1型糖尿病は、私の個性のひとつ

 風間梨沙さん(25)は、1日5回、多いときは8~10回インスリン注射を打つ生活が日常になった。「1型糖尿病だからって、仕事、旅行、食べることを諦めたりしない。なんでもできる!」そう言って曇りなく笑う風間さんだが、病気を受け入れるまでの道のりは短くなかった。

 1型糖尿病は糖尿病の一種で、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンが欠乏し、高血糖状態が続いて生存を危うくする病気だ。子どもや青年の発病が多い。風間さんは1型糖尿病患者だ。成田国際空港勤務や派遣社員を経験したのち、現在は新潟市中央区の飲食店「FARM TABLE SUZU」で働く。

 風間さんが1型糖尿病と診断されたのは2018年3月30日。専門学校1年生で齢19歳の時だ。トイレに行く回数が増え、異様なほど喉が渇く。糖尿病かもしれないと思い病院に駆け込むと入院が決まった。医者から「原因不明で今の医療では治らない。インスリン注射を打つ生活が一生続く」と告げられた。

 当時自分宛てに書いた手紙には、「学校、就活、バイト、少し先の将来だと結婚、妊娠。全部が不安」と綴ってある。「どうして私なの?」と考えずにはいられなかった。自分の病名を話すと「いいもん食ってたんだね」と言われたことがある。1型糖尿病は原因不明で贅沢病ではない。偏見の声に涙が溢れた。診断当初は、好きなものを好きなだけ食べている人と今の自分を比較して辛くなり、誰かとご飯を食べるのが嫌だった。

 病気が嫌だという気持ちから「病気でもよかった」と思えるようになったのは、周りの人が理解し、助けてくれたからだと話す。専門学校では、風間さんが低血糖になったときのために友達が飴を山ほど持っていてくれた。今までの職場環境でも体調を気遣ってくれる人に囲まれた。約2年前、自分の心境の変化にはっとしたことがある。低血糖で体調不良になったとき、「元気じゃなきゃやだよ」と言われた。以前なら、病気だから仕方ないのにと思っていたが、自分を大事に思ってくれる人のために元気でいたいと、すんなりその言葉を受け入れられた。

 飲食店で働き始めて約3年、計6名ほど糖尿病患者に出会った。インスリン注射を打つ姿を見かけると、糖質管理を気にかけ「ご飯の量を量ってきますね」と話しかけに行く。自分が1型糖尿病になったからこそできる声かけだ。

 1型糖尿病と診断された頃は泣いてばかりいた。「将来の全部が不安だった気持ちを尊重したい。だってこわいのは当たり前。でも、周りの人が病気を理解して助けてくれるから、そんなに心配しないで」。当時の自分へ、そう伝えてあげたい。1型糖尿病は私の個性だと、今なら100%自信を持って言える。

(2024年2月15日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?