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ぷろろぐ或いは駄目人間としての自覚を持てという話

自分は自分を言葉で縛らなければすぐに融解してしまうことを痛感したのでnoteに日記を書く。と同時にそう思った経緯を少し。

2016年8月、ポケモンGOが世界中を席巻している最中、私は『シムズフリープレイ』というアプリにとことん夢中になっていた。

元々人との競争や他者との交流が嫌いな私は「ゲーム」というもの全般に漠然とした苦手感があったのだが、そんな私の四半世紀を某刀剣ブラウザゲーが見事に塗り替えてしまい、「ゲーム楽しい…ほかのゲームも面白いのかな…?」とうっかりアプリでリリースされていたシムズに手を出した…のが駄目だった。めっちゃハマった。めっちゃ課金した。

心底狂っていた期間はわずか2週間だったので、身を滅ぼすほどの課金をした訳ではない。ただ、その体験...「自分が理性を失くしてお金を使っていた」事に対して、目が覚めてからかなりのショックを受けた。自身の「大人」の部分に対する信頼は崩壊した。

基本的に、無料で提供されているコンテンツには「これは本来払うべきお金だ」という気持ちでお布施程度の課金は行なっている。そこにあるのは普通の購買行動と変わらない「いただいたので対価を払います」という理性的な感情だ。しかし、あの時の私には、「時間を金で買うのは…社会人だし…当然やんな…?」と震える声で言い訳をしながらどんどん※シムオリオンを買っていた私には、絶対に欠片程の理性もなかった。今思い出しても背筋が凍る。

(※シムオリオン…シム内通貨のひとつ。ノーマルよりグレードの高いアイテムを購入したり、シムの動作にかかる時間を短縮化したりできる。シムでは一つのアクションの完了に一日以上かかる事もざらなので、そんなの待ちきれない!早くゲームを進めたい!という人はシムオリオンを積極的に使って動作を終わらせていく)

自慰を覚えた猿のように夢中でシムズに課金してしまったのはおそらく、次から次に湧いてくる「クエスト」と「タスク」というシステムが私のツボを突いてしまったのだと思う。(※『シムズフリープレイ』は、キャラメイクや街を整える【世界づくり】の進行度に合わせて「町に訪れた人を救う」「結婚して家族を作る」などのクエストが用意されている。1クエスト内には「センターに電話をする」「客人を出迎えるために料理を作る」などの細かいタスクが用意されており、それらのタスクをシムに実行させクエストを進めていくという形。)
従来のPC版とはシステムや遊び方が少し違うかもしれないが、私はこの「小さな達成感」が少しずつもらえる『シムズフリープレイ』のシステムにまんまとハマってしまった。時間のかかるタスクをシムオリオンで短縮クリアして、シム内通貨が無駄にかからないよう最低限の設備を購入し、一番効率が良くなるよう人員を配置して...

シムズというゲームはおそらく、キャラメイクやインテリアにこだわったり、自分の街や建物を作る事に楽しさを見出すゲームと認知されている。しかし私にとってのシムは完全に「目の前に現れたタスクを消化するだけのゲーム」だった。そして私は攻略が難しい局面を迷わず課金で進めていく、典型的なカモ課金プレイヤーだった。独特の世界観や絶妙な効果音・アクションが更なる中毒化を促してくれたおかげで、私は短期間で立派なシムズフリープレイ廃人となった。
毎日シムの世界に没頭し、自分が作ったシムに物事を達成させて、シムと一緒に一日を終えていく。自分の作り上げた世界で物事が確実に実行されクエストが進行していく様は実に楽しく、私はおはようからおやすみまで一日中シムズの世界に張り付いていた。

そうやって世間のポケGOブームの逆をいくように『シムズフリープレイ』をプレイし続けて2週間ほど経った、盆休暇最終日のある日。仕事で翌日先方に完成物を渡さなければならず、そのために読まなければいけない書類と書籍が山積みになっている中、私は中々アクションを終えてくれないシムにずっと苛々していた。

「この状態だともうできるアクションはないし、早く次のタスクに行きたいなー。さっきオリオン買ったしもう景気良く全員短縮しちゃおうかな?」
真剣に悩んでいる自分の向こう、はるかはるか遠くから、私を憎たらしげに睨みつけている私がいる事に気付いた。彼女は眉を吊りあげて、大きな声で何かを叫び続けている。
ん?なになに、どした??
遠くて聞こえないので耳を澄ませて聞いてみる。

「タスク終わってないのは!!! お前だよ!!!!!」


その声を聞いた瞬間、魂が抜けてしまうかと思った。心臓への血の供給が止まったのでは、と感じる程に胸がスースーと冷たくなった。
そして、自分が「今までやったことない遊びを、能動的に、計画的に」というスタンスでやっていたゲームが、いつの間にか現実からの逃避の象徴になっていたことに気づいてしまった。

仕事は楽しい時も沢山あったが、細々とした苦手な事まで全て一人でやらなければいけない場面も多々あり、正直辛かった。そんな仕事でちっとも味わえない達成感ややりがいを、何かを育てていく喜びを、全部シムの世界に預けて金で買って喜んで、そして本来達成感を得なければいけない仕事からは逃げて逃げて、逃げ続けてこんなところまで来てしまった。「息抜き」にと楽しんでいたゲームでしか、いつの間にか息ができなくなっていた。全然笑えない。だってまだやるべき仕事は全然進んでない。

凍えた心臓に暖かい息を送り出すように、一つため息をついた。

自分のような自制心のない人間にゲームはやはり劇薬だと、身をもって体感した今日、戒めにと言葉でログを残しておく事とする。
そしてこんな無様な事に二度とならないために、まっすぐ向くべき場所を向くために、日々言葉の力でなんとか前を向いていこう、ライフログをとろうと強く誓った次第である。


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