見出し画像

関西人は関西人と遭遇すると、ちょっと嬉しそう

「え〜! ほんまに? そうなんや〜!」
それまで標準語で喋っていた人が、声をワントーン上げて、急に関西弁で喋り始めることがある。関西出身の人が、東京で関西人に遭遇したときだ。


「関西出身」という言葉を皮切りに、二人の距離はぐっと縮まる。まるで地元の友達に会ったかのように嬉しそうなのだ。急にくだけた物言いに変わるのは不思議な現象である。たとえ、海をまたいでいようと、車で何時間かかろうと、「関西」という一括りで人はまとめられるのだ。

画像1


 これが関東出身でも成り立つかというと、そうではない。たとえ大阪で東京出身の人に会っても、
「へ〜、そうなんですね。」
ぐらいの感想しか持たない。無理やり話を広げて、東京のどの辺なのかと聞くのも注意が必要だ。東京出身といっても、23区内とそれ以外では、もはや他県ほどの隔たりを持つ。同郷の絆は、同じ都民でも希薄なのだ。


 かく言う私は、生まれたのは間違いなく香川県なのだが、小学生時代は東京、中学生時代は香川、高校は東京へ……、という風に、行き来を繰り返してきたため、出身地まいごである。さぬき弁も下手だし、標準語もイントネーションが少し変と言われる。どちらも故郷と言い切れない、というハーフのような悩みを持つ。

画像2

もし、完全に生まれも育ちも香川であったら、四国出身の人だけにはあの一瞬で距離が縮まる魔法を使えたのだろうか。


「どこ出身なん?」
と香川出身の人に聞かれた際に、
「あ、香川県です。でも東京でも住んで……。」
と答える声はどこかよそよそしい。
 あの一瞬で距離が縮まる魔法を、私も使ってみたいものである。

おわり。

サポートしていただくと、次の工作記事がとっても豪華になります。