ベトナム航空でホーチミンへ
ついにその日がきた。初海外へ出発だ。
バタバタっと出国手続きを済まし、気がつけばもう機上にいた。私は飛行機への苦手意識があり、その分機内に持ち込めるコンテンツを充足させていた。kindle・dbook・プライムビデオ。これだけあれば戦える。
途中でアオザイの客室乗務員の方から機内食を頂いたような気もするが、緊張のためか全く覚えていない。しかし、隣の席の女性に声をかけられたのは覚えている。
私は通路側に座っており、窓側に座っていた女性は度々お手洗いで席を立っていた。極力、トイレで席をゆずることを厭わない姿勢を見せていたつもりだ。紳士たれ。私がプライムビデオを見るのにひと段落し、あと1時間ほどで到着になりそうな頃あいに、その件の女性がなんとも言えない表情で声をかけてきた。ど、ど、どうした?飛行機で女性に声を開けられた経験のない私は一瞬戸惑った。しかもベトナム人女性のようだ。言葉は通じるだろうか?
「あと。どれぐらいで着きますかー?」ややイントネーションに特徴はあるものの、流暢な日本語であった。私は毅然とした態度で「あと1時間ぐらいで着きますよ」と爽やかに伝えた。いや、伝えたつもりだ。
女性は笑顔で「そうですかー。私、じっと黙ってるのは苦手なんです。」と笑顔でおっしゃられた。油断はできない。外国で気さくに話しかけてくる人は怪しいのではないか。私は紳士に少し身構えた。
「私、日本のスーパーで、マグロの解体をしていまーす」おや?
話を聞いていくと、20年前に日本のスーパーに実習生で実習をし、その時に知り合った日本人の男性と結婚し、今は 日本に住んでいるとのこと。今回の渡航の目的は何か訪ねると「趣味でーす」と笑顔だ。それからはなんとはなしに、平穏に雑談をすることができた。し、紳士たれ。
「ベトナムが見えてきましたー」女性に窓から写真を1枚取ってもらった。
おおっ、ベトナム!これはメコン川の支流だろうか。
ここは間違いなく日本ではない。そしてyoutubeでもない。自分の目で見ている景色なんだ。初海外をかみしめつつ、飛行機は着陸した。