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宇宙を発見す !


https://apod.nasa.gov/apod/ap231006.html

このあまり綺麗には思えない、白黒の写真はなんであるか。
1923年10月6日、天文学者エドウイン・ハッブルが、アンドロメダ銀河を写した写真乾板のネガのデジタルデータです。

ネガであるから、光っている部分は黒く、暗い部分は白くなっている。
真ん中の黒い部分は、アンドロメダ銀河の本体、右上部分に、あまり上手でない字で、Nと書いてあるのは、新星で、3つある。

そして、一番上のNは赤字でばつ印をつけ、VER !と書き直してある。

そうです、赤字でVER!。
VERは何か、variable star 変光星の意味です。
尚且つ、ハッブルがこの時VERという印をつけた変光星はセファイド変光星(Cepheid variable star)だったのです。

この時、
ハッブルは宇宙を発見したのです。

どういうことか。

セファイド変光星というのは、脈動変光星という部類に入り、その変光周期が長いほど絶対光度が大きいという性質がある。つまり、変光周期で、その絶対光度がわかるのだ。

絶対光度
恒星の見かけの光度あるいは見かけの等級は地球からその星までの距離に依存するから,星の真の明るさを比較するには,星をすべてある一定の距離におくことが必要である。

この距離として,10パーセクすなわち 32.6光年をとり,星を地球からその距離においたとき示す光度をその星の絶対光度あるいは絶対等級という。

太陽の見かけの光度は-26.8等であるが,その絶対光度は+4.8等にすぎない。また全天最輝星のシリウスとそれに次ぐ明るさのカノープスの見かけの光度はそれぞれ-1.5等および-0.7等であるが,絶対光度はそれぞれ+1.4等および-4.7等となり,実際にはカノープスのほうがシリウスよりも約 250倍明るいことがわかる。

コトバンク

変光周期が分かる。そのセファイド変光星の絶対光度がわかる。そうすると、見かけの光度と絶対光度を比較することによって、その星までの距離がわかる。なぜなら、基準となる星より遠くになると、距離の2乗に比例して光度は小さくなるからだ。

ハッブルは、この時、アンドロメダ銀河(当時は、アンドロメダ星雲と呼ばれていた)の中に、このセファイド変光星を発見したのだ。

ということは、アンドロメダ銀河までの、距離がわかる!
そして計算してみると、アンドロメダ銀河は、我々の天の川銀河の中にある星雲ではなく、遥かに遠くにある別個の銀河だとわかったのです。

これは何を意味するかというと、この宇宙は、我々の天の川銀河に収まるようなものではなく、遥かに広大なものだということです。

今では、我々は宇宙が広大であることについては、常識として受け入れていますが、当時、宇宙の大きさについて大討論(Great Debate)と言われる、一大論争が天文学の世界で起きていたのです。

宇宙というのは、天の川銀河のことである(ハーロー・シャプレー)
という考えと、いや
天の川銀河は数ある銀のうちの一つで、宇宙はもっと広大である(ヒーバー・カーティス)
という2つの考えが対立していたのです。

宇宙とは天の川銀河のことであるという主張の根拠は
・アンドロメダ星雲(当時星雲と考えられていた)が、天の川銀河の一部でなく、独立した銀河だとしたら、その距離は、10^8光年(1億光年)のオーダーになる。

・風車銀河の回転速度の計測に成功したという、天文学者は、もし風車銀河が独立の銀河だとしたら、その腕の自転速度は光速を越えることになる。

・アンドロメダ星雲で、新星が一時的に星雲全体を上回るエネルギーを出している。これが独立の銀河だとすると途方もないエネルギーで、あり得ない。というようなものであった。

一方
天の川銀河は数ある銀のうちの一つで、宇宙はもっと広大であるという主張の根拠は、

・アンドロメダにある新星は、天の川銀河にある数より多い。もし、アンドロメダが天の川銀河の一部であるとすると、銀河のある部分に他の部分より多く新星が存在することになる。

これは、アンドロメダが独自の特徴的な年齢と新星発生率をもつ別個の銀河である証拠である。
というものでした。

さて、この議論を当時(100年ほど前)に聞いたら、皆さんは、どう考えられるだろうか。

私だったら、シャプレーの方に与したかなと思う。


https://hubblesite.org/contents/media/images/2011/15/2851-Image.html

これは、ハッブル宇宙望遠鏡で捉えたアンドロメダ銀河。
ハッブルが当時撮影した部分は、白枠の部分。
ハッブルが使った望遠鏡は、当時としては世界最先端のものだったのだが。

いや〜、技術の進歩はすごいものだ。


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