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【本日発売】今紺しだ歌集『晴れ上がり』~科学で青春を切り取った短歌310首

★本日5月7日発売! 今紺しだ歌集『晴れ上がり』

 『京大短歌29号』(2024年1月発行)の連作「機海学習」が素晴らしかった今紺しださんが、第一歌集『晴れ上がり』を上梓なさいました。
 短歌勢にはもちろんですが、これは詩作勢・俳句勢にも大変おすすめ!
 新たな発見に溢れた1冊だと思いますので、以下にこの歌集の魅力をご紹介いたします。


▶読みどころ1:科学×青春×短歌のみずみずしさ

今紺しだ『晴れ上がり』カバー表面
カバー裏面

科学で青春を切り取りたい――
21世紀生まれの新人が放つ、珠玉の短歌310首。

今紺しだ『晴れ上がり』帯より

 上記の帯の言葉にもありますように、この歌集の特徴はなんといっても、「科学的な視点」。今紺さんが今までに積み上げてこられた科学的なものの見方を通して、教室、通学の電車・バス・自転車、友達、恋、勉学、揺れ動く心模様などが、みずみずしく描き出されています。

 歌集名でもあり、前半に収めた連作のタイトルでもある『晴れ上がり』は、天文学用語である「宇宙の晴れ上がり」に由来しています。初期の宇宙では、光は電子と衝突し、まっすぐに進めなかったといいます。その後、電子が原子核と結合して光を妨げなくなることで、光は直進できるようになり、宇宙が「晴れ上がった」そうです。多感な思春期の迷いや悩みを抜けて、まるで宇宙が晴れ上がったかのように、まっすぐに進みたい道を見つけた…… そんな鮮やかな青春を表現したくて、この言葉を選びました。

今紺しだ『晴れ上がり』あとがきより

【著者紹介】
今紺しだ(いまこん・しだ)

 2001年生。奈良県出身・在住。
 中学生時代に、国語の授業をきっかけに短歌を作り始める。高校までは新聞等に投稿しながらマイペースに楽しんでいた。
 大学に入って、学生短歌会「京大短歌」のメンバーから刺激を受け、真剣に詠むようになる。現在も「京大短歌」に所属している。
 普段は理系の学生として実験に勤しんでいる(京都大学大学院在籍中)。

第1回 U25短歌選手権 穂村弘賞。
第68回角川短歌賞 佳作、他。

その他の実績は、今紺しだ official websiteへ。
https://consida.wixsite.com/tanka

今紺しだ『晴れ上がり』著者紹介、作品情報より

 『晴れ上がり』という言葉、とても素敵ですね! 歌集の内容も、書名を裏切らない清々しさに満ちています。

誕生日を訊かれたことは久々でペーパーバックに顔をうずめた

今紺しだ『晴れ上がり』P.11より

我を成す水素原子は覚ゆるかいつか宇宙の晴れ上がりし日を

今紺しだ『晴れ上がり』P.16より

 …もうね、こんな新鮮な気持ち、忘れてましたよ私は…!(笑)。

▶読みどころ2:小説のようにも、詩のようにも感じられる構成

 上記に挙げた「みずみずしさ」を私の紹介文によって損ないたくない(初見で読んでハッとしていただきたい)気持ちもあり、あまり内容を明かしたくないのですが、この歌集の素晴らしさの一つは、構成の妙です。全体を通して読めば小説のようにも感じますし、章(各連作)の単位で読めば一篇の詩のようにも感じます。もちろん、短歌一首の単位で読んでも味わい深く、いろいろな角度から、読めば読むほど感銘を受ける歌集です。

【目次】

・春の濃度を
・晴れ上がり
・青と藍
・動点Pの冒険
・偏食のルビー
・淡雪の指揮者
・海月になるまえは
・涙の電解
・流星と勲章
・summerly
・コペルニクス的な

今紺しだ『晴れ上がり』目次

 もう目次を読んだだけで、わくわく…♪
 詩書きである私も、言葉のセンスにあやかりたいです!

▶読みどころ3:強靭な思考力に裏打ちされた作品群

 私は1周目はとにかく面白くて、青春小説を読むように一気にわーっと読んでしまったのですが、あらためてゆっくりともう1周読んでみたら、今紺さんが今まで積み重ねてこられた科学的思考力の強靭さを思わずにはいられませんでした。自分という存在・人間という存在を、宇宙規模のマクロな視点から、あるいは分子・原子レベルのミクロな視点から描き出すことで、目の覚めるようなものの見方を与えてくれる作品ばかりです。
 宇宙・地球という物質のかたまりの中で、笑い、惑い、夢を描き、恋をする私たち。その生活のありようを、有限と無限、栄枯盛衰と循環、合流と分岐といった科学的視点とともに一首に織り込むことで、生命の不思議さ・愛おしさをより鮮やかに映し出した短歌の数々だと思います。その眩しさに、目がくらむようでした。
 特に心理描写と物理描写、主観と客観の橋渡しの素晴らしさは、物理・化学・生物をしっかり修めてこられたのであろう今紺さんの感性にしか、表現しえないものかもしれません。

 そういったベースの上で出てきたのであろう次の一首が、この歌集の中での、私の一番のお気に入りです。

光りたくて星は光るかwantよりshouldにて生くることは劣るか

今紺しだ『晴れ上がり』P.104より

 今紺さんご自身のnoteでも何首か紹介されていますので、是非ご覧ください。どれもグッとくる、素敵な短歌ばかりです。


▶当店で買うなら、『京大短歌29号』もご一緒に

 この歌集『晴れ上がり』は、もちろん当店で販売中なのですが、実のところ楽天ブックスなら送料無料で購入できます(当店では送料370円がかかります)。歌集単品でお買い求めの方は楽天ブックスの方がお得です。

(※あ、でも、発行元のTEMMA BOOKS様からも、愛のある丁寧な梱包で当店に届いておりますし、こちらも丁寧に梱包して発送いたしますので、確実にきれいな本を受け取りたい方は、歌集単品でも当店でご購入いただけると嬉しいです♪)

 しかし、今紺さんの連作を掲載した『京大短歌29号』も併せて読んでみたい方は、ぜひ当店でお買い求めください。『京大短歌29号』は楽天ブックスにありませんので。この号に掲載の今紺さんの連作「機海学習」を読んで、私はすっかり今紺さんのファンになったのです。「AIって何だろう」という問いが、翻って「人間って何だろう」という問いを呼び込んでくる、素晴らしい連作でした。
▼『京大短歌29号』は、下記リンクでレビューしております。
https://note.com/yokoyamayumi/n/nddc28bf9003f


 日頃は詩や俳句をお作りになっている方も、この機会に是非、『晴れ上がり』のみずみずしい短歌に触れてみてください。今紺さんの科学的な視点が、日常の見え方を違ったものに変えてくれるはずです。作品作りへの刺激になること間違いなしです。

▼こちらも是非ご一緒に♪

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