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L:50 床屋での不可逆的なコミュニケーション

2023.12.10

週末は床屋に行こうと、水曜日に「土日で予約できますか?」と聞いたら、既に予約でいっぱいとのことだった。年末に向けて髪を切りたい人が多いのかもしれない。

今、通っている床屋は寡黙なお兄さんが丁寧に切ってくれるので、気に入っている。仕方ないので、来週末にしようかと思ったが、予定もあるし、ますます混みそうな気もしたので、悩んだ末、別の店に行くことに。といっても当てがあるわけではなく近所で、予約なしでやってくれそうな所に飛び込みで行くことにした。

土曜の午後にお客さんがいないというは、どうなんだろうという不安もありつつ、待つのも嫌だなという矛盾した希望を抱えつ、昔からやってそうな街の床屋さんに入ることができた。年配のおじさんが迎えてくれた。

この1年半ほど通ってきた床屋のお兄さんと話した会話量を、入店後15分で上回るおじさんのトーク量

なるほど、“しゃべる系”の床屋さんだ。話だけでなくジェスチャーもあり、私と鏡の間に入って、あれこれ話してくれた。国会中継の話、野球の話、お客さんの話、おじさんの仕事の信念などなど。

床屋に行くと思うのは、髪を切るのって理容師と客の協働作業ということだ。いかに、切ってもらいやすく、気分よく切ってもらうかが自分に対するサービスに返ってくると思っている。

もちろん、相手はプロだから、そんなこと私が気にしなくても十分にやってくれるとは思う。それでも、せっかくなら仕事がやりやすい方がいいとは思う。

なので、床屋でのコミュニケーションはそれなりに気を使う。
きっとサウジで文字どおり“痛い目”にあったからかもしれない。

この1年、寡黙なお兄さんに甘やかされて、ぼけ〜っと床屋の椅子に座っていることが多かったので、このトーク量に反応するのに苦労した(笑)鏡に映る自分のあいづちがぎこちなく見え、それをおじさんに悟られはしないかとますます不安になり顔がぎこちなくなる負のフィードバックループにハマった。

そうこうしてるうちに、おじさんが、過去のお客さんの話をし始めた。これがちょうど、私が前から気になっていたことと少し重なっていたこともあり、そのうち、自然に会話していた(笑)

何かというと、床屋でも美容室でもあると思うのだけど、一通り髪を切った後で、お店の人が鏡を後ろに持ってきて、
「こんな感じで、いいですか?」
って確認するやり取りだ。

私の場合、この時点で追加のお願いをすることはほぼない。
形式的に「はい、大丈夫です」と答えてしまう。

過去に1度か2度、「もう少し短くしてください」と言った記憶があるが、その時は「もう少し、短くする?」と聞かれた時だったと思う。

というのも、カットの終盤でそれなりに全体を整えた状態で、部分的に修正すれば、また全体を整えなければならないだろうし、私の様に一番長くても3センチ程度の長さなら、もうここから、やりようがないだろうと。

年配の理容師さん曰く、過去に8回、やり直しを言ってくる客がいたという。8回ともなると、理容師の技術うんぬんというより、そのお客の指示に問題があるように思えた。

理美容室での「こんな感じでいいですか?」は、基本的には不可逆的だ。さらに短くはできても、もう少し長くということは、どんなに技術のある理美容師でもできない。

そう考えると、このやり取りをする時に、理美容師の人は、注文されている長さより少し余裕を持たせていて、調整できるようにしているのだろうか。それとも、客の注文にピタッと合わせて、これでいいですかと聞くのだろうか。ある程度、長さのある髪ならピタッと合わせて、違うと言われてもやり直しができるのかもしれない。

私の場合、理容師の腕を信じているというか、厳密じゃないのもあるかもだけど、私が鏡越しに見て、何か言うより、全体が見えているプロの理容師の方が総じて全体が把握できていると思うから、もう何かを言うつもりはないという感じだ。

あまり他のお客さんのやり取りを見たことがないので、どうしているかわからないが、みんな、けっこう修正してもらうものだろうか。

いつもより、ちょっとよい茶葉や甘味をいただくのに使わせていただきます。よいインプットのおかげで、よいアウトプットができるはずです!