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年で洗はれたあなたのからだは

 このごろは梅雨前のもっともすがすがしい季節と、冬前のうららかな季節とが、きわめて短くなってしまいことさらに貴重と感じる。「風薫る5月」というけれど、最近5月もまあまあ真夏日になったりするからもしかしたら本当に「いま」だけが限られた恩恵の頃なのかもしれぬ。

 母との新しい生活が始まって早くもひと月が経ち、私の日常はすこぶる健康的になった。日付が変わる前にベッドに入るうえ、無駄食いができなくなったので大変に規則正しいのだ。これは健康になるだけでなく悲願のダイエットが叶うであろう。

 同時に、母がなんでももったいながるので自然と無駄遣いが減った。食事もすべて作ってくれるので付き合い以外で外食しなくなったし、昼などは毎日お弁当になった。私は母が大好きなのでこれがめっちゃうれしい。ただ、お弁当箱がめちゃくちゃこじんまりしているので腹7分目くらいで夕方にはものすごいお腹が減っている。

 お洋服の無駄買いもなくなった。
 以前それを「無駄買い」とも思っていなかった。けれど、母の手前頻繁に買い物して帰るのも気が引け、というきっかけだったのだが、「待てよ?もう新しい服なんか要らなくないか?」となった。考えてみれば、服と食は健全な理由のみではなくなにかの代替行動によっても浪費していた気がする。

 だいぶ前に書いたような書いていないような気もするが、私の理想は智恵子のそれなので、

をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか
年で洗はれたあなたのからだは 無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽(せいれつ)な生きものが
生きて動いてさつさつと意欲する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修業によるのか。
あなたが黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる

あなたはだんだんきれいになる(「智恵子抄」高村光太郎)

 もしその境地に至れたらなんと最高であろう。

 母という純粋。母への愛、思慕という純粋な日々が私を少しずつクリーンアップしてくれている。

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