ウィトゲンシュタインの愛人/デイヴィッド・マークソン

地球最後のひとりとなった女性が、タイプライターで綴った小説。という体裁の小説でした。小説とはいっても、物語らしい物語があるわけではなく、主人公が頭に思い浮かんだことを延々と書き綴ったもの、という内容です。本当に頭がクラクラするくらい延々と。正直なところ何度も寝落ちしました。

ページの多くが、というより大半が、芸術家に関するトリビアで占められていて、へーそうなんだー、と勉強になるかと思いきや嘘情報も多いです。嘘というより勘違いですが。

彫刻 は 余計 な 部分 を 取り除く 芸術 だ と、 かつて レオナルド・ダ・ヴィンチ は 言っ た。 もしも それ が この 話 に 何 か 関係 を 持つ なら。 しかし、 それ を 言っ た のは レオナルド で なく、 ミケランジェロ だっ た の だ が。 さらに よく 考え て み たら、 レオナルド が 雪 を 絵 に 描い た こと は なかっ た と 思う。 私 の 頭 に あっ た のは、 霧 の 中 の 白 っぽい 岩 だっ た。デイヴィッド・マークソン. ウィトゲンシュタインの愛人 (Kindle の位置No.1276-1279). 国書刊行会. Kindle 版.

ちなみに、上の引用で、ダヴィンチが雪を絵に描いたことはない、とありますが、別の箇所では、少なくとも一度は描いている、とあります。どっちやねん。ずっとこんな調子なので、書かれている全てが信頼できなくなってきて、主人公はからかい交じりにこういう書き方をしているのか、頭がおかしくなっているのか、両方が入り混じっているのか。訳が分からなくなってきます。

全体的にユーモラスではあるんですよね。ブラームスの伝記に異常にこだわって何度も何度もその話を持ち出したり、記述の文法的な正しさに異常にこだわっていちいち断りを入れたり、その話もういいよ!と、思わずつっこみたくなる感じではあるんですが、あまりにも延々と続くので読み進めるのが辛いです。

面白かったとはまったく言えないんですが、強烈な印象は残りました。変な小説読んでしまったなー、と。アメリカ実験小説の最高到達点といわれる本作、この作品自体がウィトゲンシュタイン哲学のパロディとのことなので、読みこなすには、かなりの教養が求められるんじゃないでしょうか。ぼくには知的すぎてついていけませんでした(泣)

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