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蛹化の女!


『冬虫夏草の謎 復刻』
盛口 満
丸善出版

戸川純の超名曲『蛹化の女』(むしのおんな)、大好きな曲ですが(ライブのアンコールで演奏されるアップテンポ版『パンク蛹化の女』も含めて)、昔からちょっと気になっていたのですが、歌詞にある「蝉の蛹」、蝉って不完全変態なので本当は「蛹」の状態がないんです。幼虫が土から出て来て木に登って、しばらくじっとして、脱皮する。この「しばらくじっとして」の状態を「蛹」と呼べなくはないけれど、普通の蝶や蛾の蛹とは明確に違います。(だからといって『蛹化の女』の価値が寸毫たりとも下がるわけではないのですが)

蛹(さなぎ)の恐ろしいところは、イモムシである蝶の幼虫が「蛹」状態を経て蝶になる、この蛹の中で、幼虫から成虫の体(まったく別構造)に組み替わるんですが、中身はほとんど液状に溶けてるんです。なぜ知ってるかって? 小学生の頃、やっちゃったことがあるからです。蝶の蛹を分解したんです。ああ、思い出すだけでも背筋に冷たい電流が走ります。僕は小学生の頃、かなり昆虫好きだったんですが、そのまま昆虫おたくにならなかったのは、多分この蛹の中身を見てしまった経験からだと思います。いったん溶けて、成虫に組み替わるという、この恐ろしさ! あれ以来、すっかり昆虫好きをやめてしまったのです。

とはいえ、「蛹の中では体組織が一部の神経系と呼吸器系を除き溶解する」という事実は、恐怖であるとともに、あまりにも不可思議な「生命の謎」を考えるきっかけになりました。生きているって何だ? という、もちろん今も解けない謎を考えはじめた端緒になったのです。
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『蛹化の女』の歌詞の続きにある「飴色の背中に哀しみの茎が伸びる」は、冬虫夏草のことですね。昆虫に寄生する菌類です。15年くらい前、この冬虫夏草のことを調べていて、盛口満の本に出会い、そこから小学生以来封印していた「昆虫好き」が復活しました。以来、盛口満の本は、たぶん30冊近く読んでます。

(シミルボン 2017.2)

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