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夏の三句 ~旬杯~

並び立つ君と初めて見た花火

ならびたつきみとはじめてみたはなび

🎆

初仕事完了空は梅雨夕焼

はつしごとかんりょうそらはつゆゆやけ

🌆

帰ろうかグラジオラスの咲く庭へ

かえろうかぐらじおらずのさくにわへ

🌻

【一句目】
季語 花火(初秋)
ごめんなさい、いきなり秋の季語…
でもどうしても、みんなの俳句大会で出しておきたくて。
「ずっと、みんな一緒だよ」
このコピーを聞いて、私がこの夏最も心に残っている大切な人との大切な夏の思い出を詠んだ。
「夏っぽい」を許してくれるみん俳に甘える。最後に詠んだ句なのだが、私のなかで、三句目にこれ以上の俳句を今回詠めなかった、無念…
いろんなことを乗り越えて、多忙ななかで時間を作りあってなんとか実現した、打ち上げ花火鑑賞会。
驚いたのは、一発目を見て突然涙が溢れたこと。そして隣の大切な親友とも言えるほどの先輩も、涙を流されていたこと。
ここ数年本当にいろいろあったから、もうこんな風に誰かと夏を楽しむなんてことはないんだろうと思ってた。
雨女ふたりで、計画を立てると大事なときは決まって雨。今回も予報は直前まで雨。祈るように迎えた当日、奇跡的に雨が降らず、曇りで暑さもやわらぎ、ずっと一緒にいたい大切な人と並んで初めて花火を見上げたこの夏を、私は忘れない。こんな人に社会人になって出会え、会社が変わっても交流を続けてもらえているのは奇跡だ。
秋の季語と知り直前まで差し替えるか迷ったけれど、これでいかせていただく。

【二句目】
季語 梅雨夕焼(晩夏)
休日出勤や残業続きで大変な日々を乗り越え、なんとか大きめの初めて取り組む仕事を終えた初夏。劇的なことなんてない。ただ、同僚とおつかれさまと労い合って、淡々と次の仕事に取りかかる。久しぶりに定時で帰ったその日、空には綺麗な夕焼けが一面に広がっていた。
これからも、いっぱい失敗をして、迷惑をかけて、後悔して、改善して、同僚と仕事をしていくと思う。間違うたびに自信をなくすし、次の決断が怖い。意見を交わすのだって、意見が通っても通らなくても怖い。仕事って、すればするほど、知れば知るほど、できることだけでなくできなくなることも増えていく。知らないからこその度胸や根拠のない自信は通用しなくなる。それでも今は、この先もこの人たちとがんばっていけたらいいなと思い、仕事も勉強もがんばっている。しんどいことのほうが多いけど、やっぱり達成感ややりがいはあるし、それだけでなく、ささやかな成果で貢献できる、少しだけでも役に立てる喜びもある。この人たちとならがんばっていけそう、という希望も感じながら。
やりきった後の夕焼けは、ぐわっと私の心を掴んだ。なかなか暮れない。茜色をして、燃えるような空が、怖くもあり、次へのみなぎる勇気を燃やしてもくれ、一仕事終えた余韻に浸るのに心地よい。いろんな感情と空がつながったような気がした体験を詠んだ一句。

【三句目】
季語 グラジオラス(晩夏)
これも出すか迷った。今回は、最初に決まった梅雨夕焼の句の後、迷い迷いの参加だ。
個人的な句。夏って結構たくさん思い出があって、やっぱり夏休みがあったから。両親が忙しいなかいろんなところへ連れて行ってくれ、また(庭を含む)家でも、貴重な体験をさせてくれた。部活動で(文化部だけど)汗を流した日々もあった。だからある意味選びきれなくて、これもあれもと決まらない。それも個人的に今度詠もう。でも、やっぱり私はこれまで通り家族にまつわる句を一句詠みたくて、今回は決意の一句。
社会人になって、忙しさにかまけて帰省もあまりできなかった。貴重な休みを休息に充てたくて、電話も手短に済ませたりして。一番の後悔は、きっと最後であろう2019年冬の家族旅行。その頃既に心身が壊れかけていて、去年まで下降の一途を辿ったわけなのだが、連れ出してくれた家族にあたって自己嫌悪に陥った、苦い沖縄旅行の記憶は消せない。もっと早く最初の仕事を辞めて、あのとき楽しめばよかったと今なら思う。
私は家族を大切にできぬまま数年仕事で疲弊して、祖父の葬儀のときに衝撃的な事実を知った。気がつけば両親は大変なことになっていて、それを心配かけまいと知らされなかった。私はそんなことにも気づけない、気づこうともしなかった。やっと気づけても仕事が立て込んでおりやっぱり年末年始まで帰ることもできず、そんな自分を責めた。仕事でもきつく当たられ、ぼろぼろになった。
長い夏休みをとって久しぶりに帰省したとき、私も両親もしんどかったけど、だからこそいろいろ見つめ直して、私のほうが支えてもらって、少しずつ再生しようとした。今も互いに完全じゃないし、転職しても、前よりましだけど忙しいは忙しい。
それでももう後悔したくない。いつまでグラジオラスの咲く庭があるかだってわからない。
だからこの夏は、言い訳をせず、母の好きなグラジオラスの咲くあの庭に帰る時間を作ろう。ガチガチの義務感ではなく、ちゃんと日々を生きて、胸を張って帰りたい、帰ろうという、自然に沸き起こった感情を詠んだ一句。

🍀

思いはこちらに。

少しだけ上の記事に補足すると、「みんな」という、みんなの俳句大会の大切なコンセプトが「ずっと、みんな一緒だよ」というキャッチコピーに入っていることに改めてじーんときて、いつも以上にみなさん気合いも入っていらっしゃるし、噛み締めていろんな企画を楽しんでいらっしゃるなぁと、みなさんの記事を目にするたびうれしく思っています。(といってもフォロワーさんの記事を読むので現状精一杯です。俳句記事以外は、8月以降にお邪魔することになりそうです。)
クルーの方々も大変ななか、支え合って大切に思い合っていらっしゃるのが垣間見えて、胸が熱くなります。本当に頭が下がります。おつかれさまです。

まずはなんとか滑り込めました。
一ヶ月以上悩み抜いて選んだ新作なので、思い入れが強すぎて、感想が長くなってしまったことをお許しください。没句もいつも以上にあるので、旬杯が終わった頃に公開しようと思います。
また、コメントのお返事が遅れます。申し訳ございません。
全然時間が取れなくて、締切に追われています…お約束の件、なんとか間に合わせます。こんな状態で臨むことになり、申し訳ないです…

クルーのみなさん、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

#旬俳句

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