Home -1
Background、そのひとの背景、Home、ホームタウン、おうち。故郷ってなんなのよなんなのよなんなのよいったい。
たとえば、両親は中国で生まれて、親戚家族はみんなベトナムに移住して、だけどベトナム戦争があってメルボルンに亡命した。両親の母語は中国語。自分はメルボルンで生まれたから母語は英語か中国語かわからない。家では家族と中国語を話す。だけど学校であったこと、英語じゃなくちゃ説明できないこともある。英語は周りのオージーよりちょっと苦手、かといって中国語も完璧じゃないし漢字もしばしば読めない。一番すきなポップカルチャーは日本の音楽。母語って一つだけ、故郷って一つだけ? 自分の故郷は偽物?
故郷って何か考えるために、すこしずつ色んな人の故郷を拾ってみたくなった。以下は引用、『寺山修司青春歌集』角川文庫より
ふるさとにわれを拒まんものなきはむしろさみしく桜の実照る
ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし
寿命来て消ゆる電球わがための「過去は一つの母国」なるべし
冬鵙の叫喚ははげし椅子さむく故郷喪失していしわれ
群衆のなかに故郷を捨ててきしわれを夕陽のさす壁が待つ
群衆のなかに昨日を失いし青年が夜の蟻を見ており
わが窓にかならず断崖さむく青し故郷喪失しつつ叫べ
ひとの故郷買ひそこねたる男来て古着屋の前通りすぎたり
青麦を大いなる歩で測りつつ他人の故郷売る男あり
さらば夏の光よ、祖国朝鮮よ、屋根にのぼりても海見えず
かなかなの空の祖国のため死にし友継ぐべしやわれらの明日は
冬の斧たてかけてある壁にさし陽は強まれり家継ぐべしや
畳屋に剥ぎ捨てられし家霊らのあしあとかへりくる十二月
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや
いま欲しいもの、「家」
されど九二なき家もなき
祖国喪失
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