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適格消費者団体・・・なんだそりゃ

近代法は、個人の平等を前提にしている。
平等だというからには、優っている人、劣っている人という差をつけない。

人格において平等だという。
当然、どんな人も対等な存在として生きている、ということになる。

これがいかに重要な価値基準であるかと言うと、そうでない社会を考えてみればわかる。

生まれながらにして差がある、と言うことは親や生まれた地域、人種等によって差別される社会だ。
ある者は、王や貴族とし、他の者は平民や奴隷という社会があったことは、歴史で学んだだろう。

出生時に差別されなくても、例えば、IQや何らかのテストによって、1級市民、2級市民、3級市民等区別され、それぞれ職業や住む場所、社会活動できる範囲、あるいは婚姻相手も制限される社会を想像してみればいい。

全くたまらんと思うだろう。
歴史は、この差別をなくするために、多くの血を要求したことも、学んだだろう。
(しかし、現実には見えない壁として、これに似たような状態ができているところもある。)

したがって、社会生活をする上で、他人と関わり何らかの権利義務を負うとき(契約をするとき)は、互いに「合理的な判断ができ、それに基づいて行動できる」人間同士であると言う前提で、法律はできている。

合理的な判断ができ、それに基づいて行動できる人間
入手可能な情報に基づいて合理的な選択を行い、どのような状況においても積極的に自分の利益を最大化しようとし、一貫して自分の損失を最小化しようと行動する人間。
 
はっきり言って、こんな人間は存在しない。
もしいたら、隣人や知人にしたくない。私は。

しかし、現実には、能力や知識、体力等、また財力なども差異が存在する。社会生活をする上で、平等とは言い難い現実がある。

じゃあ、どうする。
弱者を保護するか。
保護するというのは、特権を与えることだ。
人によって、持ちうる権利に差を設けることだ。

いや、それは我々の先祖が命を賭して打破した旧態に戻ることにつながる。それは絶対にダメだ。
とまあ、こういうジレンマがある。


もっとも、人間が考える差別の基準の設定が合理的ではなく、且つ特権を与えられた者が、その権利の行使を利己的・恣意的に行い、人類のためにならないという残念なことにも問題がある。

さりながら、現実に問題が生じているのを放置しておくわけにもいかない。

そこで、一定のパターンとして生じているものには、対処しようということで、未成年者や認知能力が衰え判断能力が衰えたと医学的に認定できるような人に成年後見人をつけ、契約に、取消権や同意が必要等の一般的な法の保護を設けてある。

また、各種のいわゆる業法、(例えば貸金業法・証券取引業法等、特定の業種の事業を行う者を対象にしている)で、その行動規範を設け一般消費者等の保護をしている。

しかし、未成年者や被後見人等でない、一般の人には、この保護がない。
ちゃんとした、まともな大人だから自分で考え合理的に行動するべし。ということだ。

しかし、しかしだ、詐欺や脅迫といった刑事事件にも該当する行為はもちろん、悪質商法とか詐欺紛いと言われるものもある。また、そこまであからさまでなくとも、こりゃ、間違えるは、思い込むは、というようなものがある。

これらについて、一般的解決は、被害を受け人が裁判所に訴えて被害回復を図るという方法だ。
しかし、被害額が少額だったりすると訴訟費用の方が大きくなったりして、いきおい泣き寝入りすることになる。

また、仮に、損得抜きじゃ、許せん! と裁判をして勝ったとしても、それは、その気概のある人だけの解決だ。
悪徳業者は、依然として泣き寝入りするであろう、大量のカモである消費者を食い物にし続ける。

また、これは意外と気づいていないかもしれないが、一般の消費者は、自分が何か酷い目にあっても、そもそも、これはおかしいと自分が主張できることなのかどうかわかっていないということもままある。

約束したのだから、理不尽でも受け入れざるを得ないと思ったりする。(いやいや、そんな条項は無効だし。)

また、契約書の末尾に小さい字で書いてあった。読まなかった自分が悪い、とか考える。(小さい字で書いてあるのは、読まれないようにしているのだが。)

こういうことは、残念ながらある程度の法的知識がないと判断できないことがある。

だったら、法律家が何とかすればいいではないか、それが社会的な責務じゃろが、と言いたいだろう。

しかし、法律家は、何もできない。
なぜなら、法律家は、依頼人から具体的に依頼を受けた事件しか扱えないのだ。

おかしなことをしていると分かっていても、自分の依頼人に関わらない限り、裁判所に訴えることも、やめろということもできない。これは、当事者適格という概念だ。

せいぜい出来るのは、社会運動を起こし世論の変化を促すことくらいだ(これも、とても大事だし、また大変な労力を要し、困難な道でもあるのだが。)。

これは、致し方ないことです。
いや、致し方のないことだった。

ん? 過去形?

