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ローカルフォトで岡崎の魅力を伝える「岡崎カメラ」の2019年度の活動を振り返って

岡崎カメラは、2018年度から行なっている生活者目線での岡崎の魅力を発信するチームづくりを目指す、シティプロモーションの取り組みです。小豆島カメラの三村ひかりさんが岡崎市出身だったことから、小豆島カメラの仕掛け人、写真家のMOTOKOさんと繋がりができ、MOTOKOさんが提唱するローカルフォトという考え方の元、岡崎カメラは、写真を通じて岡崎の魅力を発信する活動をしています。

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▲三村ひかりさん(左)とMOTOKOさん(右)、浅田政志さん(中央)をゲストに迎えて行った作品発表会&トークライブにて

ローカルフォトとは

ローカルフォトとは、MOTOKOさんの言葉をお借りすると、個(private)でもなく公(public)でもない、共(common)の写真。アートのような自己表現でもなく、コマーシャルでもない、人と人をつなげる写真。身近な地域の魅力を新たに発掘し、発信する写真です。絶景や美味しいものだけでなく、その土地の人に会いたくなるような写真を、カメラを通じて発信していきます。カメラをコミュニケーションツールとして、人との交流を大切にするローカルフォトは、撮影者もその土地に暮らしているからこそ撮ることができる写真で、被写体になった人も撮影した人も、その土地に暮らしていると気づきにくい「自分たちの魅力」を再発見し、自分たちのこと、暮らしているまちのことが好きになる場面をこれまでなんども見てきました。

2019年度の活動

2年目の2019年度は、まち歩きや取材を通して、見過ごしていた岡崎の魅力を発信する「ローカルフォトツアー」と、これまで活動に参加してくれた人の中から、今後も活動を続けていきたいという人を対象にした、カメラと取材・文章のスキルを学ぶ「ステップアップ講座」、そして年度末に作品発表会&トークライブイベントを行いました。私は、1年目は参加者だったのですが、2年目は運営側に関わらせてもらいました。

岡崎の魅力を再発見する「ローカルフォトツアー」

まち編とさと編と称して、2つのローカルフォトツアーを行いました。11月16日に行ったまち編では、能見通にある愛知屋仏壇本舗と松本町にある松應寺とケーキ屋パスレルを訪問しました。詳しくは、『岡崎カメラがっこう、2年目がはじまりました』をご覧ください。

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▲カメラを持ってまちを歩き、みんなの笑顔がまちの風景になる(撮影:三村ひかりさん)

まち編で印象的だったのは、林さんが撮影したワンシーンです。その土地に暮らしているからこそ昔から関係性があり、作業場を見学させてもらった後に、またねという感じで見送る姿、ローカルフォトならではの距離感を感じる写真だと思いました。

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▲愛知屋仏壇本舗の工房にて、昔から知っているからこその関係(撮影:林久美子さん)

12月1日に行ったさと編では、岡崎の中山間部、駒立のぶどう農園まるた園に行きました。駒立はぶどう狩りが有名なエリアなのですが、今回取材したのは、夏の繁忙期ではなく、冬の農家さんの暮らし。冬のまるた園に行くことになったきっかけは、wagamama houseのりえさんと話をしていた時、夏のぶどう農園はみんな知っているけど、冬の農家さんの暮らしは、みんな知らないのではないか、農家さんが代々受け継いできた仕事への想いやまちなかでは感じにくい四季の変化、きっと参加者のみんなも興味を持つのではないかという話を聞いて、企画が立ち上がりました。

まるた園の取材では、ぶどうの木の剪定、さつまいもや正月飾りの出荷作業の様子を見させてもらいました。また、農家さんの暮らしを体験するということで、お昼ごはんのお手伝いをしました。「三歩先の未来を想像する」MOTOKOさんに教えてもらったローカルフォトの考え方の一つです。「遠くなく、少し先の未来を想像してシャッターを切ることで、その写真が未来への道標となり、夢を現実に近づける。」という話があるのですが、この時、外に長テーブルを並べてみんなで食べた幸せなお昼ごはんの時間は、まさに三歩先の未来を作っている瞬間だったなと思います。

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▲まるた園での外で食べた、幸せなお昼ごはんの時間

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▲外で食べるとろろご飯と豚汁は最高でした(撮影:三村ひかりさん)

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▲ぶどうの木の剪定を見せてもらいました(撮影:鈴木雄介くん)

詳しくは、『岡崎カメラがっこうさと編は、駒立のぶどう農園さんの冬の暮らしを見に行きました』をご覧ください。

カメラと文章の書き方をローカルフォト的に学ぶ「ステップアップ講座」

さて、年が明けて、2つのステップアップ講座を行いました。1つ目は1月18日にソトコトの編集者の竹中あゆみさんをお招きして、カメラのスキルを学びました。

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▲竹中あゆみさん

岡崎カメラの取り組みは、カメラの使い方を学ぶ講座ではなく、まちの魅力を発信するための、まちの人たちとのコミュニケーションとり方や、まちと人の写真を撮る際に大切にすべきものは何かを、実践を通して身につける場です。しかしながら、カメラは奥が深い道具なので、カメラでシャッターをきった時に、思い通りに撮れないもどかしさがあったりすることもまた事実。編集者の視点で、全国の色々な地域の魅力を届けている竹中さんは、カメラの知識に加えまちの魅力の届け方にも長けている方なので、カメラのスキルだけじゃない、ローカルフォトならではの写真の撮り方を学ぶことができた1日でした。

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▲午後は籠田公園で撮影会をしました

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▲午後に籠田公園で撮影した写真を見返しました

竹中さんは、小豆島カメラの発足時にも関わってみえて、座学で見せてくれた初期の頃の小豆島カメラのメンバーの写真の変遷は、今の岡崎カメラのメンバーにとってもとても刺激になったのではないかと思います。

