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風歩さん


『風歩』
森山 風歩
出版社:講談社

クレジットを見なくてもわかる、表紙写真 by アラーキー。
手に取ったきっかけはこの表紙の写真。目の潤んだ、でもどことなく固い表情の女性の顔のアップ。
表情が固い理由はすぐにわかる。
森山風歩さんという進行性筋ジストロフィーと日々闘う27歳女性の自伝なのだ。

相当凄惨な家庭に育った人です。金はあるけど、金以外のものがまったくない両親に虐げられて育った動きののろい女の子。
小学校三年生で自覚症状が出始めたのに、中学生になるまで病気であることを親にも学校にも認めてもらえず、家でも学校でも虐げられる日々。
13歳で「筋ジス」とわかったときには「病気だったことにホッとした」という。
軽く書いてるけど、心底ぞっとする話です。

親から介護放棄されて放り出されたりとか、最低な彼氏に電動車椅子のバッテリーを取り上げられて放置される話とか、車椅子で街を徘徊する話などに慄然とさせられたり。
施設で出会った「はじめてのまともな大人」藤田先生の至誠に感服したり。
アラーキーとの交流に和まされたり。

ぎこちない文章ながら、そのぎこちなく心から絞り出すように吐く言葉にちゃんと血肉が付いていて、
「生きると死ぬはイコールだわ。
だから、死ぬってことは生きるってことだわ・・・と思った。
だから、あたしは、人として生きることはどういうことか、人間というものは何なのかを少しでも掴んで生きたい(死にたい)と思った」
なんて書かれると、ズキズキとこっちに刺さって来るのです。

(シミルボン 2016.9)

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