償却資産税のはなし その3 ~よくある申告漏れ~

償却資産税について。その3です。

償却資産として申告すべき資産の範囲と、会計(決算)上で固定資産としている範囲とで、だいたいは同じなのですが、ときどき異なっているので、ときに申告漏れを起こします。

なかでも、うっかりしがちなよくある二つをご紹介します。

圧縮記帳

圧縮記帳というものを、かいつまんで説明します。

300万円の資産(機械装置としましょう)を買った際に、2/3の200万円はなにかの補助金で手当てされ、自己資金は100万円で済みました、という場合。

① 機械装置の取得価額を300万円として、これを減価償却していく。
もらった200万円はもらったとき(もらえることが確定したとき)の収益(益金)とする。

というのが原則です。

一方、これを
② 300万円-200万円=100万円を機械の取得価額として、これを減価償却していく。
というのが圧縮記帳です。

補助金をもらったときに収益(益金)計上しないで済む(けど、トータルの損益で見ると実は変わらない)という利点があります。

説明が長くなりましたが、償却資産の申告の際は、この②圧縮記帳という概念はありません。

つまり、償却資産の申告の際は、圧縮記帳を決算上でしていようとも、①のように取得価額300万円として申告する必要があります。

上記は、補助金が資産取得価額の2/3という場合でしたが、なかには資産の取得価額のほぼ全額を補助金として受領する、ということもあります。

それで圧縮記帳をすると、会計上は資産として計上されないけれども、償却資産税の申告はする必要がある、というのが出てきます。

資産を取得するたびに、固定資産管理システムにキチンと登録していて、償却資産の申告はその固定資産管理システムに依っていれば、申告漏れを起こすことはそうそうないはずです。

が、世の中には、固定資産管理システムを使っていない会社ですとか、償却資産税の申告を紙ベースで行っているという会社がまあまああります。
そうすると、ミスります。

少額減価償却資産

「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」というものがあります。(国税庁タックスアンサー)

国税庁のタックスアンサーを見に行くと、文字が多くてうへぇとなります。適用要件をきちんと説明しておく必要がありますから、どうしても説明は長くなります。

かいつまんで説明すると、青色申告をしている中小企業者等(個人事業主も)であれば、取得価額30万円未満の資産を買った際に、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの取得価額の合計額を限度として、その期の損金(経費)にできる、というものです。

具体例をあげます。

1台28万円のパソコンを買ったとします。(ノートパソコンだったら結構いいやつですね。)

通常であれば、28万円の器具備品として資産計上します。

ですが、この「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」というものを適用すれば、資産計上することなく、その期の費用(損金)とすることができます。決算上は消耗品費といったものになるでしょう。

これが年300万円まで効くので、同じパソコン10台(28×10=280万円)までであれば、費用(損金)にできます。なお、11台目は、20万円(300-280万円)分は費用(損金)にして‥ということはできず、28万円全額が資産計上となります。

そうすれば、資産計上するよりも、取得したときの費用(損金)が増えるわけですから、結果その期に納める税金は少なくて済みます。(それがホントウに節税になるかどうかは、よく考える必要がありますが、この話はまたの機会に)

このように、会計(決算)上は費用になります。

では、償却資産税の申告はしなくていいかというと、これはする必要があります
先の例でいうと、280万円分のパソコン(器具備品)は償却資産税の申告をする必要があります。

これ、資産を取得するたびに、固定資産管理システムにキチンと登録して…という基本動作が出来ていれば良いのですが、しばしば後回しにされてしまうので、結果、ミスります。
会計事務所ですら、ミスります。プロとしてそんなことしちゃダメなんですが。

ということで、今回、償却資産税の申告でミスりがちなこと2選をお送りしました。

本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

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