第19話

寄子はとりあえず、落ち着きを取り戻すため席に戻った。

「あれ メガネずれてるよっ！百足さん。」と富田が話しかけた。

「・・・アズキルーペ 、かけてみて」

「・・・・。」

その日は、そのまま皆となんとなく会話が噛み合わないまま、また富田らには（今日、百足さん体調悪いんだな）

なんて思われながら1日が終わった。

帰り道、（今日は疲れたからお惣菜買って帰ろ）と思いながら、あれ？今日何曜日だっけ？何曜日？

（土曜日、待ち合わせ？ 服何着たらいいの？）

などと考えながらスーパーをうろうろしていたら、 BGMがなぜか、昔懐かしの1人はアフロヘア、もう1人はグラサンの渋い2人組が歌うロックグループの、都会をテーマに歌っているあの有名な歌謡曲だった。

それからずーっと頭の中をその曲がぐるぐるヘビーローテーションし、

『うらぎりぃ のぉぉ』    のところで、つい無意識にこぶしをきかせて大きな声を出して歌ってしまっていた。

するとちょっと前を歩いていた小柄なおじさんが、後ろから変な人が来たのかと思ったのか、急に小走りに距離を置くように歩き出した。

（あっ）と思ったが、まあいいかと開き直った。

パッと空を見上げてみると、うっすらお月様が見えた。

つづく