そうです。
消費者契約法という法律ができたのです。
この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為を取り消したり、無効にする等により、消費者の利益を保護しようとする法律です。

その中で、適格消費者団体という団体を作ることができるようになったのです。(内閣総理大臣の認定が必要です。

この適格消費者団体の何がすごいかというと、団体として原告になることができるのです(団体訴訟)。

上に述べたように、日本の法律は、自分に関係することしか裁判所に持ち込むことができないのが原則なのです。
他人が酷い目に遭っていても、その他人に変わって自分が裁判所に訴えることはできない。これを原告適格がないと言います。

しかし、適格消費者団体は、これができるのです。
何か問題のある事業者がいたら、団体そのものに何ら被害等がなくても、一般消費者が迷惑を被っていると言って、裁判所に訴えることができるのです。

裁判所に訴えることができるということは、法的な権利の行使ができるということです。
判決が出て、相手がその判決に従わないときは、強制執行等国家権力を使って強制することができる、ということです。

乱暴な言い方をすれば、もうおかしいじゃない、不当じゃないと、外野で騒いでいなくても良いということです。

もちろん、いきなり裁判するとかしないで、これは不当ですからおやめくださいとか、対応を変えてくださいとかいう「申し入れ」等を先にします。

それでも、相手が対応を変えてくれないとなると、差し止め訴訟を起こせる。
勝訴すると、当該行為について、法的に差し止めを求めることができる。法的にというのは、法的強制力を行使してということです。

さらに、特定適格消費者団体という、適格消費者団体よりさらに厳しい要件をクリアした団体になると、なんと、損害賠償請求までできる。

日本全国の消費者に代わって(個別に委任を受けなくとも)、損害賠償請求(被害回復)ができるのです。
そして、勝訴して賠償金を得たら、被害者に分配するというシステムです。

そして、さらにすごいのは、この団体の構成員になるのには、資格制限がないということです。

法律専門家でなくても、そもそも法律の素養が全くなくても会員になれます。

(もっとも、悪徳業者が組織の内部に潜入して、どうかしようとかいう場合は、拒否しますし、また、仮に内部に入り込んでよからぬことをしたような場合は、除名しますが。)

一般の普通の消費者が、会員になることができるのです。
会員になって、これはおかしいのじゃないか、これは不当なんじゃないかと思うことを団体に情報提供すれば、検討する。検討しておかしいとなったら、団体は動きます。

つまり、一消費者がおかしい・不当だと感じ、是正すべきだと思ったことを団体を使って(自分も団体の一員ですが)、ダイレクトに直させることができるのです。

それも、個別の事例としてではなく、ビジネスモデルそのものを直させることができるのです。
何度も言いますが、法的強制力を持ってです。

これは、我々消費者がおかしいと言うことを主張し続け、マスコミ等で取り上げてもらって世論形成をしたり、あるいは参政権を行使して、自分の考えを議員を通して立法化することより、はるかに直接的かつ迅速・容易です。

ついでに言うと、何かの団体に所属すると、何かとその団体の活動に駆り出されたりすることが、よくあります。
しかし、適格消費者団体の会員となったとしても、そのような活動をする必要は、全くありません。

もちろん、消費者部会の部員になるとか、いろいろな研修会に参加するなどはありますが、それは自分が興味があれば、参加して知識を高めればいいのであって、強制はもちろん、参加しないからと言ってペナルティ等は一切ありません。

義務は、年会費を納めることだけ。
情報提供は、あったらしてくださるとありがたい。
それだけです。

そんなんでいいのと思われるかもしれません。
いいのです。
なぜなら、適格消費者団体は、営利を目的としていません。

したがって運営の基盤は、会員の会費です。
会費を納めることによって、団体の運営を支援してもらえることだけで大助かりだからです。

ちなみに、理事、部会員等、全て無報酬です。
差し止め訴訟も、自腹です。

実際、会員は、弁護士・司法書士・消費生活相談員・学者の他に、一般の消費者が会員になっておられます。

むしろ、一般の消費者の会員が、それこそ消費者目線で、これは、と思うことを提起してくれることが大事なのです。

もちろん、提起された問題のついて、全て対応できるものではありません。具体的な個別案件を解決するものでもありません。つまり、弁護士や司法書士に頼む代わりに、団体でやってくれというようなことはできません。

また、いわゆる単なるクレーム(言いがかり)的なものも取り上げません。
そのため、提起された問題については、専門部会という、弁護士・司法書士・消費生活相談員・学者で構成された法律専門家による部会で、取り上げるべきことかどうか、検討します。

ついでに言うと、適格消費者団体は、事業者を敵視する団体でもありません
商取引が、公正になされるように、動いているだけです。

商取引が公正になされると言うことは、消費者にとってはもちろん、事業者にとっても、結局は益になることです。
大体、悪徳業者を排除すること自体が、その業界の発展にもつながると思っています。

適格消費者団体は、全国に23あります。
よし、と思った方はぜひ参加していただきたいと思います。

全国どこの団体でも、加入できます。
住所地にある団体に限りません。
外国に住んでいても構いません。
日本国籍でなくても構いません(国籍条項はなかったと思う。)。

それでも、どこの団体の加入していいかわからない、ちょっと気後れすると言うような人は、私が所属している、適格消費者団体に加入されるといいです。

私は、そこで、副理事長をしております。
手前味噌ではありますが、とてもいい団体です。

よくありがちなのが、この手の団体で、誰でも加入できます。みんな平等ですとうたいながら、その実、見えない壁とでも言うような、暗黙のしきたりがあって、知識がないもの等が肩身の狭い思いをさせられると言うことがあります。
私がもっとも、嫌うものの1つです。

断言できます。
私のところは、そんなことは一切ありません。
素人の疑問や意見は大歓迎です。

大体、初心者や素人の素朴な疑問に素人にわかるような言葉で説明できないのは、説明する当人がよく分かっていないのです。このことは、我が団体の若い弁護士・司法書士は肝に刻んでいると思います。

また、変な壁ができないよう、私はいつも細心の注意を払っています。

実際議論は、活発です。
かといって、自分の説に固執するなんてことはしない。
是々非々をすんなり受け入れる。
よくできた人達だといつも感心しています。

わからないことや、疑問に思うこと、あるいは、団体の具体的な事案の説明等なんでも、お気軽にお聞きください。

ちなみに、年会費は1口5,000円です。




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