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 世の中では鬼滅だのと騒いでいるが、毎年恒例、加納の鬼は、街角にすっくと立って鬼にらみをきかせている。
 毎年この時期に出現する巨大な鬼。この辺りでは当たり前の光景になっている。確かに街角にこれくらい巨大なものが突如現れたら、初見ならビビる。
 これも毎年のように見慣れれば、まあ、確かに大きいけれども、造形的には稚拙だな〜と思ってきた。進撃の巨人が流行った頃は、何メートル級の巨人はこんなスケール感なんだなーと、変にリアリティを覚えもした。
 今年は、また全く見えかたが違う。
 長く続く疫病には、このくらいの迫力で対抗しなければならなかった、先達の肌感覚に触れた気がする。
科学の力でなんとかなる迷信や、ワクチンさえあればの希望にすがって、もう一年が経つ。結果、私達が今信用できるのは、ペラッペラのマスク1枚のみ。
 人智を超えた災害に見舞われたとき、迷信にすがる気持ちは、結局今も昔も変わりなく、『アマビエ』が、なんの抵抗もなくもてはやされた。
 でも、あんな妖怪よりも、加納の鬼の方がでっかくて強そうで頼りがいがある。今まで、感心なく通り過ぎてごめん。君にすがる糸の一本になる。
 
 今日も鬼は、電気の力ではあるが、ピカピカと文字通り目を光らせている。

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