そして、2つ目は2月2日に3000人近くインタビューと執筆をされてきたライターの井上英樹さんをお招きして、取材と文章のスキルを学びました。この日は、MOTOKOさんとともに、「ローカルフォト」を各地で実践されていている、福井県小浜市を拠点に活動をされている堀越一孝さんにもお越しいただきました。

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▲堀越一孝さん(左)と井上英樹さん(右)

ローカルコラム講座「発信する文章」『書きたい文章』から『読んでもらいたい文章へ』ということで、取材の方法や流れ、媒体の特徴や読んでほしい対象など原稿を書く際の条件整理、インタビューの仕方や原稿の組み立て方など、発信するための文章とはどんなものかということを、座学で1から丁寧に教えてもらいました。

午後からは実学として、リメイク古着の販売や子ども向けワークショップを行う「アバンダンティズム/岡崎ぎゃざ」、鼻緒のすげ替えもしてくれる履物の店「さくらや本店」、万年筆への愛がすごい文房具店「ペンズアレイタケウチ」へ、3チームに分かれて取材に行きました。

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▲万年筆愛が止まらない、ペンズアレイタケウチの竹内さん

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▲アバンダンティズム/岡崎ぎゃざでポーズを決めて記念写真(撮影:MOTOKOさん)

講評会では、メンバーはそれぞれ取材した内容を400字にまとめ発表、井上さんが赤字を入れながらコメントをくれるという、ライブ添削スタイルで行いました。同じ訪問先でも人によってどこに着目するかが違う面白さと、参加者の色々な文章を、さらによりよくするにはどう書いたらいいかを、ボリューム感たっぷりに学ぶことができました。

浅田さんに教えてもらった地方人々を撮ることの面白さ

そして年度末、2月23日、2019年度を締めくくる作品発表会&トークライブを行いました。トークライブのゲストは、写真集『浅田家』で有名な、写真家の浅田政志さん。浅田さんの話で印象的だったのは、地方の人々を撮ることの面白さ。「観光ではいかない撮影じゃないといかないようなところへ行って、その撮影がなかったら出会えなかったという人に出会う。そういう人に限って、めちゃくちゃかっこいい人がいっぱいいる。」と浅田さん。気仙沼の漁師さんや宮崎牛の酪農家さんの写真を見せてくれたのですが、目力が半端ない、その土地の写真を撮ることの魅力を1つ教えてもらいました。

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▲気仙沼の漁師さんの写真、めちゃめちゃカッコイイ

浅田さんは、写真を撮らせてもらったら必ずそのお礼として写真をプリントしてお渡ししているとのこと。写真を通じた関係性づくりの大切なことを教えてもらいました。

心が動いた瞬間を捉えるローカルフォトを磨き上げる方法

作品発表会では、岡崎カメラのメンバーが、これまで岡崎カメラの活動や、その学びを通じて撮影した写真も含めて、まちの魅力を伝える写真を選んで、それぞれ発表をしました。この時、MOTOKOさんからは、メンバーが撮影した写真をより伝えたいテーマを際立たせるための手法としてトリミングを伝授してくれました。MOTOKOさんは以前、下手に構図とかは学ばない方が良いということも言われていて、心が動いた瞬間に、素直にシャッターをきることの大切さを教えてくれました。トリミングはその話には続きがあったのだと思いました。いいなと思った瞬間に撮影した写真を、さらに後から見返して、伝えたいことはなんだったのか、そのためにどのように写真を調整したらいいのかということが、このトリミングによって行える、ローカルフォトに必要なテクニックだと思います。

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▲作品発表会の様子、せんせいに講評をいただきました

主体でも客体でもない

作品発表会&トークライブのイベントに向けて準備をしている頃、1年目にせんせいとして岡崎に来てくれた、真鶴出版の川口瞬さんが『小さな泊まれる出版社』という本を出版されました。この本は、「真鶴出版2号店」をつくる物語を中心に、川口さんとMOTOKOさんの対談も掲載されています。川口さんが真鶴出版2号店を設計したトミトアークテクチャの冨永さん、伊藤さんと対談した以下のような主体と客体の話を、MOTOKOさんが、作品発表会&トークライブのイベントの打ち合わせの時に話てくれました。

「主体と客体で線引きしないこと」も議論したところだなと思います。真鶴のお店では、主人と客人、主体と客体の関係を感じづらいんです。もちろんゆるく店主たちの領域はあるんだけど、それを明確に区切ることはしなくて、お客さんがお店の一番奥にいたり、場合によってはお店を手伝っていたり、その重なりに居心地の良さを感じました。
『小さな泊まれる出版社』のp133より

「建築も写真もコミュニケーションが双方向になり、主体も客体もなく、土間のように外の世界との接点を開きながら、最高の世界は今ここにある。そういった意味でも、浅田さんと三村さんの話はとても説得力がある」とMOTOKOさんは話してくれました。

ローカルフォトと言っているからには、そのローカルを一人一人がどのように定義するのかが大事だと思います。岡崎の人たちとどのようにコミュニケーションをとって、どんな関係性を築いていくのか、その距離感が大切だなと。ローカルに暮らしているからこそ、届けることができるローカルなこととは何か、今一度、掘り下げていきたいです。

2020年度に向けて

岡崎カメラは、 次の1年に向けてプロジェクトが動き出しています。2月23日の作品発表会&トークライブがまるで幻だったかのように、新型コロナウイルスの影響で、これまでの価値観が世界規模でガラリと変わろうとしていることを日々感じます。そんな今だからこそ大切にしないといけないことはなんなのか、メンバーと考えて動いて行きたいと思います。

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▲作品発表会&トークライブの集合写真、浅田マジックな一枚