記憶はどのように知識になるのか?① 認知心理学より


記憶と知識の違い

記憶とは
①情報を取り入れ、とっておき、のちに使うために取り出す、といったはたらき(例:記憶がよい)
②情報をとっておく入れ物、貯蔵庫のようなもの(例:記憶にない)

知識とは
一般的に、知っている事柄、内容

したがって、記憶の意味②≒知識 といえる。

では、「記憶が知識になる」とはどういうことか?
ここで、記憶の3つめの意味、
③記憶された情報のうちの知識とよぶにふさわしくないものが、知識と呼べるものに変化する
ことを示している。

では、記憶はどのようにして知識へと変化するのだろうか?

記憶が定着する条件

記憶の種類には、短期記憶、長期記憶、ワーキングメモリとレファレンスメモリが存在しているとされている(別記事参照)
ワーキングメモリ内の記憶は短期間しか持続しないため知識と呼ぶことはあまりふさわしくない。では、ワーキングメモリ内の記憶を持続的な記憶として定着させ、知識となるのはどのような場合なのか?

(1)リハーサルの回数

私たちは、何かを覚えようとする場合に、
何度も声を出したり、心の中で繰り返すしたりする。これをリハーサルという。
ランダスは、実験によりリハーサルを繰り返すことが記憶の定着につながると示した。
では単に、リハーサルを繰り返すだけで記憶は定着するのだろうか?

(2)リハーサルの質

クレイクとワトキンスは、実験によりリハーサルには、2種類あることを示した。
2種類のリハーサル
①維持リハーサル
たんに項目を短期記憶内に留めておく働きしかない
精緻化リハーサル
項目と記憶を定着させるはたらきがある
では、記憶を定着させる精緻化リハーサルとは?

(3)精緻化リハーサル

クレイクとタルヴィングは、実験により、
記憶項目のより意味的な側面に注意をむけることによって記憶の精緻化がなされ、その項目の記憶はよりしっかりとした持続的なものになることを示した。
彼らは、小学5年生の実験参加者に「空腹の男が車にのった」「いたずら好きな男が指輪をかった」といったかたちの8つの文を提示し、のちに、
「空腹の男が」という手がかりをみてどんな行為だったかを答えられるように覚えることをもとめた。
このとき、子どもたちはどんな男が何をしたかを覚えるために役立つ文の続きを作るように求められた。
たとえば、
「空腹の男が車に乗った。レストランに行くために。」
「空腹の男が車にのった。そして出かけた。」
このとき、前者は「空腹の男」「車に乗る」という行為に結びついているが、後者は、車に乗るのはだれでもよいことになってしまう。

その後の結果では、前者のような適切な精緻化が行われた場合の方が、
15〜30%程度結果が高かった。
また、適切な精緻化を行った割合は、学校での成績がよい生徒ほど高かった。

これら(1)〜(3)の結果を総合すると、
外部から入ってきた記憶をしっかりとした知識として定着させるためには、
記憶情報の意味的な側面に注目した情報処理が重要であり、この情報処理は、外部からはいってきた情報にのみたよるものではなく、すでに自分の中にあるさまざまな知識を用いた積極的な過程が大切であると言える。
つまり、
「レストランにいくために」といった文の続きは外部から与えられたものではなく、自分の知識を積極的に用いて導き出したものであり、意味的内容的に一貫した知識を作り出す心的活動=精緻化が生じていると考えられる!

私見の記述

幼少期のころ英会話に行っていた。
最初はわけもわからず、たいした成果もでなかったが、毎週英語に触れていたため、文法、単語、すらわかっていなくてもなんとなく知っている文章がたくさんあった。
中学生になり、本格的な英語の授業がはじまったとき、
「なるほど!これまで話していた言葉は、こんな意味があったんだ!」
という発見とともに、複雑な文法もなんなく記憶、学習することができた。
定期テストでは常に学年トップレベルを維持し、その後も英語で苦悩することはほとんどなかった。
この場合も、中学の英語文法を覚える際に、幼少期の知識との結びつき、が発生していたと思った。

今は英会話の講師もしているが、
例えば、りんごがappleとかけなくても、りんご=アップルという発音や言葉の知識が頭にあれば、いざ書くときに、結びつきやすく、スペルを覚えやすいだろう。
最初から書くことも大切だが、特に英会話初期や小学生にはとにかくふれさせる。
「なんとなく知っている。聞いたことがある。」
をふやすことがその後の英語学習の土台につながると考えられる。

また、さらにその土台として、日本語でしっている知識から英語に触れさせることも大切だと思った。
日本語で知っている単語から英語にする。
本人が知っている文章から英語にしていく。
そうすることで、まず本人の中にある日本語の知識と精緻化して英語の知識がついてくると考えられた。

次回に続く。

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