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Q.お客様への説明は、専門家らしく見てもらうためにも専門用語を使うべきでしょうか?

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Q.お客様への説明は、専門家らしく見てもらうためにも専門用語を使うべきでしょうか?

お客様に業務の説明をする際には、よく「できるだけわかりやすい言葉で説明しなさい」といいますが、あまり簡単な言葉過ぎても専門家らしくない気がします。やはり専門家らしく専門用語を使うべきでしょうか? それともみなさんがおっしゃるようにわかりやすい言葉を使うべきでしょうか?

専門用語だけでは予想以上に通じない

専門用語を中心に説明をしてしまうことは、私たちが考えている以上にお客様には通じていません。すでに士業の業界にどっぷりとつかってしまっている私たちは、「源泉徴収」ですとか「登記簿謄本」のような当たり前過ぎて説明するのも相手に悪いと思ってしまうものでさえ、通じないことはよくあるものです。不動産を相続したり、会社を設立したりしなければ、登記簿の存在すら知らない人も当然いるでしょう。私たちの常識をお客様に求めることはできないのです。

専門用語の多用でもっとも悪影響が出るのが、「商談」です。一度すでに顧問契約を結んでいたり、業務を依頼されていたりすればまだ話は違うのですが、これから仕事を依頼したいと考えているお客様に対して専門用語を頻繁に使っていては、「この先生は何をいっているかまったくわからない」とまるで宇宙人と会話をしているような気分になってしまうでしょう。お客様は、わからない話をする人に仕事を頼もうとはしません。ですから、やはりわかりやすい言葉で説明することは重要なのです。

さらに何も考えず専門用語を使って説明をしたときにありがちな失敗としては、「お客様に通じている」と勘違いをしてしまうことです。お客様は経営者であることがほとんどですから、ひとつひとつわからないと質問してくる人は少ないといえます。専門用語を聞いていて、わからない言葉が出てきたら頭の中で「おそらくこういうものだろう」と自分のわかる範囲で置き換えて把握します。しかし、理解はしていないのです。

ですから、お客様がうんうんと積極的に相づちを打っていて、「この商談はまとまりそうだ」と手応えを感じていても、「契約の内容がよくわからないまま契約することはできない」と必ず結論を保留にします。したがって、結局のところわかりやすい説明は必要になってくるのです。

士業の商談は「例え力」が勝負

では、どのようにすればわかりやすい説明ができるのでしょうか。まず前提としては、簡単な台本をつくっておくことです。これは何も映画の台本のような大げさなものではなく、話す順番を決めておけばよいのです。そして、できる限り事務所案内などのように紙媒体に出力をして「見える」ようにしておくとよいでしょう。毎回アドリブで説明を行うのは決して簡単ではありません。それなら見えるところに台本を置いてしまえばよいのです。その台本に沿って話します。そして、最大のポイントですが、私が行政書士業をしてきてもっとも伝わりやすい説明が、「わかりやすいものに例える」あるいは「わかりやすいものに言い換える」という方法です。

たとえば、会社の設立手続きの際に、さまざまな書類の説明をしたり、あるいはお客様によっては登記簿謄本の仕組みから説明しなければならなかったりする場合があります。その際、例を挙げれば「取締役の就任承諾書」であれば、「これは○○さんが取締役になることを認めて、OKを出す誓約書のようなものです」といえばほぼ間違いなく伝わります。「就任承諾書」でも伝わらないことはないのですが、より伝えやすくするための例えです。

もうひとつ例を挙げるとすれば、「登記簿謄本」です。会社の証明書といえばそれで済むのかもしれませんが、私の場合は「人が生まれたら出生届を出して戸籍をつくりますよね。そして証明に戸籍謄本を使ったりします。登記簿と謄本というのは、その会社版みたいなものです」と変換して伝えるとより理解が増します。設立登記の際に必要となる「収入印紙」も「収入印紙」だけでは伝わりませんが、「税金を納める必要があって、その方法がこの印紙なんですよ」と伝えると理解してもらえます。このような例え、置き換えを自分自身の業務の中で使用する専門用語に使っていくことでお客様は話の内容を理解し、結果としてあなたを信頼してくれるようになるのです。

さらに、士業だからこそ使えるフレーズを覚えておきましょう。それは「これが法律のルールなんです」という一言です。資格がない人がいうと信憑性に欠けることがありますが、士業がいうと効果抜群です。当たり前過ぎてあまり使われていませんが、前述の収入印紙もお客様によっては「なぜそんなにお金がかかるのですか?」という人もいます。その際には「これが法律で決まっているルールなんです。私もこんなに必要ないと思うのですが、高いですよね……」とこのフレーズを使い、最後に「でも、誰でも払うんですよ」と付け加えることでお客様も納得します。このフレーズはさまざまなところで使えますので、ぜひ覚えておいてください。

隠し味として専門用語を入れるとベスト

最後にひとつだけテクニックをお教えします。専門用語だらけではお客様に伝わらないと説明しましたが、専門用語を使うことにもメリットがあります。それは「さすが専門家だ」と認めてもらいやすい点です。たとえば、「法律的には○○書というのですが、××のようなものですね」とさりげなく会話の中に紛れ込ませてみます。すると、「わかりやすくて尊敬できる」会話になるのです。もちろん、あまりにも毎回「法律的には……」と補足を入れていくと覚えた知識を使いたいだけの単なる自慢に見えますので、あくまで隠し味として少しだけ会話の中に紛れ込ませるのがポイントです。

ただし、あくまでもこれはテクニックです。それよりもわかりやすい説明、信頼できる人間力を磨く、そういった事柄のほうが重要です。ぜひ、次の商談から実践してみてください。

【POINT】専門用語を使いすぎると仕事は取れない。士業の商談は「例え力」を発揮しよう。そして士業ならではのフレーズを使って、お客様の信頼を勝ち取ろう。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

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