かに「社員の命を守る」という点では、それがベストで不要不急の外出を辞めるように伝えることもできます。ただ、在宅勤務って全員が幸せになるわけじゃなく、働く環境としては、悪くなる可能性を持っています。もちろん、通勤がなくなるなどのメリットもありますが、強制=指示=つまりは自分で選べていないということが、不満やモチベーションダウンにつながるわけです。

例えば、家族がいる場合は、小さな子どもがいたりすると、自宅では仕事にならないこともあります。実際、弊社でも在宅勤務を許可(許可というのも変なのですが)したとき、ひとりは「できるだけ毎日出社したい」という意見があり、実際出社しています。そして、それで良いと思います。出社しなきゃできない仕事もありますし、テレワークだからといって、最初から極端なテレワークを強いることもありません。

ですから、弊社では最終的に「選択制」になりました。基本的には在宅勤務だけれど、自分の意思で出社できる。そういうことです。これがあとで功を奏します。

新型コロナウイルス感染症への罹患リスクについてはどう考えたかというと「会社としては社員を守る体制を敷いた。あとは、出社する際には『大人の責任』ということで、各自予防してください」こんなスタンスです。弊社はもともと「大人の責任」で仕事をするという文化というか暗黙の了解があるのですが、これによって強制性をなくし、自ら考えてもらう、ということにもつながっています。

購入、整備したインフラ

弊社では、もともとChatWorkを仕事で利用しています。2013年頃からので、結構ヘビーユーザーな企業です。

ですから、コミュニケーションについては問題ないと考えていました。通話等については後述します。ただ、どのパソコンでログインするかというのは機密上重要な問題なので、社員ひとりにつき1台。ノートパソコンを購入し、貸与することに。言い換えれば、「私用PCでログインしないでね」ってことです。

新しくなにかを始めるときは、できるだけシンプルに。これが私の考えです。

それから、ひとり1台マウスを購入。イヤホンはさすがに誰でも持っているので、私物対応で十分なんじゃないかということになりました。足りない人はもちろん購入しています。

シンプルついでにもうひとつ言っておくと、半分出社、半分在宅のようなかたちは、認めない方針でスタートしました。例えば、10時に出社してお昼を食べて、1時間かけて帰宅し、そこから業務再開となると、勤務時間にズレが生じます。移動時間は労働時間に含まれませんから、そうするとひとりだけ業務終了時間が1時間遅くなってしまう。こうすると管理が複雑になるため、最初は「在宅or出社」の2択としました。

また、弊社ではフレックス制度もあるのですが、これもシンプルにそのまま。在宅でも出社でも、時間だけ変更する、ということに落ち着きました。別の言い方をすると、在宅勤務にすることによって、フレックス制度を中止する、ということをしなかったことになります。良い面は減らさない、これも組織のひとつのセオリーなのかな、と考えてのことです。

そして、コミュニケーションについては、このように考え、実施しています。

ビデオ会議は、実施しない。

在宅勤務スタート!で放置するわけにもいかないので、何かしらコミュニケーションは取る必要があると考えてはいました。ちなみに、データ類はGoogle Driveで共有しているので、大きな問題にはならず。

そこで実施したのが、ChatWorkLIVEによる「通話会議」です。ビデオじゃなくて、通話です。ChatWorkLIVEを使用したのは、普段から使っているツールの延長だからというくらいで、深い意味はありません。ただ近くにあって便利だからというくらい。ポイントは、ビデオ会議は絶対しないという点にあります。

在宅勤務は、在宅勤務の良さを消すべきではありません。在宅勤務の良さってなんでしょう。通勤がない。ギリギリまで寝ていても許される。服装自由(まあ、うちはもともと自由ですけど)。女性ならノーメイクでもOK。こんあところでしょう。でも、ビデオ会議によって消される在宅勤務の良さがあります。それが、服装とメイクなどの「見える」点です

ビデオ会議にしてしまうと、女性ならメイクをしなければなりません。男性でも寝癖を直したり、それなりの服装をしたり…という中途半端なビジネススタイルを求められてしまいます(場合によっては、上着だけで下ジャージとか苦笑)。在宅勤務で、誰にも会わない日って、結構あるわけです。そういう日は、メイクもしない、ジャージのまま着替えない。そういう予定の人もいでうしょう。むしろ、それが在宅勤務の良さのひとつなわけですから。

