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難読文章読解実況中継 ① 信託法(信託の変更・・・149条1項)

難読文章読解講座を再開してみようと思います。
我々の世界では、文章を読み解くというのは、必須のスキル(能力)です。

全く文字情報なしで、生活することも可能と思いますが、それでは、見える世界、認識する世界がかなり限定されたものになります。
もちろん、この場合の世界というのは、地理上の世界に限定されません。

それでもいいという人がいるかも知れませんが、それは、他人に支配され、誘導されて生きることを受け入れ満足することと、ほぼ同じだと、思います。(その他人も、いい人ならいいが、とんでもない奴かも知れない。それでもいいというなら、どうぞ)

また、世界が、世界に対する認識が、などという前に、日常生活をする上でも、文章を正確に読解する能力がなければ、家電製品のマニュアルさえ(あれは、分かりにくい)、満足に読めず、生活に支障をきたすことさえあります。


この講座は、難読文章と言われる、法律の条文を私が、どのように普段読解しているかの実況中継のようなものです。

文章読解法の書籍は、沢山あり、それぞれ参考になりますが、それを一読しただけで、突然文章が読めるようになるというものではありませんし、また、そんな方法もないと思います。

むしろ、基本的な読み方(論理的な)をベースに、悪戦苦闘して、読解力はつくように思います。
したがって、私が、悪戦苦闘する様子は、案外参考になるのではないかと、思うものです。

このシリーズ(続けるつもりですが)を読まれる方は、読み流すのではなく、一緒に考え、時には紙に書くなどして、臨まれると、効果があると思います。

選ぶ文章は、法律の条文です。
論理的に作られているし、読解力の鍛錬の過程で、法律知識も身につくという、対象としては、非常に有用でもあろうと思います。

また、文章は書かれている対象、あるいは、著者に対する興味のある無しや好き嫌いによって、読む人にどうしても先入観やバイアスがかかってしまいます。

しかし、法律の条文に対しては、好きも嫌いもない(興味もないかも)、そこにあるだけですので、偏見や先入観なしに、文章そのものとして、読むことができ、読解の練習には、最適かとも思います。

また、この読解講座には、法律の知識は必要ありません。全て、国語力の問題として捉えます。したがって、条文の解説は、原則致しません。

なお、選ぶ法律は、適当です。
私が、面倒臭い(読解しにくい)と思うものを選んであります。
当然、順不同です。

それでは、始めましょう。
信託法の信託の変更に関する条文です。


(関係当事者の合意等)
第百四十九条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。

まず初っ端、「信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。」

この文章を法律家でない人が、初めて読んだとすると、「信託」「委託者」「受託者」「受益者」が、何かわからない。もしかしたら、「合意」もわからないかもしれない。

実際のところ、「合意」は、わかっているようで、はっきりわかっている人は、案外少ないかもしれない。少なくとも法律的意味においては。
一応これは、先に説明しておこう
法律的な意味での「合意」は、当事者の全員の意思が一致(合致)すること

文章中に分からない言葉があると、途端に頭の働き悪くなるのは、誰しも経験することだと思う。人間の頭脳は、分からないことを必死に解ろうとするようにできている。

だから、分からない言葉があると、その言葉を解ろうとすることに意識がいってしまい、文全体の意味とか、論理構成とかを分析する作業に意識を集中できなくなる。つまり、文章を読解しにくくなる。
・・・のではないかと私は思っている。

この点を軽視、あるいは、そもそも気づいていない人が多いのではないだろうか。

では、文中に、分からない言葉・分からない概念が出てきたらどうすればいいか。

普通に考えれば、調べればいいじゃんとなるが、それは後でいい。
いちいちやっていたら、途中で挫折するのがオチだ。(いずれは調べて理解するのですよ。)

代わりに、言葉を記号化する。
どういうことかというと、例えば、「信託」◯やAあるいは数字に置き換える。
そうすると、記号には意味がないので頭が悩まなくなる。

今回は面倒臭いので、番号にする。こんな具合だ。
「①信託の変更は、②委託者、③受託者及び④受益者の合意によってすることができる。」

これを読むと、「①の変更は、②、③及び④の合意のよってすることができる。」

構造は、何かを変更するには、何かの(誰かの)合意があればできるのだということが書いてある。

ここまで、わかった後、①〜④を戻して、読む。
信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。」

今度は、依然として知らない言葉であっても、頭に入ってくる。(不思議でしょう。)

信託というものを変更するには、委託者・受託者・受益者(何かわからんが)とかが合意するとできるのだなとわかる。

次は
「この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。」

ちょっと、見やすくする。
「この場合においては、
変更後の 信託行為の内容を
明らかにしてしなければならない。」

だいぶ頭の負担が軽くなった。

この場合だから、前の文章のことだ。信託を変更した場合だ。
どう変更したか明らかにしておけと書いてある。
これは義務だ。「しなければならない」と書いてあるのだから。
まあ、問題なかろう。・・・

ある!

明らかにする方法については、何も書いてないのだ。
まあ書面にして残しておくくらいは、普通考えるが、別に、書面でなくてもいい。録音・録画しておいてもいいことになる。
・・・条文上(文章上)そうなるでしょ。・・・
そう読むのです。そうとしか読めないもん。

最後に、通しで1、2度読む。
(関係当事者の合意等)
第百四十九条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。

見ただけで、嫌になった文章がさほどもなくなっていることだろう。
今回はここまで。



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