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盗作とリスペクトの間


有名な話なのだろうが知らなかったこと。
井伏鱒二の『言葉について』という短編を読んでいたら、あまりにつげ義春の『紅い花』にそっくりなのでびっくりした。少女の名前までサヨコ。

サヨコの嫌っているいじめっ子のキャラまでそっくりで、ストーリーの中に果たす役割は瓜二つといっていい。
盗作と、リスペクトの間ってなんだろうか、と考えてしまう。
もちろん筋立て・登場人物とも変えてあるから、これをもって盗作であるとはいえないけれど、精神的にはズブズブの盗作だろう(笑)。
あ、「精神的にはズブズブ」なことをリスペクトというのか。じゃ、いいんだ。
いやーでも知らなかったな。でも絶対に有名な話だろうな。ここまで似てるんだし。
(あ、もちろんつげ義春が井伏鱒二を真似てるんですよ。念のため。)

以前内田百閒の『百鬼園随筆』を読んでいたら、杉浦日向子の漫画『百日紅』で、英泉と国直が酔っ払ってふざけて辛い佃煮を無理やり食わせっこするシーンが、そのまま出てきた。

もちろん杉浦日向子が内田百閒をリスペクトして丸コピして使っているわけである。
が、原恵一のアニメ映画『百日紅』を見たら、このシーンが、何だったか、別の食べ物に変わっているのである。
いやぁ、あそこは「佃煮を食え」「馬鹿、辛ぇだろう」じゃないといけない。
何十人というスタッフのチェックをくぐり抜けて気づかれなかたんだから、こっちは案外知られていない話なのかな。

(シミルボン2016.9)


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