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夫とファッション

夫のワードローブは、その7割が半袖Tシャツであるといって過言ない。

とにかく綿のTシャツばかりなのだ。
新しい服を最近買っていない、と言って出かけては、Tシャツを買って帰ってくる人間である。

季節も何もあったものじゃない。
では秋冬はどうするのかといえば、Tシャツの下にロンTを重ね着するだけである。
夫の体の最表面は、常にTシャツ。寒いだろう。

冬にそれは無理がある、とはじめはニットなどプレゼントしていた。
そしてそれを着てくれもしたが、夜になると決まって首と頬が真っ赤になるのである。

いろいろ鈍感な夫の肌は、敏感肌なのだった。
綿のTシャツばかり着るのは、敏感肌対策でもあったのだ。

では、お気に入りのTシャツをそんなに持っているのならそれを見せながら着るがよい、と前あきのシャツやブルゾンを買い与えたこともあったが、必ず前をぴっちりと閉めて着る夫。

なぜ。
なぜTシャツを見せないの。

聞けば、
「なんか、ぴっちりしていないと嫌な性格」
とのこと。

そんなわけがあろうか。
そのしわしわのチノパンを見よ。
あのくしゃくしゃの服の山を見よ。

そんなわけで、ファッションに(あと肌のかぶれに)一家言ある夫であるため、妻はできる限り口を出さないよう努めている。

ちなみにワードローブの残り2割はスウェットとパーカー、1割はその他である。
お笑い芸人とは、かくもかっちりした服装が不要な職業である。

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