見出し画像

アナログゲームマガジン大賞2022米光賞

さて

↑というわけで、アナログゲームマガジン大賞2022特別賞の発表です。

2022年もたくさんゲームを遊んだり作ったりしました。
米光が作ったゲームは、記事「2022年に米光が作ったゲーム」をみてね。

さて!
アナログゲームマガジン大賞2022米光賞の発表です。

日本語版部門『ウォーターゲート』

タイトル:Watergate
デザイナー:Matthias Cramer
メーカー:数寄ゲームズ / Frosted Games
発売年:2022年(原版は2019年)
2人 30分~60分 12歳~

モチーフとシステムががっちり組み合ったゲームは遊んでいて気持ちいい。しかも、こいつのモチーフは、ウォーターゲート事件。
「三流のこそ泥」かと思われた事件が、新聞記者の調査と活躍により、政敵による潜入だったことが判明し、リチャード・ニクソン大統領が辞任に追い込まれた事件。
っつーても、このゲームを遊ぶまでは、詳しく知らなかった。のだが『ウォーターゲート』を遊んで興味を持ち、まさにこのゲームが描いている新聞記者VSニクソン政権をスリリングに描いた傑作映画『大統領の陰謀』を観て、情報提供者のディープスロートを中心人物にした『ザ・シークレットマン』を観て、テレビ司会者とニクソンのインタビューによる戦いを描いた『フロスト×ニクソン』も観て、本も読んで、にわかウォーターゲートマニアになってしまった。
ゲームは2人用。新聞記者側とニクソン政権側に分かれる。
それぞれがカードを駆使して、ボード上に証拠チップを置いていく。
ボードは、中央にニクソンの写真。周囲に、ニクソンの秘書ローズ・メアリー・ウッズや、司法長官の妻マーサ・ミッチェル、FBI副長官代理であるディープ・スロートことマーク・フェルトなど情報提供者8人。このうち2人の情報提供者とニクソンを、情報チップを配置して結びつければ新聞記者側の勝利だ。
一方、ニクソン政権側は、共謀者カードやイベントカードを使って、証拠を握りつぶす。さらに勢力マーカーを手に入れて任期満了を迎えれば勝利となる。
歴史上の人物や事件が、カードやボードに記されていて、それを使ってプレイする。ニクソンが情報提供者の口を封じ証拠を握りつぶしまくったり、集団デモで共謀者の行動を阻止して証拠を手に入れたり、ゲームプレイによってまた別の歴史を作り上げることができる。
もちろんウォーターゲート事件を知っているほうが楽しめる。が、知らなくても心配ない。マニュアルが充実していて、後半13ページは、歴史的背景とカードの背景情報がコンパクトにまとまっている。ウォーターゲート入門にぴったりだ。
カードにはフレーバーテキストがついていて、実際の発言が引用されている。たとえば、ワシントン・ポストの編集長ベン・ブラッドリーのカードにはこうある。「良心と公平さにおいて真実を語る限り、結果を心配することはジャーナリストの仕事ではありません。長い目で見れば、真実は嘘ほど危険ではありません。私は真実が人を自由にすると心から信じています」
モチーフとゲームシステムが相互に支え合い乱反射して面白さを増幅させている『ウォーターゲート』、重厚なテーマだがプレイ時間も30~60分と手頃。映画を観て、ゲームを遊んで、ウォーターゲート事件のまっただなかに放り込まれる醍醐味はピカイチだ。

日本ゲーム部門『SCOUT』『ミタイナ』

1作品にしぼりたかったが『SCOUT』と『ミタイナ』の2作。いや、ぜんぜんタイプの違うゲームなので比べられないからしぼれなかった。

『SCOUT!』

タイトル:スカウト!
デザイナー:梶野 桂
アートワーク:浅岡 昇平
メーカー:ワンモアゲーム!
英題表記:Scout!
3~5人 15分前後 9歳から
発売 2019年~
スカウト:オインク版(2021年)(2〜5人用)

