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難読文章読解実況中継 ② 信託法(信託の変更・・・149条2項)

続いて、149条2項。

2 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

・・・・
まあ、めげずに取り掛かりましょう。
所詮人間の書いた文章です。

「前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。」

「前項の規定にかかわらず」・・前項というのは、第1項、つまり委託者、受託者及び受益者の合意によって信託を変更できる場合のことを指す。
そして、「かかわらず」だから、ここから、前に言ったことと違うことを言うのだとわかる。

さて、どう違うことを言うのか、興味津々(でしょ?)。

「信託の変更は、①次の各号に掲げる場合には、②当該各号に定めるものによりすることができる。」

記号化するのは、知らない言葉に限らない。
今回の場合のように、長ったらしくて、一度読んでも何のことか、わからないようなものも頭の負担になるので記号化する。
そうしないと、頭がモヤッとして、ああいやだ、面倒臭い(頭が働かないものに対しては、面倒臭く感じのだ。)、考えたくないとなる。

「信託の変更は、①の場合には、②に定めるものによりすることができる。」

ほう、前の項では、委託者・受託者・受益者三者の合意で変えよと言っていたが、そうでなくてもできる、ケースを定めているのだな。

そのケースというのが①の場合なのだ。
①は、次の各号に掲げる場合だ。
次の各号というのは、漢数字の一、二の場合だ。

一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 

一は、まあ、大体わかるが、「目的に合うこと」ではなく、「目的に反しないこと」と、なんかまだるっこしい書き方になっている。
どう違うんじゃ!

「目的に反しないこと」は、目的に決めてないことでも、趣旨に反していなければ、OK。
ということなのだ。

二は長い。
何度も言うが、長い文章は、長いだけで、頭の負担になる。
なぜなら、長いと読んでいる途中で、初めに何を書いてあったのか、わからなくなるからだ。
まあ、記憶の問題だが、自分の知らない分野のことだと、特にこれが問題になる。そこで短く見やすくする。

二 信託の目的に反しないこと
及び
受益者の利益に適合することが
明らかであるとき 

これでわかった。
一との違いは、受益者の利益に適合することが条件に加わった。

ちなみに、及びというのは、andのことだ。かつ、と言ってもいい。
だから、条件が加算されることになる。

そして、一、も二も、条件に明らかであるときという限定がついている。何となくいいんでないのでは、アカンということだ。
誰がみても、同じ見解になる、当然でしょうと思うようなことということだ。

そして、②に定めるものとは
一 受託者及び受益者の合意
二 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

一は、及びと合意という言葉があるから、平たく言えば、両当事者が同じ意見で納得した時ということだ。

二は、主体が受託者だけになっている。
委託者も、受益者も関係なく、受託者だけでできるということだ。
ただし、書面又は電磁的記録によってせよとなっている

ここで、?と思うことになる。
二では、書面又は電磁的記録によって意思表示しなければならないとわざわざ書いてあるということは、一では、書面又は電磁的記録をしなくていいのか。

つまり、書面も電磁的記録もいらないのか。・・口頭でも何でもいい・・のかい。
えっ! 本当?
でも、条文を読む限りは、そうなる。

「この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。」

この場合というのは、今まで読み解いてきたケースの場合ということだから、問題はなかろう。

「受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。」

長い!
ああ〜いやだ、いやだ。やめて、YouTubeでも見たくなる。
そこで、見やすくしてみる。

受託者は、
第一号に掲げるときは 委託者に対し、
第二号に掲げるときは 委託者及び受益者に対し、
遅滞なく、
変更後の 信託行為の内容を 通知しなければならない。

これでわかりやすい。
誰が、何をしなければならないかが書いてある。
受託者は、・・・通知しなければならないとなっている。
受託者の通知義務ですな。だって、ならないと書いてあるもん。

第一号の時とは、受託者と受益者が合意した時だから、仲間に入れてもらえなかった、委託者に通知。
第二号の時は、受託者が単独でやったのだから、委託者と受益者に対して通知する。まあ、順当でしょう。

ところで、通知なんだけど、やり方は書いてない。

通知
ある事実や自分の意思を他人に知らせること。

ということは、別に書面等でしなくても、口頭でもいいということになりますよね〜。

ええい、何を言うておるのか。
口頭だと言った言わないの問題が生じるかもしれんじゃないか、書面でするのが当然だろう。そんな杜撰なことを法律家が言うのか、と言う声も聞こえてきそう。

もちろん、私が当事者だったり、相談を受けたりしたら、当然書面で残しますし、そうするようアドバイスをしますよ。
内容証明郵便とか使ってね。

でも、これは読解の問題。
文章上は、こう読むしかないし、読まなければならない。


同じように、信託の目的に反することはどうなんだと問題がある。
そりゃダメに決まってだろう。目的に反しない時OKなのだから、当たり前じゃないかと思うかもしれない。

しかし、ここで書いてあるのは、目的に反しないとき、受託者・受益者共同して、あるいは単独でできることを書いてある。
・・・そうだけど。

じゃあ委託者も参加して、三者でやるには、制約はないんじゃない?
目的に反することや受益者の不利な変更もいいんでないのとなる。
つまり、そう言うふうに読まなければならない。国語上は。

そう考えて、第1項を読むと、書いてある!
第百四十九条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。

つまり(つまりが多いが許されたい)、委託者、受託者及び受益者の合意があれば何でもOK。信託の目的に反する行為、とどのつまりは、信託の目的の変更もできる、と考えるべきなのだろう。

さて、ここまでで、文章の個々の構成要素が理解できたので、文章を通して1、2度読む。

2 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

スッと頭に入ってくるはずだ。
覚えなくてもいいが、意味を理解する。と言うことは、イメージ化する。

今回は、ここまで

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