『忍びの国』と主人公を出すタイミング

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4月2日地上波放送にあわせてレビューを書くために、和田竜『忍びの国』(新潮文庫)を再読。
「主人公をいつ出すのか」ということを考えた。
エンタテインメントの物語だと、いきなり出る。いきなり出て、読者に感情移入してもらう。そうするのがストレートだろう。
ヒーローがいて、その横に語り手がいるパタンの場合は、語り手がまず出て、その後にヒーローがでる。
どちらにせよ感情移入してほしい人物は、なるべく早い段階、最初に出てくるほうが都合がよい。

なんてことを考えたのは、『忍びの国』の主人公:無門が、なかなか登場しないからだ。
第1章には出てこない。第2章の1節にも出てこない。
第2章の2節になってようやく登場する。
連載マンガだと1話で主人公が出てこない感じで展開するのだ。
なぜ、そういう構成になっているのだろう。

と考えているとコミカライズを見つけた。
『忍びの国』(和田竜・坂ノ睦)
マンガ版はどうなっているか?

コミックスは、原作の第二章にあたる下山甲斐の砦の戦いからはじまるのだ。1話の15ページ目ぐらいで無門が登場する。
原作よりも早めに登場させた。
原作の第1章にあたるエピソードは、マンガでは第2話になっている。
第1章と第2章の順番を入れ替えた形だ。

映画はどうだろうか?
『忍びの国』は主演が嵐の大野智くんだ。
当然、なるべく速く登場させたいだろうから、マンガ版と同じ流れで、下山甲斐の砦の戦からはじまる(というよりマンガ版が、映画に準じているのかもしれない)。

で、『忍びの国 オリジナル脚本』も、この順番、と思いきや、こちらは小説と同じ構成だ。脚本で読むと、まず北畠具教殺害のシーンがあって、タイトル、そして無門登場の下山甲斐の砦の戦いという流れ。

この構成の違いで、意外と物語の見え方が変わる。

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