ワンモアゲーム!版は2019年、オインク版は2021年リリースらしいが、オインク日本逆輸入版が入手可能になったのが2022年だし、2022年ドイツ年間ゲーム大賞ノミネートだし、今年の作品!ってことで。

手札の並びを入れ替えてはいけない大富豪進化版。『シリメツレツ/支離滅裂 (Krass Kariert)』(カタジャ・ストレメル (Katja Stremmel))インスパイア作品らしい(『シリメツレツ』は未プレイなのでやりたい)。
上下に違う数字が書かれたカードとチップ。手札の並びは変えてはいけないが、スカウト(場から取る)したカードは、上下どちらでも、どこに入れてもいい。
メルド(組み)で場に出たカードより強いのを出すか、1枚取る(スカウト)か。1枚取ると場のカードが弱くなって、次の人は出しやすくなるという仕組みを軸に、メカニクスが噛み合っててスリリングなゲーム展開になるのがすばらし。
次の番、回ってきたら5枚組だして全員スカウトさせて勝つぞ、ってときのドキドキ。なのに、そのまえにあがられたり。
1ゲームに1回だけできる「ダブルアクションマーカー」(スカウトして捨てられる)も効いていて、逆転できるの良し。
メカニクスがむきだしで、何がどう「効く」のかわかりやすい。

『ミタイナ』

タイトル:ミタイナMITAINA
3人~6人 20分前後 12歳から
原案:店長 ゲームデザイン:高橋俊介 アートワークTANSAN
タイトル:ミタイナMITAINA
デザイナー:Matthias Cramer
メーカー:数寄ゲームズ / Frosted Games
発売年:2022年
3-6人 20分 12歳~

大喜利の答えを見て、お題を逆算するゲーム。
センス勝負になったりするとハードルが高いが、この『ミタイナ』は、そこをシステムで回避したところが凄い。
最初に当てられるより、なるべく後半に当ててもらうと高得点。なので、そこを考えて、子は、どの順番で回答を開いてみせるかを決める。
大喜利としておもしろいかどうかは問われない雰囲気になるうえに、ピント外れっぽい回答は先鋒、ベタすぎる回答はラストにもってくることができる。どんな答えでも、活躍タイミングがわりとあるのだ。

たとえば、テレビ番組『ラビット』で紹介されたとき。
「ベホイミですけどー」
「魔ちょぱ」
「ネイリスト召喚」
「呪文が若い気がする」
で、お題は「ギャルみたいな魔法使い」。見事にラストターンで当ててた。

大喜利系のゲームで、安易に「いちばん良いと思ったものを指差す」で勝者を決めるものがときどきある。好き嫌いで決まっちゃうと忖度が生じたり、たんなるセンスの相性で、ゲームのフラットさが減っちゃうのが気になる(遊びとしては気楽に遊べていいけど)。
『ミタイナ』は、大喜利を「お題を逆算させる」「後半に当てるほど点が高くなるのでそれを考えて回答を開く順を決める」というメカニクスで、しっかりとゲームに落とし込んでいて楽しい。(とはいえ、大喜利系の手軽さが少し失われるので、そのへんは、むずかしいな、ゲームデザインって)

ボードゲーム以外のコンテンツについては、「GINZA」に記事を書いたので読んでね。

ここから先は

0字

・オンライン講座「ゲームづくり道場」をほぼ毎月1、2回。 ・創作に関する記事 ・メンバー特典記事 ・チャットでの交流

米光一成の表現道場

¥800 / 月 初月無料

記事単体で購入できますが、月額800円「表現道場マガジン」がお得です。noteの機能で初月無料もできるのでぜひ。池袋コミュニティカレッジ「…

11人のライターが月に1本以上、書いています。是非、チェックしてください。

アナログゲームマガジン

¥500 / 月 初月無料

あなたの世界を広げる『アナログゲームマガジン』は月額500円(初月無料)のサブスクリプション型ウェブマガジンです。 ボードゲーム、マーダー…

サポートいただいたら、記事に還元できることに使います。表現道場マガジンをよろしく! また、記事単体で購入できますが、月額800円「表現道場マガジン」がお得です。