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田舎道の先のSTEVEと天の川


https://apod.nasa.gov/apod/ap230927.html

田舎道の果てから立ち上り、天空に天の川と壮大なX字をなしている光。こんな光景を見たら、撮影者と同じように立ち止まり見つめるでしょう。

では、この光はなんであるか。
帯状のオーロラ?
いや違う。STEVE、スティーヴという大気の発光現象だ。
と言われても、依然としてなんじゃそりゃでしょう。

STEVEとオーロラの外見上の違いは、以下のようなものがある。

STEVEは、オーロラよりも赤道寄りの地域でみることができ、イギリス、カナダ、アラスカ、アメリカ北部、ニュージーランドで観測が報告されている。

  • STEVEは、東西方向に何百km、何千kmにもわたって細長く伸びてみえる。

  • STEVEの発光は、紫色を基調とし、時には緑色のピケットフェンス状の光を伴って、概ね20分から1時間程度で消滅する(オーロラは、緑を基調に赤や青が目立ち、数時間継続する)。

  • STEVEが観測されたときは、必ずオーロラも出現している(オーロラには、スティーブを伴わないものがある)。

  • STEVEは、10月から2月の間は観測報告がなく、NASAはスティーブが特定の季節に起こる現象かもしれないとしている。

へえ、という感じだ。
もう少し、実態を調べると

スティーブが発生している領域では、西向きに最大5.5km/sという高速でイオンが流れ、領域内での電子温度は最高で6,000Kに達する一方、電子の密度は2-3割に低下している。

これらの特徴は、スティーブが、電離層の狭い緯度幅にみられる西向きの高速イオン流「サブオーロラ帯イオンドリフト(Subauroral Ion Drift、SAID)」に関係した現象であることを示唆している。ーウイキペディアー

とのこと。

スティーブは幅およそ25kmで東西に伸びる高温気体の帯で、地上300kmでの温度は3,000度も上昇し、流速はスティーブの外側の気体が10m/s程度なのに対し、スティーブ内は6km/sと桁違いに速いのだそうだ。

ところで、このSTEVEだが、もともとはアルバータ・オーロラ・チェイサーズ(Alberta Aurora Chasers)という、Facebook上のオーロラ撮影者グループに参加するオーロラ撮影者達が発見した。

彼らは、最初プロトンアークと呼ばれる陽子のオーロラ現象だと考えていたのだが、陽子オーロラは肉眼で見えるものではないということが分かった。

そこで、オーロラ撮影者の一人で、アルバータ・オーロラ・チェイサーズの管理者を務めるラツラフは、この現象がプロトンアークではないと知ると、映画"Over the Hedge"(邦題『森のリトル・ギャング』)中で、突如現れた生垣の正体に悩む動物達が、生垣を"Steve"と呼ぶことにした場面に着想を得て、この発光現象を"Steve"と呼ぶことを提案した。

彼は、このSTEVEという名前は正式な名前が決まるまでの仮の名前のつもりであったのだが、物理学者やNASAが"Sudden Thermal Emission from Velocity Enhancement(速度向上による突然の熱放出)"をSTEVEとすると決定したので、正式にSTEVEとなったという。

アマチュア、えらい。







STEVEと天の川が田舎道を渡る
画像のクレジットと著作権テレサ・クラーク
説明すべての道がSTEVEで終わるわけではない。1週間前、ある天空愛好家の旅は、ヒューロン湖上空のオーロラを撮影するという目標から始まった。カナダのオンタリオ州の田舎町をドライブしていたところ、予報では予想外に早く始まったため、写真家は風光明媚な大湖に到着する前に立ち止まることになった。オーロラ画像は北の方に向かって撮影されたが、海ではなく陸の上だった。オーロラの第2ラウンドを待っている間、西に奇妙な光の帯があることに気づいた。写真家と友人たちは徐々に、この西の帯が珍しいタイプのオーロラである可能性が高いことに気づいた。しかもこのSTEVEは、天の川銀河の中心帯と絡み合いながら、ちょうど田舎道の終点付近で地平線と交差しているように見えるのだ。この宇宙的なXをカメラに収めた後、カメラマンは立ち止まり、平凡な風景の中に非凡な美しさを見つけるという思いがけない素晴らしさに感謝した。

STEVE and Milky Way Cross over Rural Road
Image Credit & Copyright: Theresa Clarke

Explanation: Not every road ends in a STEVE. A week ago, a sky enthusiast's journey began with a goal: to photograph an aurora over Lake Huron. Driving through rural Ontario, Canada, the forecasted sky show started unexpectedly early, causing the photographer to stop before arriving at the scenic Great Lake. Aurora images were taken toward the north -- but over land, not sea. While waiting for a second round of auroras, a peculiar band of light was noticed to the west. Slowly, the photographer and friends realized that this western band was likely an unusual type of aurora: a Strong Thermal Emission Velocity Enhancement (STEVE). Moreover, this STEVE was putting on quite a show: appearing intertwined with the central band of our Milky Way Galaxy while intersecting the horizon just near the end of the country road. After capturing this cosmic X on camera, the photographer paused to appreciate the unexpected awesomeness of finding extraordinary beauty in an ordinary setting.

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