ところが、ビデオ会議にしてしまうとその良さが消えてしまう。そして、加えて言えば、「社員の個人空間が映ってしまう」こともあまりよいことではありません。自宅はプライベートゾーンです。立派な家に住むのも個人嗜好、質素な家に住むのも個人嗜好。画面に映ることを考えたら、それもひとつの考慮要素となり、悩みのタネになってしまうわけで、以上のことから弊社では「音声会議」を選択しました。

実際、社員はジャージのままやノーメイクで仕事する日もあるようです。これをビデオ会議にしていたら、在宅勤務でストレスを貯めるということになりかねないわけで、この選択は社員からは概ね好評です。

つながっている感を出すために

弊社の営業開始時間は午前10時なのですが、この時点でまず社員全員とChatWorkLIVEでつながります。全員参加の音声会議ですね。個別の通話をしても業務確認等はできるのですが、私(経営者)は全員と話ができても、社員ひとりひとりが、私としか話をしないと、まるで業務委託のようで、会社としてみんなで仕事をしている感が消えてしまいます。

そこで、朝は全員で通話することにしました。これによって、全員が全員の声を聞くことで、「あ、ほかの人たちも、在宅で仕事しているんだな」と考えます。そうすると、(うちにはいませんが)ある種サボることの歯止めになるのかな、と考えました。

あとは、必要に応じて通話でMTG。業務終了時間前には、個別で1日の話をして終了。これによって、個人の動きも確認できますし、特に大きな問題なく、回っている感じです。

テレワークを実施して出た課題点

基本的には問題なく回っています。ですが、問題や課題はゼロではなく、やってみたことで浮き彫りになったものがあります。その課題と対応が下記のような感じです。

・パソコンのスペック不足
デザイナーが使用するPCのスペックが低く、PCでスピーディに仕事ができなかった(いつもは高スペックのiMacを使用)
高スペックのノートPCを購入することで解決
・ソフト不足問題
単純に貸与したPCにOffice等のソフトが足りなかった。
→こちらも購入することで解決
・印刷ができない問題
こちらもデザイナーが紙面で色味を確認したいという問題が。自宅プリンタの接続(というか、ほかの機器への接続)を許可してしまうと際限なくなってしまうので、出社社員が印刷して送付or自ら出社して確認で解決。ただし、スピードを求められるとつらいかも。
・自宅Wi-Fi問題
自宅のWi-Fiが遅くて仕事にならないという問題も。こればかりは、最新のWi-Fi環境にしてねとお願いするしかないかな…という感じです。
・ひとりはさみしい問題
ずっとひとりで仕事していると話さなくなるので、ちょっとさみしいなんてかわいい問題も。そういうときは、出社すればいいので、やはり選択制は正解だったな、と思います。

人間関係ができれいてば、テレワークは問題なくできる

結論から言うと、コロナ騒動が落ち着いたあと(いつになるかわかりませんが)も、テレワークは実践できる。やってみてそう思いました。特にテレワーク関連のシステムを入れることもなく、監視/管理も必要ないだろう、というのが私の判断です。

ただし、これは弊社が成功循環モデルをもとに、人間関係をつくることを重視してきたからできる、という面は大いにあると考えています。1on1MTGを何年も続け、より良い働き方追求をしてきたからこそ、実現できているのではないかな、と思います。

何より、通勤時間がなくなったことで、自分の時間が増え、パフォーマンスがよくなっている社員もいるくらいです。だから、在宅が幸せとか出社した方が良いとかそういうことではなく、「選択できる」ということが、ベストなのかもしれません

おまけ:人間関係としての距離感

最後に。職場のストレスの中のひとつに「人間関係」というものがあります。このストレスを溜めないためにも、テレワークって効果がある感じました。

たとえば、どんなに仲の良い恋人や夫婦でも、ずっと一緒にいれば喧嘩になることがあります。特に結婚生活などは、長く一緒にいることで、小さなことが気になり、どうでも良いことで大喧嘩になってしまうこともあります。

例えばこんなとき、少し距離を取ってみる、というのは夫婦関係を良くするための常套手段です。それと同じで、会社でも「毎日顔を合わせるからこそ、ストレスの原因をつくってしまう」ことがあると私は今回のテレワークで感じました。

もちろん、これまでは毎日顔を合わせていたわけで、喧嘩や揉め事などはほとんどありませんでしたが、より「会わない時間」が増えることで、会ったときにより話したくなる、新鮮に会話ができるということもあります。もちろん、毎日会ってストレスない人もいるでしょうから、そのあたりはバランスですね。ですから、テレワークの副産物として、人間関係の距離を良い意味で取れるということもあると考えて良いでしょう。

以上、3週間弱、テレワークを実践してみての感想と取り組みでした。少しでも参考になりましたら幸いです。


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