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スポ少の見学にいった話

「バスケ入るんですかー?」

小学校1年生。先週だっただろうか、PTAの部会が同じお母さんからラインが来た。

まさか。

最近は、児童センターにも行かずに家に帰ってきて、家庭学習が終わったらパソコンでマインクラフト。そんなインドア派の長女が、自分からバスケやりたいなんて言うわけない。

本人に聞いてみると、「やるかもって言った」と、ぼそりと言う。

そうか、小学生女子ってそういうもんなのか。

お友達との会話の流れてそうなったのかもしれない。
まぁ、見学に行くだけならいいじゃない。

ラインをくれたお母さんとやり取りし、今度の土曜日の16時、小学校の体育館に行ってみよう、そんな話になった。

「本当に行くの?」 
決まるまでに何度も聞いてしまった。
バスケやりたいなんて、信じられなかったからだ。

その話が決まってから数日、お友達はウキウキだったようで、長女は「〇〇ちゃん、今日もバスケの話していたよ~」と、ちょっとめんどくさそうに、でもまんざらでもない気持ちもありそうな、そんな表情で報告してくれた。



いざ、見学の日。
動ける服装って何、体操服でいいの? とりあえず、体操服かな・・・
親もわからない、こっちだってドキドキだ。

入口に到着すると、すでに到着しているお友達の姿があった。はしゃぐお友達。嫌そうな顔してかたまる長女。

あぁ、そんな感じね~
やっぱり断れなくて、めんどくさくなって「入るかも」って言ったんだ。
ただ、やってみないとわからない。とりあえず、体育館へ入る。
3年生から6年生が整列して挨拶してくれる。

そうそう、これこれ。
挨拶、礼儀できる子になってほしいよね~

何でもやってみる活発な子になってほしい
何でも好き嫌いせずに試してみる子になってほしい
何でも希望をもってできるようになると思える子になってほしい

そんな願いは虚しく、ボールにすら触らずに座り込んでしまった長女。
もう、マスクの下の表情は怖い。
練習を見てみるということすらできてない。
視線を落として爪を触り始めた・・・
もうだめだ、早々に切り上げよう。

残念な気持ちを認めつつも、気を付けたことがある。

「ほら、〇〇ちゃんやってるよ~」 
「やってみなよ~」
とは、言わないってこと。
言いがちだ、かなり言いがちなんだけれども、ぐっと我慢できた。

お友達のお母さんにも、
「うちの子、人見知りでダメなんです~」
とか、以前なら言っちゃってたかもしれないけれど、ただただうちの子とは比べずにお友達の強みをみるようにした。

と同時に、うちの子の強みも同じくらい見るようにした。

「約束守ろうとしたんだよね」

正義感が強く真面目でしっかり者の長女の強みだ。
約束を守る、誠実さ。

体育館に来る目的が、お友達とは違っただけなのだ。
長女にとっては、バスケットボールに触ることは二の次で、約束を守ることが最重要だったんだ。

そして、それを隣にいたお友達のお母さんにも伝えた。

「約束を守ってくれてありがとう」

お友達のお母さんが頭の高さを合わせていってくれた。そのとき、長女の仏頂面がちょっと崩れたのを感じた。少しウルっと来たのかもしれない。わかってもらえた、安心感をあの表情はすべてを表していた。
「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」と言ってくれたのが、私には本当にうれしかった。


車に戻ると安心したのか、いつもの長女に戻っていた。

どうやら、バスケットボールが体育館に響く音が、たくさんのボールが飛び交う空間が、想像以上に怖かったらしい。

そうだよね、長女にとっての刺激は大きい。

でもさ、経験してみたからこそ、初めて分かったことだよね。
漫画でもテレビでも、感じることはできない。
あのボールの振動が心臓にまで響く感じは、生きているからこその体験そのもの。

バスケットボールとのご縁は今のところ無さそうだけど、なにか大切な一面を経験させてもらった、土曜日の夕方の出来事だった。

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