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甘やかされて育つと長生きしない    #3 樹木たち・・・

木というのは、根から水と養分を吸い上げ、日光を葉で受け光合成をして糖分等を作って生きている。

だったら、水も日光もふんだんに手に入るように、周りに邪魔になる木を植えず、あるいは間隔おいて木を植えればどんどん大きくなるとのではないか、と考えるのが普通だと思う。

しかし、そうはいかない。
正確にいうと、最初のうち、つまり若木のうちは、確かに育つ。
しかし、こうやって育った木は長生きしないという。
つまり、数十年、あるいは100年くらいは、これでいい。

しかし、木にとって、数十年、100年というのは、人間で言えば、学校を出たくらいの年齢にあたる。樹齢数千年生きる木にとっては、まだまだ未熟な若造、子供でしかない。

この様な育ち方をした木は、立派な大人になることはできずに、朽ちてしまうという。

なぜそういうことになるのか。
大きく分けて3つの問題がある。
・ 木の生育の問題
・ 生育環境の問題
・ 単独で生きることの問題

木の生育の問題
水も日光も十分あるところでは、木はどんどん育つ。
いいじゃ無いか、何が問題なのだと思うだろう。
しかし、このようにして育った木は、内側の細胞の大きい、中身に空気が入った柔らかいものになってしまう。

その結果、病気にかかりやすく、また、害虫や菌類に侵入されやすい木になってしまい、長生きできない。

反対に、森の中の若木は、親木たちが、樹上に聳え、日光を遮断している。
従って、その成長は遅々としたものになる。数十年経っても、低く細い木のままである。

しかし、その遅々とした、成長によって、硬く密度の高い細胞ができている。いわば徹底的に鍛えられた、細マッチョのようになっている。
基礎体力が、全然違うのだ。


生育環境

木というものは、本来群生するものなのだ。
群生して森林を作って、生育する。これが自然状態なのだ。

森というのは、日光が当たらず、風通しも悪い。
だから、薄暗く、湿気が多い。
その結果、土は湿って、柔らかく腐植土に富むものになる。

これが木にとって、好ましい環境なのだ。
また、このような環境で初めて、木の生育に大きな影響を与える菌類も繁殖する。

このような環境だと、森は一定程度気温の調節作用をし、暑くなりすぎず、寒くならないようになる。真夏でも、同じ地域でも、森とその他では、10度くらいの差が出るという。

反対に、孤立した木は、このような環境の恩恵を受けられない。

単独で生きることの問題
木は、森を形成していると、お互いにネットワークを形成して、助け合う。
森といっても、土の肥えたところも、岩場に近いようなところもある。
また、日の当たるところも、あまり日の当たらないところもある。

当然、個々の木が光合成で生産する養分の量に差が出てくる。従って、個々の木の成長に影響が出てくる・・・と思うだろうが、そうはならない。
大体同じように成長する。???

どうしてこんなことが起きるかというと、光合成の生産性が高い木は、低い木に、養分を与え、光合成の生産性の低い木は、当然のこととして、これをもらっている。つまり、森で群生する木は、お互いに、根を通して養分を分け合って、全体的に同じようになるようにしているというのだ。

また、病気になった木にも、同じように周りの木が養分を与え、助けるという。

そして、木は森を形成して、全体として生き延びる戦略をとっていると思われるのだ。

当然、孤立した木は、この相互扶助とでもいうべきシステムの恩恵を受けられない。天候不順などの外的環境の悪化、あるいは、病気や害虫などによって、弱っても、助けてくれるものがいない。

木の寿命は長い。
この長い時間の間には、いろいろのことが起きる。
その時、基礎体力が無かったり、仲間の助けがなかったり、暑さ寒さ水不足が直撃する環境にあったりすると、そこで、木の寿命は尽きてしまうことになるのだ。

とまあ、そんなわけで、甘やかされて育った木は、長生きできないのである。

木の話だが、なんか、人間にも当てはまるような感じですな。


このシリーズは、「樹木たちの知られざる生活」を読んでまとめているものです。









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