見出し画像

汚染水:大型タンク設置を対案にしよう - 福島第一の敷地と周辺には十分な余地がある

非常にナイーブな意見で恐縮だが、福島第一原発の周辺にはまだタンク設置用敷地を拡張できる余地があるのではないか。タンクの増設が可能なのではないか。前回の持論の続きである。この意見と観点はコロンブスの卵だと思うし、マスコミでもネットでもあまり見ないので、こだわってさらに申し上げたい。視覚的に一目でシンプルに検証できるよう、Google の地図をタイトルバックに掲げてみた。今年7月末現在1073基の保管用タンクが設置されている。原発建屋の南西敷地にぎっしり並べ置かれていて、相当に広大なスペースをタンクが林立して占有している。ネット上に同じ場所を撮った2011年3月の航空写真がある。現在タンクが置かれている場所は、一面が濃い緑で映っていて、平らな自然林の土地だったことが分かる。

この一帯は長者ヶ原と呼ばれる海岸段丘の広い松林で、3000haを陸軍が飛行場用地として取得整備し、戦後、東電が原発建設用に買収転用したものだ。嘗ての写真の景色はとても風情があり、いい感じの浜通りの自然景観が広がっている。現在の航空写真を見ると、タンク置き場の南側に未開発の自然の土地が残っているのが分かる。広さを見積もると、ちょうど12年間タンク置き場のために用地化した面積と同程度になる。起伏があり高低差のある雑木林だが、平地にする土木工事に特に困難はないだろう。ここが東電と政府が言っている「廃炉作業のための新施設の用地」として確保している場所だろうか。テレビ報道では詳しく説明されない。燃料デブリ保管にどのような施設が作られるのか、どれほどのスペースを必要とするのか。

次に、その土地から少し西に350mほど移動すると、南台という地名の土地が確認でき、ここも自然の雑木林のままだ。まとまった広さが残っていて、東電がいずれは何かの目的で用地化する予備地なのだろう。面積を比較すると、やはり現在のタンク保管地全体と同サイズで、十分に広い未利用のスペースである。その気になれば、この南台の地を「廃炉作業のための新施設用地」として使うこともできる。官邸と経産省がそう指示すれば、東電は頷いて従うはずで、その方向で現在の土地計画を変更するだろう。つまり、私が言いたいのは、東電と政府はこの一帯をどのように土地利用しようとしているのか、使える空き地はないのかという疑問であり、その具体的説明の要求である。それは、南側だけでなく北側と西側の未利用地でも言える。

FoE Japan という環境団体のサイトを見ると、私と同じ考え方の対策案を第一に提起していて、「石油備蓄などに実績のある、ドーム型屋根、水封ベント付きで10万立方メートルの大型タンクを建設」せよと唱えている。その場所は、「福島第一原発の敷地内の7、8号機建設予定地や土捨て場、敷地後背地等など」と指定がある。現在のタンクは1基の容量が1000トンから1300トンであり、すなわち、大型タンクは1基で77倍から100倍の汚染水を収容できるすぐれものだ。大型タンクの建設に技術開発の時間は必要ない。すぐ着工・設置できる。ぜひ採用してもらいたい。7、8号機の建設予定地というのは、事故現場となった1ー4号機の北側になる。1-4号機から北に300mの場所に5、6号機があるが、さらにその北側の位置だ。

5、6号機は、事故時、定期検査のため運転を停止していて、2014年に廃炉が決まった。その北側の未利用地を地図で探すと、楢無と南久保谷地という地名で自然林の一帯が目にとまる。十分な広さが確認できる。FoE Japan はこの付近を提案したのだろうか。1基10万㎥だから、容積効率が高くなり、汚染水の単位容量当たりの地上タンク置き場面積を従来より圧縮することができる。原子力市民委員会という組織があり、原発ゼロ社会をめざして2013年から調査提言の活動をしている市民シンクタンクだが、FoE Japan と全く同じ提案を2018年にしているのを見つけた。「トリチウム水は大型タンクに100年以上保管せよ」と声明を発表している。非常に説得力のある提案で、中身を読みながら膝を打った。科学的で合理的だ。蒙を啓かされた。

トリチウムの半減期は12.3年。すなわち123年間保管すると、タンク内のトリチウム総量は現在の1/1000に減衰する。10万トンの大型タンクを10基建設し、1000万トンの汚染水を収容し、123年間保管した場合、そのときのトリチウム総量は、2011年の事故発生前に福島第一から海洋放出されていた(処理水の)1年間のトリチウム量を下回ると、原子力市民委員会の専門家は試算している。つまり、海洋放出可能なレベルまで放射線量が下がるのだ。大型タンク1基の建設費用は30億円で、11基で330億円となる。123年間は長いが、コスト的にも私はこれが最もベターな対策案だと確信する。これでよいではないか。汚染水(ALPS処理水)の海洋放出以外の方法については、モルタル固化とか、水蒸気放出とか、いくつか代替案が出ている。

が、面倒な技術的議論をあれこれ言わず、選択肢を広げて検討に時間をかけず、この際、大容量タンク案に絞ってよいではないか。それが私の主張だ。これなら誰でも解決策として納得できる。ポイントは敷地周辺に残りの用地面積があるかどうか。スペースの問題だ。それは航空写真をテレビのスタジオでズームするだけでいい。議論の対立や混乱を避けられる。東電と政府が言う「敷地が足りない」という反論が正しいかどうかは、地図写真を一瞥すれば分かる。個々が自宅のPCで確認・検証できる。空き地を見つけ、置き場面積を計測・推定することができる。この作業と判断に専門家は要らない。思考停止から抜け出すことができ、確固たる対案として国民が自信を持って政府・東電に要求することができる。大事なことは、海洋放出反対派の対案を分散させず一本に纏めることだ。

争点を敷地と周辺の余地の有無にすることだ。始めに海洋放出ありきで、一方的に政府とマスコミと御用論者が撒いている言説に、われわれは騙されてはいけないし、引き摺られてはいけない。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?