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白い胴着に茄子紺の袴をはいて、竹刀を振り回していた中学3年の春。遠征試合に福島県へ入った。そこは星降る里。どの子の垂れにも「星」という姓が白く刺繍されていた。

入部した頃は少なかった剣道部。団体戦は5名で1組。補欠を入れてギリギリの人数だった。それが、遠征バスがパンパンになるほど、にわか女剣士であふれかえった。

到着してすぐ着替えて体育館に集合。挨拶し、そのまま夜間合同練習。そして黙想。翌朝からの試合に弥立ち、選抜メンバーの顔は引き締まる。蕾のような決心と蔓のように鍛え上げた身体は、礼に始まり礼に終わる板の上で、静かにその時を待つ。

たった3分の試合。どこで手合わせしようとも、面の前に誰が立とうとも、竹刀を交え「はじめ」の声がかかる、その瞬間に勝負が決まると知っている。心眼で見ているは、相手の軌道。前の晩の挨拶から勝負は始まっている。

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